26日、第2回KCT杯全国ブラインドラグビー大会が東京・稲城市総合グラウンドで行われた。東京、神奈川、新潟、愛知、大阪の5チームで争われた大会は、決勝で愛知のサンラビッツ愛知を12-5で破った大阪のBALs Osakaが初優勝を果たした。大会最優秀選手賞にはBALsの出崎琢巳が選ばれた。

 

 昨年3月に東京・駒沢オリンピック公園第二球技場で開催された第1回大会は新潟、愛知、大阪の合同チーム(アプローズ)と東京のチームよる大会だったが、今回は東京(アルコバレーノ東京)が引き続き、愛知(サンラビッツ愛知)、新潟(新潟フェニックスファイターズ)、大阪(BALs OSAKA)がそれぞれ単独チームとして参加。さらに神奈川(神奈川Lucy's)が加わり、5チームによる変則トーナメントを実施した。さらには大会スポンサーにナレッジクリエーションテクノロジー(KCT)が付き、大会名もKCT杯という冠が加わった。

 

 正午にキックオフとなった1試合目はアルコバレーノ東京と新潟フェニックスファイターズが対戦。12-10で新潟フェニックスファイターズがアルコバレーノを競り勝った。第2試合はBALsがかながわLucy'sに、シード扱いの愛知サンラビッツは新潟フェニックスファイターズを下し、決勝に進んだ。

 

 15人制ラグビー日本代表、女子日本代表経験者である元選手と現役選手が参加したエキシビションマッチを挟み、決勝が行われた。BALs OSAKAは敵陣でプレー。前半終了間際に出崎のトライで5点を先制した。後半に入っても試合を優位に進め、平康裕のトライと上田晟也のコンバージョンキックで12点をリード。サンラビッツ愛知に1トライを返されたものの、7点差で逃げ切った。

 

 キャプテンの平は「関西の大阪チームは単独で出場することを、この1年目標にしてきました。その中で優勝できてうれしいです。キャプテンとしては、このチームを優勝させたかった。みんなが喜んでいる姿を見ることができて良かったです」と頬を緩めた。決勝で先制トライを挙げ、大会MVPに輝いた出崎は「来年は2連覇を目指したい」と早くも次を見据えた。

 

 2人にチームの魅力を聞くと、いずれも明るさや雰囲気の良さを挙げた。試合中はもちろんのこと、試合前後も声を掛け合い、時にはボケとツッコミを形成していた。

「にぎやかで雰囲気がすごく良い。チーム仲が良いので、キャプテンとしても、すごく助けられる。それが一番の魅力だと思います。若い選手が多く、すごくポテンシャルが高い。個人の強み、スキルを今日は存分に出せたと思います」(平)

「このチームは明るく居心地がいいチーム。コミュニケーションも取れ、声掛けもできて、いいチームだなと感じます。あとは熱くなれる。昨日も前日練習、『あまりせんとこか』と言っていたのですが、結局ガッツリ。3時間くらい。それほど熱い選手が揃っているので、スタミナが切れても根性で。それがウチの戦略だと思います」(出崎)

 

 大会を運営した日本ブラインドラグビー協会の森祐二郎事務局長は、「第3回もチームが増えたらいいなと思っています。一歩ずつ、ちょっとずつ大会が変わっていけばいいと考えています」と今後の展望を語った。現在、単独チームでは出場できないが、岡山、宮城、千葉にもチームは存在しているという。

 

 今大会優勝のBALs Osakaは、チーム結成時は現・キャプテンの平1人で始まった。昨年の第1回大会は合同チームとして出場。昨年秋にようやく単独チームを編成できるようになったばかりだ。平は言う。

「いずれは、ひとつの地域に1チーム。その次がひとつの都道府県に1チーム。まだ全国にブラインドラグビーをやりたくても、周りに仲間がいない、または場所がないという人がいる。障がいがあってもラグビーをやりたい、サッカーをやりたいと思った時に、すぐ周りを見れば地域にそういうチームや場所・施設があれば一番いい。ブラインドラグビーもそこを目指していきたいです」

 

 大会当日、生憎の雨ではあったが、びしょ濡れになりながら、楽しそうにプレーする選手たちが印象的だった。コンバージョンキックを決めてはしゃぐ声もグラウンドに響き渡った。試合前で円陣を組み気合を入れるチームも。スポーツを楽しむ姿、勝負に一喜一憂する姿が、そこにはあった。まだこの競技はスタートしたばかり。2015年にイギリスで考案されたのが起源とされている。日本に紹介されたのは18年で、翌年に日本ブラインドラグビー協会が誕生した。未完成な部分、未整備な部分はあるかもしれないが、その分、伸びしろのあるスポーツと言えるのではないだろうか。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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