「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」ディビジョン1第15節が15日、神奈川・日産スタジアムで行われ、東京サントリーサンゴリアス(東京SG)が横浜キヤノンイーグルス(横浜E)を11-9で破った。東京SGは今季3位以上が確定し、4位までが進めるプレーオフ出場権を得た。7点差以内の敗戦でボーナスポイントを獲得した横浜Eは前節の4位のまま最終節を迎える。

 

「勝ち切ることが大事。勝つことが一番。不細工でも勝つ」。4日前、東京SG田中澄憲監督は、試合当日の天気が雨との予報を受け、そう語っていたが、我慢比べ、根比べのような戦いとなった。

 

 キックオフから降り続ける雨が選手たちから自由を奪う。先制したのは横浜E。出足の速いディフェンスでボールを奪取すると、相手のノット・ロール・アウェイの反則を誘う。3分、SO田村優がPGを確実に決めて3点をリードした。

 

 しかし横浜Eにアクシデントが起こる。前半7分、FB松島幸太朗にタックルを仕掛けた田村優のアゴにヒザが入ってしまったのだ。田村優は小倉順平との交代を余儀なくされ、横浜Eは早々に司令塔を失うこととなった。

 

 それでもFWの奮闘で試合を優位に進める。8分に相手ボールのスクラムでペナルティーを獲得。このPGはFBエスピー・マレーが外したものの、敵陣でのプレーを続けた。30分にはNo.8テビタ・タタフがチャージに行った際に勢い余って危険なプレーとなり、イエローカード。シンビンで数的有利となった。そのPGをマレーが決め、6-0とリードを広げる。

 

 一方の東京SGは1人少ない時間を耐え、前半終了間際には、自陣に攻め込まれながらLOツイヘンドリックがボールを奪った。さらに敵陣でペナルティーを獲得。SO田村煕がPGを成功し、3-6で前半を終えた。

 

 後半12分に田村煕がPGを決めて追いつくが、14分にはマレーがPGを成功し、再び3点差に。両軍譲らぬまま均衡は続いた。

 

 東京SGは後半から投入したSH流大のパス回しでリズムをつくり、FW第一列が身体を張って前に出る。30分、敵陣で横浜EのHO川村慎が反則を犯し、イエローカード。今度は東京SGが数的有利となった。

 

 直後の敵陣右でのラインアウトからのモールでインゴールに迫る。最後尾でボールを保持するタタフは狭いサイド(タッチライン側)に仕掛け、インゴール右隅に飛び込んだ。この試合初トライで、東京SGがついにリードを奪った。

 

 その後も敵陣でのプレーし、アタックを続ける。終了間際にもインゴールまで迫ったが、「勝つことを優先した」と流は迷わず外に蹴り出し、ノーサイド。勝ち点4を積み上げ、55とした東京SGは3位以上が確定し、2季連続のプレーオフ進出を決めた。

 

 試合後の記者会見で田中監督は「『1点差でもいいから勝ち切るゲーム』と話していたので、そういう内容になった。選手が焦らずプレッシャーの中でも自分たちの強みを出して勝ち切ってくれた。またひとつ成長したゲームだったと思います」と総括した。同席した共同主将のHO堀越康介は「80分後に1点でもいいから勝つ。そういう気持ちで試合に臨みました。前半難しい場面もありましたが、80分間やり続けたからこそ最後の最後で自分たちの流れに持ってこれた。ハングリーさ、サントリーらしさが出た試合だと思います」とタフなゲームを制したことに胸を張った。

 

 後半10分から投入され、プレーヤー・オブ・ザ・マッチ(POM)に選ばれた田村煕と共にゲームメイクを担った流は「僕がどうこうというよりも、FWが勝ってくれた勝利。FWのみんなにPOMをあげたい感じです」と語ったように肉弾戦を制したFWの奮闘が光った。堀越も「受けてしまった時間もあったが、ハドルで『モメンタム(勢い)で負けるな』と言い続けた。『1mでもいいからゲインしよう』と。そこは意識しました」と激闘を振り返った。

 

 次節は22日、敵地に乗り込み、2位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)と対戦する。開幕節では本拠地で敗れている。「リーグ戦はもう1試合残していますので、いい準備をしてクボタにチャレンジしたい」と田中監督。堀越は「必ずリベンジして叩き潰していきたいと思います」と語気を強めた。

 

 敗れた横浜Eもボーナスポイント獲得でプレーオフ出場圏内の4位を守った。5位の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)との勝ち点差は1。BL東京は21日に埼玉パナソニックワイルドナイツと対戦するため、試合前に結果は出る可能性もあるが、引き分け以上ならば横浜Eにも大きなプレッシャーがかかる。次戦は22日、敵地でコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)と戦う。沢木敬介監督も「プレーオフなど先を見ず、ベストなパフォーマンス、ベストなラグビーをする」と語った。HO庭井祐輔も「そこは一貫している。いいラグビーをして勝つ」と必勝を誓った。

 

(文・写真/杉浦泰介)