「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」ディビジョン1第14節が7日、東京・秩父宮ラグビー場で行われ、東京サントリーサンゴリアス(東京SG)がコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)を25-17で下した。東京SGは3連勝、神戸Sは2連敗となった。

 

 終盤戦を迎えたリーグワン。プレーオフ進出争い真っ只中にいる3位の東京SGと、その望みは断たれ、9位と苦しむ神戸Sという対照的な両チームの戦いとなった。

 

「ラグビーをやるには難しい天気だった」と東京SG田中澄憲監督が試合後に振り返ったように、プレーする方も観る方も最悪なコンディションだったのではないか。キックオフ時には止んでいた雨も次第に降り始め、何よりも強風が選手たちの進路を妨げた。ラインアウトは風がボールを曲げさせる。前半5分までに東京SGが1回、神戸Sが3回マイボールラインアウトをキープできなかった。

 

 先制したのは前半風上に立った神戸Sだ。前半11分、自陣でのキック処理を東京SGのWTBテビタ・リーがもたつき、ボールをこぼしてしまう。ノックオンの判定で神戸Sボールのスクラム。そのスクラムでインゴールに迫り、最後はSH中嶋大希の飛ばしパスを受けた大外のNo.8サウマキアマナキがSH齋藤直人のタックルを受けながらインゴール右隅に飛び込んだ。角度のないところのコンバージョンキックもSO李承信が成功し、7点をリードした。

 

 対する東京SGはFW勝負で優位に立つ。17分、神戸Sボールのスクラムで相手のコラプシングを誘う。直後、敵陣深く左でのラインアウトからモールで前進。HO堀越康介が狭いサイドを突いた。2人のタックルを弾き飛ばし、最後はインゴール左隅に右手を伸ばした。2点差に迫った。

 

 WTBアタアタ・モエアキオラのトライ、李のコンバージョンキックで9点差に広げられたが、34分に再び点差を詰める。敵陣右で獲得したラインアウトモールで前進。そこから左に展開し、最後は齋藤のパスからCTB中野将伍がスルリと抜け出してトライ。SOアーロン・クルーデンがコンバージョンキックを決め、12-14とした。

 

 前半はビハインドで終えた東京SGだが、コイントスで陣地を獲得し、風下を選んだことには思惑があったという。キャプテンの堀越によれば、「攻めてボールを保持し、コンテストキックを狙う。我慢して繋ぎ、後半引き離せるか」という狙いがあったという。後半勝負の作戦について、田中監督は「60分間ついていって、最後突き放すためには風上の方が精神的に楽だと思った。前半の点差は想定以上でした」と語った。

 

 前半想定以上だったチームに対し、想定外だった選手がいるとすればリーかもしれない。2つの被トライに絡んだ。1つは失点に繋がったノックオン。2本目のトライもモエアキオラにかわされ、拳をピッチに叩いて悔しがっていた。ハーフタイムを終え、ハドルを組んだ際には堀越が優しい笑顔で彼を迎え入れた。その時のことを「チームメイトが手厚くサポートしてくれた。起こったことは忘れ、自分のプレーに集中しないといけないと実感した」とリーは振り返る。

 

 キックオフボール、クルーデンが蹴ったボールをキャッチしたLOジェラード・カウリートゥイオティに襲い掛かったのがリーだ。タックルで相手のペナルティーを誘った。このタックルについては田中監督も「前半のミスをどう取り返すか彼も必死だったと思う。そういうプレーが大事」と評価。本人も「うまく勢いを持つために後半何かしないといけないと思っていた」と期するものがあったという。これで得たPGをクルーデンが確実に決め、15-14とこの試合初めてのリードを奪った。

 

 リーの活躍は続く。15分、クルーデンのパスを受け、1人タックルを切ると、そのまま加速していく。ディフェンスラインを切り裂き、インゴール左中間に滑り込んだ。クルーデンのコンバージョンキックも決まり、22-14とリードを広げた。

 

 その後、両チームがPGで加点。25-17で東京SGが勝利した。田中監督は試合後、FWの奮闘を称えた。

「こういうゲームはFWの頑張りに尽きます。特にセットピース、スクラムでしっかりプレッシャーを掛けることができたこと。ラインアウトも含め、本当にFWの勝利だったと思います」

 

 東京SGは今季11勝目。勝ち点を51に積み上げ、3位をキープした。5位の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)の結果次第では8日にもプレーオフ進出が決まる。残り2節に向け、「目の前の勝利をどう取っていくかにフォーカスしていきます」と田中監督。堀越も「細かいディテールをひとりひとりが精度高めていくか。目の前の自分の役割を100%、プレッシャー下でもできるかが必要となってくる。そこは大事にしたいと思います」と述べた。

 

(文・写真/杉浦泰介)