雨ニモマケズ 風ニモマケズ――これは詩人・宮沢賢治の『雨ニモマケズ』の一節だが、この詩は最後のセンテンスまで主語が出てこない。

「本当にどんな時でも応援してくれる。それは雨の日でも、晴れの日でも、風が強い日でも変わらない」

 こちらも主語は出てこないものの、何を指すかは明確だ。「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」(リーグワン)ディビジョン1・三菱重工相模原ダイナボアーズ(相模原DB)のSH岩村昂太が語った言葉の主語は相模原DBのファン・サポーターを指すダイナメイト、ウリボアーズのことである。

 

 岩村はトヨタヴェルブリッツ(トヨタV)から移籍してきて2季目だ。今季からキャプテンとしてチームを引っ張る男にとって、ダイナメイトやウリボアーズの存在とは――。

「グラウンドレベルではたくさんの声援が聞こえてくる。グラウンドから観客席を見ても緑に染まったダイナメイト、ウリボアーズの方たちがいて、本当に僕らの力になる。僕らができることは勝って恩返しをすることです。今は10位ということで、苦しいシーズンが続いていますが、応援してくれる皆さんのためにも恩返したい。引き続き熱い応援をいただけたらなと思っています」

 

 ディビジョン2からの昇格組の相模原DB。粘り強いディフェンスを武器に、シーズン序盤は台風の目として、“全緑”旋風を巻き起こした。しかし、後半戦は勝ち星に恵まれず、4勝1分け8敗で勝ち点20と入れ替え戦圏内の10位。今季ホスト&ビジター数試合を取材した感じたのが、熱心のファン・サポーターの存在だ。SNS等を含め、チームが連敗中でも温かい声援を送っている印象がある。それをキャプテンの岩村にぶつけると、冒頭の「本当にどんな時でも応援してくれる」という言葉が返ってきたのだ。

 

 同じような話は現在はプレーイング・コーチを務めるFL/No.8土佐誠からも聞いたことがある。インタビューをしたのは、リーグワンの前身であるトップリーグがラストイヤーを迎える直前だった。

「まず12シーズンもトップリーグに上がれていなかったのにファンでいてくれるというのがすごいことです。スタジアムでヤジを聞くこともありませんでした。相模原市内を散歩していた時、スーパーに買い物に行った時に、お会いする方が『練習、頑張ってる?』と優しく声を掛けてくださる。まだトップリーグで実績のないチームですが、応援し続けてくださるのはうれしいです。ダイナボアーズでプレーし、サポーターに報いたいという思いは自然と湧いてきましたね」

 

 今季ホストゲーム7試合の平均観客動員は、4180人。相模原DBの目標に掲げた3500人を上回っている。ファン・サポーターがチームに注ぐ愛情は、選手たちの“忠誠心”に繋がる。チームがプレー、勝利で魅せることが、ファン・サポーターの喜びとなる。“3度目の飯よりタックル好き”というハードワーカーの若手FL坂本侑翼もダイナメイト、ウリボアーズのことを「すごく大きな存在」と口にし、こう続ける。

「試合中、大きな声で応援してくれる。(SNSなどを通じて)メッセージをくれるファンの方もいらっしゃるので、すごく力になり、毎試合、“頑張らないと”という気持ちになります」

 

 今季のリーグ戦は泣いても笑っても残り3試合だ。相模原DBの対戦相手は、8位・トヨタV、5位・東芝ブレイブルーパス(BL東京)、6位・リコーブラックラムズ東京(BR東京)。前半戦で勝利しているものの、どのチームもここにきて調子を上げてきている。一方、相模原DBは目下3連敗だ。だが、岩村は下を向いていない。

「日々学びのシーズン。いい時もあれば、悪い時もある中、選手、スタッフ含め後退することなく成長し続けていると実感しています。残り3試合もそういった姿勢で取り組んでいきたいと思っています」

 

“全緑”でプレーする選手、スタッフ同様、“全緑”で応援するダイナメイトとウリボアーズ。勝負の4月を、猪突猛進で駆け抜ける。

 

(文・写真/杉浦泰介)