「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」ディビション1第12節、横浜キヤノンイーグルス(横浜E)戦を控えるクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)のスタメン予定のCTB立川理道とLOルアン・ボタがオンライン会見を行った。第11節終了時点で2位につけるS船橋・東京ベイと、勝ち点差5で3位の横浜E。上位チームによる対戦はプレーオフをも占う一戦となりそうだ。

 

 6試合に渡る交流戦が終わり、同カンファレンス2巡目の戦いがスタートする。9勝1分け1敗で勝点43のS船橋・東京ベイに対し、7勝2分け2敗で勝点38の横浜E。前回の対戦ではS船橋・東京ベイが終了間際に追い付き、27-27でドローに終わった。昨年12月に行われた大分での戦いは両軍にとっても“勝てた”試合だったと言っていいのではないだろうか。

 

 キャプテンの立川は横浜Eとの第2ラウンドに向け、「相手の特徴も分かっている。力の差はなく、拮抗した試合になる」と語り、こう対策を口にした。

「相手の9、10、15番のキッキングゲームを排除して自分たちのペースに持っていきたい」

 SHファフ・デクラーク、SO田村優、FB小倉順平を警戒する。彼らの思い通りにゲームコントールをさせてしまえば、No.8シオネ・ハラシリ、梶村祐介とジェシー・クリエルの両CTB、竹澤正祥とイノケ・ブルアの両WTBら優れたランナーを相手に、自軍の城は守り切れないだろう。

 

 多彩なアタックが魅力の横浜Eに対し、S船橋・東京ベイも第11節終了時点でリーグ最多の得点数(445)を誇るチームだ。トライ数はトップの横浜E(58個)に次ぐ2位(57個)。立川も「得点に関してはコンスタントにスコアできている。攻撃力はあると思っている」と手応えを口にしている。

 

 近年の躍進は際立っており、今季は第10節まで無敗をキープしていた。だが同じく無敗の埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)の熊谷に乗り込み、結果は15-30で逆転負けを喫した。「トライは奪えませんでしたが、あと一歩というところまではいけていた」と立川。あと一歩、その一歩が近そうで遠いとも言える。埼玉WKは前節の東京サントリーサンゴリアス(東京SG)戦も逆転勝ちを収め、目下開幕11連勝である。昨季も不戦敗2を除けば、リーグ戦&プレーオフで無敗。リーグ戦での敗戦は2018年まで遡らなければならない。

 

 埼玉WKの強さは、何かと考えると、動じないところが挙げられる。ピッチ内外で不足の事態は起こ得る。その際に焦らず、冷静に対処できる。主に後半から起用されるHO堀江翔太は、ピッチに入る際の心持ちをこう語っていた。

「結果どうこうというよりも1個1個、自分たちのやることをやって、最後まで耐えようという気持ちが大きい。だから取り急いだり、“逆転せな”とはほとんど考えていないです。自分たちのことを、キックオフマイボールなのか、相手ボールなのか。それで自分たちの仕事は変わる。それを一から順にやっていけばトライを取れるし、ディフェンスもプレッシャーを掛けられる。一歩ずつ、積み重ね」

 

 泰然自若。苦境に追い込まれたとしても、立ち返る場所があることが強い、ということだろうか。PR稲垣啓太はこうも話していた。

「チームに大きな問題がある時って、いろいろなところに手を伸ばしがちなんです。あれもやらなきゃ、これもやらなきゃで失敗している。大事なのは、今のチームに何を真っ先に改善しなければいけないか。それを実行できる土台がワイルドナイツにはある。だからどんなシチュエーションになっても最終的に自分たちのテンポをつくりだすことができるんです」

 

 自分たちの長所を理解し、最大限に発揮しているとも言える。その意味では、S船橋・東京ベイの最大の武器はFWだろう。中でもボタとデーヴィッド・ブルブリングの“ツインタワー”を擁し、HOマルコム・マークスが起点となるラインアウトは得点パターンのひとつだ。近年はWTB根塚洸雅、WTB木田晴斗ら若手BKのラインブレイクが目につきがちだが、それを支えるFWの下働きがあってのもの。S船橋・東京ベイの幹は、重戦車FWにあると言っていい。

 

 前節の静岡ブルーレヴズ(静岡BR)戦からボタがケガから復帰した。2m超えの長身を生かし、セットプレーのキーマンとなる。「イーグルスとの再戦はおそらくFWの戦いになる。自分としても試合が楽しみ」。横浜Eの先発LOはコリー・ヒル、リアキマタギ・モリと発表されている。ラインアウトを中心とした制空権争いがカギを握る。当日は雨と予報が出ており、滑りやすいボールへの対処もチェックポイントとなるだろう。

 

 また“オレンジアーミー”(S船橋・東京ベイの選手、スタッフ、ファン、関係者の総称)にとって帰る場所のひとつとして、ホストスタジアムの江戸川区陸上競技場も挙げられるだろう。ここまで14連勝中で不敗神話が続いている。ビジター2連戦から帰還し、チームカラー同様にアットホームな雰囲気のスタジアムで勝ち星を掴めるか。この試合の結果がリーグ優勝に直接関わるわけではないかもしれない。だが王座への挑戦権、その覚悟を試される戦いではある。

 

 一方で立川は「目の前の戦い」に集中するという姿勢を崩さない。

「目標は近年、日本一を目指してやってきて、4位、3位と順位を上げてきており、しっかり力は付いてきていると思います。プレーオフに勝って優勝するという大きなプランは見えてきている。ただそこにだけ目標を置くと、目の前の試合、練習へのフォーカスがずれてくる。あまり先のことを考えず、毎日、毎週の練習に対して100%取り組むことで反省点や成長のポイントが分かってくる」

 一歩、一歩の歩みのその先に。頂点が待っている――。

 

(文/杉浦泰介、写真/ⓒクボタスピアーズ船橋・東京ベイ)