「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」(リーグワン)のトヨタヴェルブリッツ(トヨタV)は来季から2人のビッグネームが加入する。現役ニュージーランド代表(オールブラックス)のSO/FBボーデン・バレット、SHアーロン・スミス。いずれも通算100キャップを超えるスーパースターだ。来季加入がリリースされた1カ月半後の3月22日、オンライン会見を行った。

 

 トヨタVは今季、リーグワン・ディビジョン1第12節終了時点で、7位と苦戦している。プレーオフ進出圏内につける4位の横浜キヤノンイーグルス(横浜E)とは勝ち点差14と厳しい状況だ。南アフリカ代表FLピーターステフ・デュトイ、同FBウィリー・ルルー、ジャパンを代表するバックロー(FL、No.8)の姫野和樹、姫野と共に19年W杯日本大会ジャパンのスコッドだったPR木津悠輔、SH茂野海人らを擁しながら、この成績はおよそ納得できるものではないだろう。

 

 勝つ文化――。現在のチームの最重要課題と言っていいだろう。トヨタ自動車ラグビー部時代は日本選手権3度、全国社会人5度の優勝を誇ったが、トップリーグ以降は日本選手権、リーグ戦のタイトルから遠ざかっている。そのため常勝が義務付けられるオールブラックスを経験し、クラブチームでもタイトルを手にしてきた2人に“勝者のメンタリティー”を注入してもらいたいという狙いがあるのだろう。バレットは「勝つ文化をつくるための一員として影響を与えられることが楽しみです」と語った。

 

 勝つ文化とは何か。バレットは「いい習慣をつくり、規律を保ち、いい人間であることで、一貫性のある環境がつくられる。それがラグビーの環境にも繋がる。私がオールブラックスにいた時もそうでした。個人として、少しでもいい影響をチームに与えられればいいと思っています」と話す。スミスも「考えはボーデンと同じ」と首肯する。

「いいパフォーマンスをするには、フィールドでの信頼関係、メンタルのタフネス、フィールド内外のコネクション、ラグビーを楽しむことが大事だと思っています。チームファーストで全員が全力を尽くせば結果がついてくると思いますし、そういった環境が整っていれば結果がついてこなかったとしても立ち上がれるチームになる。正直な会話、時には厳しい会話ができるような環境づくりをしていきたいです」

 

 バレットは21年のトップリーグ以来、スミスは今回が初めての日本のリーグ挑戦となる。2人がトヨタVを選んだのは、元オールブラックス指揮官、トヨタVのディレクター・オブ・ラグビー(DOR)を務めるスティーブ・ハンセン氏の存在が大きい。2年前はサントリー(現・東京サントリーサンゴリアス)でプレーしたバレットは「クラブを変えることは大きな決断だった」と言い、「チームにいる人が大きな理由」と答えた。中でもハンセンDORからは「たくさん説得をしてもらった」と口にする。スミスもハンセンDORを「自分自身のキャリアにおいて大きな影響を与えた人物」と答えた。

 

 当然、プレーヤーとしては、チームを勝利に導くことを期待されている。

「サントリー時代にヴェルブリッツと対戦し、フィジカル、セットプレーに強い印象があります。ベン、スティーブと話していますが、アーロンと共にどういうフェーズアタック、どうクリエイティビティをつくり出すか。コーチ陣、選手と連携して行っていきたい」(バレット)

「ボーデンと一緒でコーチ陣と連携し、チームのアタックとディフェンスを理解していきたいです。SHとして選手個人の強み、弱みを理解した上で、ランやキャリーでいいチャンスをつくりたい。スキルを生かしたプレーをし、自分自身のスタイルである周囲を生かすプレーに取り組んでいきたい思います」(スミス)

 

 

“世界のトヨタ”の逆襲なるか――。「クラブと歴史をつっくてタイトルを獲りたい」とスミス。世界的なビッグネームコンビの加入が、チームにどんな化学反応をもたらすのか、楽しみである。

 

(文/杉浦泰介、写真/©️TOYOTA VERBLITZ)