羽生結弦と内村航平の競演が実現 ~notte stellata~
フィギュアスケート男子で五輪連覇(14年ソチ、18年平昌)を果たした羽生結弦が座長を務めるアイスショー「羽生結弦 notte stellata」が10日、セキスイハイムスーパーアリーナ(宮城県)で開幕。体操男子個人総合で12年ロンドン、16年リオデジャネイロ五輪連覇の内村航平さんと共演を果たした。
ショーのタイトルになっている「notte stellata」はイタリア語で「満天の星」を意味するという。2011年3月11日、東日本大震災で被災し、避難所で過ごした夜、羽生は満天の星空を見て、希望を感じた。被災地を照らした満天の星のように、“希望”を発信し、人々が少しでも笑顔になれるきっかけになれば、と願いが込められている。
ショーは前半と後半の2部構成だった。羽生と内村が“異色のコラボ”をしたのは、前半の終わりだった。リンク脇に設置された床運動のマットに内村さんが、氷上に羽生が立った。「conquest of paradise」の曲に乗せ、内村さんが円馬で開脚旋回を見せれば、タイミングよく羽生は高速スピンを披露。内村さんがロンダートから前宙やバック宙をすれば、羽生は氷の上で側転をやってのけた。息の合った夏冬五輪金メダリストの競演に会場に詰め掛けた約6000人の観客はスタンディングオベーションで応えた。
内村はショー終了後に「羽生君がいるからこそ大盛り上がりしていることもある。“ユヅル、すごーい”って感じ。それをつくづく感じました」と語り、演技構成についてこう述べた。
「羽生君が目の前でスピンをしているところと、自分が円馬で旋回しているところを目で見て、“コラボできているなとものすごく感じられた。そこをリハーサルでも意識して本番でもかなりお客さんが盛り上がってくれた。
しっかりと自分の意見を人にぶつけられる。かなり羽生君のこだわりの色がすごくでているショーになっている。旋回とスピンは絶対に僕がやりたいと伝えました。お互いのやりたいことを出し合って、これはできそう、これは難しそうと意見交換しました。合わせるの、難しいかなと思っていたら、(羽生が)“僕が合わせるんで大丈夫です。内村さんが思ったようにやってくれたら僕がそれに合わせます”って言われて。じゃあ、お願いしますと(笑)。滑っているのが横目で見える。僕も合わせようとして、お互いが息を合わせようと思っているのがすごくわかった。その呼吸は合っていたと思います」
羽生も内村さんとの共演についてこう語った。
「振付は冒頭の部分がデビッド・ウィルソンさんにしていただいて、内村さんが登場してからは全部自分が振付をしました。内村さんとの打ち合わせや振付の構成の相談はほとんどなく、お互いができることをぶつけ合おうという感覚で進めてきた。この場所でリハーサルをやった時も、お互い謙遜し合いながら距離感をはかりながらというのはあったんですが、お互いがお互いのことに集中してぶつかり合った。でも共演もしている。“お互いの本気のエネルギーが混ざり合う”というのをこのプログラムでは表現しかった。“自分たちのことに集中しましょう。それがきっと良い掛け算になります”と言い合いながらつくっていきました」
羽生が言うように共演をしながら、夏の王者と冬の王者の“真剣勝負”のようにも映ったプログラムだった。
(文/大木雄貴)