「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」ディビジョン1第14節が8日、東京・スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場)で行われ、2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)が12位の花園近鉄ライナーズ(花園L)を55-17で下した。S船橋・東京ベイは今季4位以上が確定し、2季連続プレーオフ進出を決めた。

 

 FWの力強さ、BKの決定力、今季のS船橋・東京ベイを象徴するような9トライ55得点の快勝だ。

 

 3分、敵陣深く右ラインアウトからモールでインゴールに迫ろうとするが、すぐに崩れてしまう。それでもボールを拾ったPR海士広大がLO陣のサポートを受けながらトライ。SOバーナード・フォーリーがコンバージョンキックを決め、7点を先制した。

 

 先制トライから3分後、今度はBKが魅せた。SH藤原忍が中央から左に展開。SOフォーリーからパスを受けたCTBリカス・プレトリアスが突破する。最後は大外の木田晴斗へパス。24歳のトライゲッターはインゴール左隅にボールを置いた。木田は10分にもスピードを生かし、左隅にトライを挙げた。

 

 1トライ1ゴールを返されたものの、S船橋・東京ベイの優位は変わらない。16分、花園Lがシンビンで1人を欠くと、さらに猛攻を仕掛ける。19分、フォーリーのキックパスを左サイドで受けた木田がトライ。前半20分も経たぬうちにハットトリックを達成した。

 

 26分にはFLトゥパフィナウがトライ。数的有利の時間帯に2トライを挙げた。前半は31-12で終えた。

 

 試合中から降り出した雨が強くなっても、S船橋・東京ベイは攻め手を緩めない。5分、敵陣深く右ラインアウトのボールをキャッチしたLOデーヴィッド・ブルブリンク。ディフェンスがいないと見るや、そのまま雪崩れ込んでトライを挙げた。

 

 11分にフロントロー全員とLOヘルウヴェ、フォリーの5人をベンチに下げる5枚替え。現在得点ランキングトップを走る司令塔を代えても、S船橋・東京ベイの攻撃は止まらない。直後の12分、木田がこの日4本目のトライ。27分にはWTB根塚洸雅がインゴール右隅に滑り込んだ。根塚は34分にも鋭い突破からNo.8末永健雄のトライを演出した。

 

 55-17でノーサイド。この勝利により勝ち点56とし、今季の4位以内が確定した。リーグワンとしては2季連続、トップリーグ時代を含めれば3季連続のプレーオフ進出が決まった。フラン・ルディケHCは試合後、こう語った。

「大事なことはパフォーマンスの一貫性だと思っています。それが今シーズンもきっちりできたことで、3シーズン連続トップ4になれた。シーズンもあと2試合。まずはそこに向けて改善すべきことを改善していきたい」

 

 この日、ゲームキャプテンを務めたFL青木祐樹は「先週からメンバーも変わりましたが、自分たちのやることは変わらない。常に自分たちの仕事にフォーカスしようと言い続けた結果が、今日に繋がったと思います」と試合を振り返った。指揮官同様、目の前の戦いに集中するというスタンスは変わらない。

「リーグ戦は残り2試合。先を見ずに、来週のNEC(グリーンロケッツ東葛)戦に向けてやっていきたい」

 

 また、この日はS船橋・東京ベイと江戸川区が締結したネーミングライツパートナー契約で江戸川区陸上競技場の愛称が「スピアーズえどりくフィールド」となってから初の試合だった。得点掲示板はスピアーズカラーのオレンジで装飾された(写真)。青木は「今日初めてスコアボードが新しくなったのを見ました。選手として、グラウンドに立った時に、スピアーズのオレンジがあると、気持ちも上がります。今後そういったものがどんどん周りに増えていってくれたらうれしいです」と感想を述べた。

 

 リーグワンでは初となるチームのネーミングライツに指揮官も歓迎している。
「ファンにとってもエキサイティングなラグビー、スピアーズのラグビーが見られる場所はここだ、と。それは我々の努力だけではなく、地元地域のおかげでもある。我々としてもエキサイティングなラグビーを見せたい思います」
 既に愛称として馴染んでいる“えどりく”は継続。加えたのは企業名でなくチーム名というところにもこだわりが窺える。

 

  締結に至った背景としては、江戸川区が施設の管理・運営等のための財源確保や施設の魅力向上を目的に、江戸川区陸上競技場のネーミングライツパートナーを募集したことがきっかけだ。その経緯について、石川充GMはこう説明した。
「この“えどりく”を何か象徴的なものにしたいなという思いがありました。たまたまネーミングライツの公募があり、ウチも手を挙げました。私たちも『えどりくにいこう』というプロモーションをしていたので、“えどりく”を残しました。(チーム名を入れたのは)スピアーズとして、“江戸川でしっかりプロモーションをしていこう”という想いが表れる名前にしたかったからです」

 

 S船橋・東京ベイとしては、より江戸川区内での認知度を上げたいという狙いがある。「まずは江戸川区の方に認めてもらいたい。区の人も含めて来ていただかないと観客席は埋まらない」と石川GM。現在、“えどりく”の収容人数は、ゴール裏の芝生席を除くと約5000人だが、満席には至っていない。屋根がなく、コンコース通路もない。観る側の視点に立っても、改善の余地は少なくない。区民の支持を得られれば、増改築も現実を帯びてくるはずだ。

 

 チームと共にホストスタジアムも進化していく。初の日本一を目指すチームの新たな挑戦がスタートした。

 

(文・写真/杉浦泰介)