「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」ディビジョン1第12節、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)が横浜キヤノンイーグルス(横浜E)を15-5で下した。S船橋・東京ベイは10勝1分け1敗で勝ち点47と2位をキープ。横浜Eは7勝2分け3敗で勝ち点38と前節から順位をひとつ下げ、4位となった。

 

 熱戦に水を差すかと思われた雨風も、両軍の肉弾戦を引き立てたのかもしれない。雨風にさらされたピッチ。前日から最高気温は約5度下がり、肌寒い空気が東京・江戸川区陸上競技場(江戸陸)を包んだ。勝ち名乗りを挙げたのは強力FWが自慢のS船橋・東京ベイだった。

 

 戦前の予想通り、互いがボールを蹴り合う、陣取り合戦の様相を呈した。選手たちもボールが手につかず、スリッピーなピッチで足場も不安定。重い試合展開となった。S船橋・東京ベイは敵陣に入れど、スコアはなかなか動かなかった。得点を挙げられないのは横浜Eも同じ。SHファフ・デクラーク、SO田村優、FB小倉順平とキックの使い手を揃えてはいるものの、22mライン内に侵入したチャンスもS船橋・東京ベイがゴールラインを割らせなかった。

 

 スコアレスでハーフタイムを迎えるかと思われたが、S船橋・東京ベイの圧力が横浜Eに綻びを生む。敵陣22mライン付近で獲得したマイボールラインアウト。HOマルコム・マークスの正確なスローからLOデーヴィッド・ブルブリングがキャッチし、FWが塊となって前進する。そのままインゴール右にマークスが飛び込んだ。SOバーナード・フォーリーのコンバージョンキックは外れたものの、S船橋・東京ベイが5点を先制した。

 

 後半も降りしきる雨は止まず、選手たちはボールコントロールに苦しんだ。5分、フォーリーが自陣からハーフウェイライン付近に蹴ると、そのボールをキャッチした小倉がハイパントでコンテストキック。飛び付いて捕球したフォーリーが着地する前にWTB竹澤正祥がタックルをしてしまった。TMO(ビデオ判定)の結果、レフリーは危険なプレーで竹澤にはイエローカードを提示。横浜Eは10分間数的不利の時間を余儀なくされた。

 

 一方のS船橋・東京ベイからすれば、ここが得点の取りどころだ。11分、敵陣右サイドで得たラインアウト。マークスはショートサイドにスローし、リターンパスを受けると手薄な縦を突破した。「ボールが濡れていたので、長いパスは難しいかもしれないということで(ショートサイドを狙うオプションを)ハーフタイムで話しをしていた」。その後、オフロードパスを繋ぎ、インゴール目前まで迫ったが、横浜Eのディフェンスにタッチラインに押し出された。

 

 すると直後のラインアウトでLOルアン・ボタが魅せた。横浜EはLOリアキマタギ・モリがリフトアップされたボールをキャッチ。一方のS船橋・東京ベイはボールを競らず、モリが地上に降りてくるタイミングを突いた。ボタがボールをかすめ取り、そのままインゴール右にボールを置いた。「チャンスだと思ったので手を間に入れた。ラッキーだった」とボタ。フォーリーがコンバージョンキックを決め、12-0とリードを広げる。

 

 その後も攻勢を仕掛けるのはS船橋・東京ベイ。20分から約10分はほぼ敵陣でプレーし、圧力をかけて相手の反則を誘った。22分にフォーリーがPGを成功し、15-0。2トライ2ゴールでも追いつけない点差にした。37分、ラインアウトモールからNo.8シオネ・ハラシリにトライを奪われたものの、10点差で逃げ切った。フラン・ルディケHCは「今日はランニングラグビーをできなかったが、FWバトル、キックバトルでゲームをコントールし、勝つことができてハッピーだ」と試合を総括。キャプテンのCTB立川理道は「ゲーム中、自分たちはセイムページ(同じ絵)を見れていた。フォーカスするポイントを明確にし、大事な時間帯でポイントを取れたことがチームの成長だと思う」と胸を張った。

 

 横浜Eの沢木敬介監督も「遂行力は相手が上だった」と認めたように、S船橋・東京ベイは前半の終了間際、相手が1人少ない時間帯というタイミングで着実にスコアした。「9、10、15番がキックゲームをコントロールできるか、それをしっかり遂行してくれたから、こういう試合に持って行けた」とルディケHC。指揮官はさらに「土台をFWが築いてくれた。役割を遂行してくれたから、攻め切れた」と屋台骨となったFW陣を称えた。

 

 S船橋・東京ベイは取るべきところで取り切るという強者の戦いだった。「FWのラインアウト、モールが安定し、優位を保っていた。ゲーム中、慌てずにチャンスの場面でスコアできた」と立川。帰ってきたホームグラウンド江戸陸の連勝を15に伸ばした。次節はビジターへ。26日に大阪・東大阪市花園ラグビー場で神戸スティーラーズと対戦する。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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