プロフィギュアスケーター・羽生結弦による「Yuzuru Hanyu ICE STORY 2nd "RE_PRAY" TOUR」埼玉公演(初日)が4日、さいたまスーパーアリーナでスタートした。羽生はSEIMEIや春を来いなどアンコールを含む12演目を滑り切り、1万4000人の観客を沸かせた。埼玉公演は5日まで行われ、来年1月12日、14日の佐賀公演(SAGAアリーナ)、2月17日、19日の横浜公演(ぴあアリーナMM)と続く。

 

 椎名林檎の「鶏と蛇と豚」、本来はゲームとしての楽曲「Megalovania」、「破滅への使者」と3つの新たなプログラムを披露した。4回転ジャンプやトリプルアクセルを決めて、スケーティング技術の高さを見せつけた。

 

 羽生独自の世界観が今回も物語の軸となっている。ゲームはライフポイントが0になってもセーブとコンティニュー機能があるため繰り返しプレイできる。一方で人生は一度きりという、2つの対比構造で物語は進む。生きるためには取捨選択が必要で、切り捨てたものへの配慮が必要なのではないか、と羽生が公演全体を通じて、観る者に訴えかける。

 

 初日公演後、羽生は語った。

「自分自身、ゲーム、漫画、小説などから、自分の人生ってなんだろう、命って尊いものだなと、皆さんが感じるようなことを僕もいろんな作品から受け取っている。

 ゲームの中は、命という概念がある意味軽い。繰り返しできるからこそキャラクターを使い好奇心のままにプレイできる。それって、現実の世界に当てはめてみたら、夢を掴みにいく原動力のある人間かもしれないけど、違う観点から見たらとても恐ろしい人間かもしれない。きっと(人生でもゲーム同様に)繰り返しできるとしたら、人はやるんだろうな、と考えていました。

 自分が選んできた選択肢がある。その選択の先に破滅というルートがあったとする。すべての障害を乗り越えて夢を掴む、目標を達成する人生があるとしたら、皆さんは何を選び、何を感じるのかな? とこのアイスストーリーの中で、考えてもらいたい。

 このアイスストーリーで答えを出してほしいのではなく、考えてもらいたい。考えるきっかけの1つであってほしい」

 

 観客は「生きることとは?」「命とは?」「選択とは?」などを考えさせられ、それぞれで考えるような“宿題”を羽生から与えられる内容となっている。そして、何度も繰り返しが可能なゲームから学んだ世界観(RE_PLAY)から、生きるための希望や夢が実現するように何度も祈る「RE_PRAY」へとつながっていく。

 

(文/大木雄貴)