「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」ディビジョン1第13節が東京・秩父宮ラグビー場で行われ、東芝ブレイブルーパス東京がリコーブラックラムズ東京を12-10で下した。ブレイブルーパスは4連勝、勝ち点39で暫定4位に浮上。ブラックラムズは7点差以内の敗戦のボーナスポイントを獲得し、勝ち点25で順位は6位のままとなった。

 

 試合後、「ラッキーだった」とはブレイブルーパスのトッド・ブラックアダーHC、同キャプテンのSH小川高廣が「ホッとしている」と語ったように、ギリギリの勝利だった。これで4連勝となり、プレーオフ進出への望みを繋いだ。

 

 金曜日のナイター、すぐそばの国立競技場ではサッカーの日本代表戦が行われていた。この日、フットボール熱を帯びた明治神宮外苑エリア。試合前に雨は止んでいたものの、キックオフから時間が経つにつれ、パラパラと雨はまた降り始めた。

 

 ブラックラムズvs.ブレイブルーパス。共に東京都をホストとする“東京ダービー”。昨年のクリスマスに東京・味の素スタジアムで行われた試合では、ブレイブルーパスが17-7で勝利していた。前回はブレイブルーパスのホストゲーム。秩父宮ラグビー場での今回はブラックラムズのホストとなる。

 

 試合は両チームが得点を奪えぬ、重たい展開となった。雨に濡れてボールハンドリングが難しかったこともあるが、ブレイブルーパスとブラックラムズが守備で奮闘したという側面もある。

 

 スコアレスで迎えた後半早々、ブラックラムズが先制する。3分に敵陣で得たスクラムで押し勝ち、相手の反則を誘った。PGをFBマッド・マッガーンが確実に決めて3点。ようやくスコアが動いた。

 

 黒羊軍団はなおもブレイブルーパスに襲い掛かる。相手ボールのスクラムで反則を誘発。敵陣右22mライン付近でのラインアウトを獲得した。HO佐藤康がLOマイケル・ストーバーグにボールを入れる。モールを組み、No.8ネイサン・ヒューズがインゴール右に飛び込んだ。マッガーンのコンバージョンキックが決まり、ブラックラムズが10点をリード。

 

 敗れれば2季連続のプレーオフ進出が遠のく、ブレイブルーパスも意地を見せる。チームに反撃の勢いを与えたのは“アルファ”と呼ばれるリザーブ陣だ。18分、速いテンポでパスを散らしていた途中出場のSHジャック・ストラトンのパスを受けたのが、同じく途中出場のHO原田衛だ。

 

 自らのステップで、わずかに空いたブラックラムズの敷くディフェンスラインの隙を見逃さなかった。「相手がいなかったのでラッキーでした」と謙遜したが、最後は相手に捕まれながらも右手を伸ばし、ゴールポストやや右にボールを置いた。「FWが継続してアタックしていたからこそのトライ。FWで獲ったトライです」と胸を張った。

 

 SOマット・テイラーのコンバージョンキックが決まり、3点差に詰めたブレイブルーパスは、その後も敵陣でプレー。一方のブラックラムズは、たまらず反則を連発してしまい、CTB栗原由太がシンビンを科された。10分間の数的有利となったブレイブルーパスは畳み掛ける。

 

 ストラトンとテイラーのハーフ団は左右にボールを散らし、アタックを仕掛ける。そして20分、ストラトンが中央から右に展開。テイラー、FB松永拓朗、No.8リーチマイケルと繋ぎ、最後は大外のWTBジョネ・ナイカブラ。インゴール右隅に飛び込んで12-10と逆転に成功した。

 

 連敗を避けたいブラックラムズも、このまま終わらせないとばかりに狼軍団の背中を捕らえて離さない。だが、あと一歩届かなかった。再逆転を狙ったマッガーンのPGは外れ、ラストチャンスのモールで反則を犯してしまった。2点差のままノーサイド。ボーナスポイントは掴んだものの、勝ち点25で6位のブラックラムズは、暫定4位のブレイブルーパスとは14差、暫定5位の横浜キヤノンイーグルスとは13差とプレーオフ進出が遠のいた。

 

 前節のトヨタヴェルブリッツ戦(19-18)に続き、接戦をモノにしたブレイブルーパスは、25日に試合を控える4位イーグルスを暫定で抜き、プレーオフ出場圏内に浮上した。「瞬間、瞬間でタフに戦い続けることができた選手たちを誇りに思います」とブラックアダーHC。キャプテンの小川も「前半から我慢比べで、その中でもブラックラムズさんもすごい集中力でやってくる中、自分たちは10点差になった時もメンタルが切れることなく、やるべきことを遂行できた」と胸を張った。

 

(文・写真/杉浦泰介)