「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」ディビジョン1、リーグ戦は残り2節となった。既に埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)がプレーオフ進出の切符を掴んだ。残り2枚を3位・東京サントリーサンゴリアス(東京SG)、4位・キヤノンイーグルス(横浜E)、5位・東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)の3チームで奪い合う。第15節は東京SGと横浜Eによる直接対決だ。

 

 第14節終了時点、東京SGが11勝3敗で勝ち点51、横浜Eが9勝2分け3敗で勝ち点48を獲得している。東京SGは14日に三菱重工相模原ダイナボアーズ(相模原DB)と戦うBL東京の結果次第(引き分け以下)で、試合前にプレーオフ進出が決まる。BL東京が勝った場合でも、15日にプレーオフ争いを繰り広げる横浜Eとの直接対決に勝てば、文句なしでプレーオフ進出となる。

 

 東京SGと横浜Eは2019年ラグビーW杯日本大会決勝の会場となった神奈川・日産スタジアムで対戦する。前回の対戦は、今年1月に東京・味の素スタジアムで行れた第3節。両チーム退場者(東京SGはレッドカード1枚、横浜Eはイエローカード2枚)を出す荒れた展開を32-23で制したのは東京SGだった。

 

 3カ月ぶりの対戦は、雨時々曇りと予報が出ている。共に個性豊かなBKを揃えるチームだが、この日はFWバトルがカギを握るだろう。そこで東京SGのキーマンとなるのがHO堀越康介である。今季からSH斎藤直人と共同主将を務める帝京大学の全国大学選手権大会V9時のキャプテン。身長175cm、体重100kgの27歳。馬力のある突破が持ち味だ。前節のコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)戦ではラインアウトから相手を弾き飛ばす力強い突破でトライを挙げている。

 

 田中澄憲監督は共同主将の2人を「この2、3週間で変わってきた」と評価する。
「自分のスタイルを理解し、表現できている。前はリーダーシップを意識し過ぎて自分のスタイルを出し切れなかった。それがいい意味で力が抜けてきたんだと思います。ホリはプレーで引っ張っていく。彼はタフなところを大事にする人間。直人に関してはうまく発信しなきゃいけない、という思いにとらわれていた感があった。今は感じたことをその場、その場で自分の言葉で発信できている。2人共リーダーとして成長していると感じます」

 

 堀越本人は「直人とバランスを取りながらやれている。僕は芯の部分。フィジカルというラグビーで避けて通れないところが甘くなっていたら、常に厳しく言っています」と自らの役割を説明する。大学の先輩にあたる前主将のCTB中村亮土は、堀越のキャプテンシーについて「プレーで身体を張っているし、澄さんを含め、同じことを言い続けている。そのブレないところが非常にいいと思います」と語っている。

 

 横浜Eを率いる沢木敬介監督は東京SGの元監督である。その一戦に向けて、堀越は「普段の試合と変わらない。ただ勝たなければいけない試合なので、勝ってプレーオフ進出を決めてきたい」と意気込む。「選手も元指揮官が率いるチームなので、自ずと勝ちたいという気持ちがあると思う。特別ではないですけど、大事な一戦というのはみんな分かっていると思います」と田中監督。相手どうこうではなく、一戦必勝の思いは変わらない。

 

 東京SGは前節の神戸S戦は強い雨風に吹かれ、ラインアウト、ボールハンドリングに苦戦した。「ハーフタイムで急遽、ラインアウトのサインを3つつくりました。その意味では、チームの対応力も上がってきていると思います」と堀越。従来のサインをアレンジしたものとはいえ、3つのサインを即座に用意できるのだから、チームの成熟度は上がってきているのだろう。

 

 堀越は、ここまでのチームの成熟度を「80%ぐらい」と言い、こう続けた。
「ここから20%を埋めていくかは小さいところの精度、全員の理解力を高められるか。そしてプレッシャー下でどれだけ自分たちのプレーをできるかにかかってくる」
 佳境を迎えるリーグワン。王座への挑戦権はプレーオフに進まなければ得られない。注目の一戦のキックオフは刻一刻と迫っている。

 

(文・写真/杉浦泰介)