「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」ディビジョン1のレースは終盤を迎える。上位4チームまでのプレーオフには首位の埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)が確定。残りの3枠をクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)、東京サントリーサンゴリアス(東京SG)、横浜キヤノンイーグルス(横浜E)、東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)の4チームが争う。S船橋・東京ベイは第14節で花園近鉄ライナーズ(花園L)に勝てば、他チームの結果関係なく2季連続プレーオフ進出が決まる。
 
 8日の花園L戦の登録メンバーは、キックオフの48時間前に発表された。HO杉本博昭が今季初先発、SH岡田一平が今季初のメンバー入り。一方でSOバーナード・フォーリーは14試合連続スタメン入りとなった。6日にオンライン会見に出席した杉本が「ワクワクしている」と口にすれば、フォーリーは「非常にエキサイティングな気持ち」と次節に向けての心境を語った。
 
 ここまで11勝1分け1敗と勝ち点51。昨季の勝利数(12)を上回るペースだ。負けてもおかしくない試合を引き分けたり、勝ったりしていることからも、苦しい試合を勝ち切れる勝負強さが付いてきたように思える。チームが安定した成績を残せるのは、戦力が充実してきたことも無縁ではないだろう。外国出身選手と1年限りの契約というケースが比較的少ない傾向にあるのは、中長期的なチームづくりを進めていることだけではあるまい。
 
 よくS船橋・東京ベイは若手が活躍できる土壌として、チームの雰囲気の良さを挙げられるが、外国出身選手にとっても馴染み易い環境なのではないか。その問いに杉本が解答をくれた。

「チームの外国籍選手の特徴は仲が良いこと。トップにフラン・ルディケコーチがいるので、コネクションを強く感じますね。だから長くい易い環境にあるのかな、と。僕は率先してしゃべりに行きますね。南アフリカの挨拶の仕方やオーストラリア、ニュージーランドの挨拶など同じ英語でも微妙に違う。ハイタッチをしたり握手をしたり、そういう小さいことの積み重ねて繋がれている」

  
 在籍4季目のフォーリーも「(チームを)エンジョイしている」と言い、強いチームの条件をこう説明する。
「オンフィールド、オフフィールドのいいバランスがあり、チーム文化が根付いていて、しっかりした繋がりがあるチームが成功している。居心地が良く、チームに対する愛情を抱き、役割にコミットできるかも大事」
  ゆえにオンフィールドのみならず、オフフィールドのコミュニケーションも大切にしている。「繋がりを意識している」とフォーリー。抜群のコンビネーションを見せるWTB木田晴斗ら若手選手たちとも食事に出かけるという。
 
 いわゆる“同じ釜の飯を食う”ような体験の共有は、大事なことだ。例えばNECグリーンロケッツ東葛が第9節で連敗を止めた際、試合後の会見でキャプテンのレメキロマノラヴァは「ずっと試合に負けていると、バラバラになってくるから、オフに集まる機会をつくっている」と食事会を開いたことを明かした。「1時間でも一緒に過ごす時間を増やし、みんな仲良くなれば、試合にも全部繋がる」
  
 ラグビーは助け合いのスポーツである。チームスポーツすべてがそうとも言えるが、前方にあるゴール目指しながら、前方に手でパスを送ることができないという、ある種、理不尽なルールを抱えている。1人で流れを変えることはできたとしても、1人でチームを勝たせることなど不可能と言っていい。
 
 誰が為に闘える者は強い――。エビデンスなどないが、それは個人競技だろうが団体競技だろうが、どのスポーツにも共通していることである。バイウイーク明けの第14節は、2週間の準備の成果だけでなく、各チームの繋がりの深度が問われる一戦となりそうだ。
 
(文/杉浦泰介、写真/©クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)