第763回 WBCは小さなミスが命取り
日本は過去4回のWBCで2回、世界一になっている。頂点に立てなかった2回も準決勝に進出しているのだから、WBCで最も成功を収めている国(地域)といっていいだろう。
<この原稿は2023年3月27日、4月3日合併号『週刊大衆』に掲載されたものです>
決勝に進めなかった2回も力負けしたわけではない。スコアは13年のプエルトリコ戦が1対3、17年の米国戦が1対2と惜敗だった。
敗因を振り返ってみよう。13年のプエルトリコ戦は、0対3で8回を迎えた。1点を返し、なおも1死一、二塁。うまく攻めれば同点、もしくは逆転も可能な展開だった。
ところが、この場面でベンチのサインはダブルスチール。この失敗が、日本にとっては致命傷となった。
ダブルスチールのサインが悪いわけではない。ギャンブルも作戦のひとつだ。
問題は指示が中途半端だったことだ。一塁ランナーの内川聖一は、猛然とスタートを切っているのに対し、二塁ランナーの井端弘和はベースに引き返すチグハグぶり。二塁ベース手前でアウトになった内川は「飛び出した自分が悪い」と自らを責めたが、責任の所存は、最後まで分からず仕舞いだった。
ダブルスチールのサインが、4番・阿部慎之助の打席で出されたことも不可解だった。山本浩二監督は「(阿部は)打てなくても代えない」と語っていた。それほど信頼を置く打者なら、小細工せず、そのまま勝負させてもよかったのではないか……。そんな思いがよぎったことも事実である。
17年の米国戦は、セカンド菊池涼介、サード松田宣浩というゴールデン・グラブ賞の常連のミスが、そのまま失点に結びついた。
戦いの舞台が人工芝の東京ドームから、天然芝のドジャースタジアムに移ったことで、内野守備を不安視する声もあったが、残念ながら、それが的中してしまった。
このように、国際試合では、ほんのひとつのミスが命取りとなる。大勝した次の試合こそ、気を付けなければならない。