女子ソフトボール「JD.LEAGUE」は4月15日に開幕する。初代女王のビックカメラ高崎は群馬・宇津木スタジアムで、昨季ベスト4の日立と対戦(15日の試合は雨天順延)。2連覇を目指すビックカメラにおいて、大車輪の活躍を見せたのが濱村ゆかりだ。エース上野由岐子がコンディション不良により一度も投げられない中、濱村は21試合に登板、13勝2敗、防御率0.81をマークし、東地区とダイヤモンドシリーズ(プレーオフ)のMVPに輝いた。チームの大黒柱に、今季の意気込みを訊いた。

 

――JD.LEAGUE2季目のシーズンが近づいてきています。

濱村ゆかり: 練習試合、オープン戦で少しずつ投げてきて、いい準備ができていると思います。今季はもっと強い身体をつくりたくて、ウエイトトレーニングの量を増やしました。まだ変化を実感するところまできていませんが、シーズンを通して、どうなっていくか楽しみです。

 

――ビックカメラ高崎は今季、8人が新加入。チームの雰囲気は変わりましたか?

濱村: やはり新人選手がそれだけ加われば、雰囲気もチームも変わると思う。ただ昨季のレギュラーメンバーは残っているので、私たち先輩がプレーで見せて、新人のみんなを引っ張っていけるようなチームでありたいと思っています。

 

――昨季は開幕投手を任されるなどリーグ戦29試合中21試合に登板し、ダイヤモンドシリーズは1人で投げ抜きました。その疲れはまだ残っていますか?

濱村: それが全然、疲れていないんです。アハハハ。昨季は今までよりも、いろいろな経験をさせてもらいました。上さん(上野由岐子)がいない中、自分が先発を任された。そうやって信頼してもらえたことがすごく幸せでした。

 

――プレッシャーに感じるよりも、楽しめたと?

濱村: そうですね。それをプレッシャーと考えると、苦しくなってしまう。勝つことにこだわりを持っていますが、まずは与えられた役割を自分が全うしようという気持ちで、毎試合投げたつもりです。

 

――ダイヤモンドシリーズは準決勝の日立戦、決勝の豊田自動織機戦で、いずれも1失点完投でした。この経験は自信につながりましたか?

濱村: プレーオフだからという特別な意識はあまりありませんでした。どの試合も1球1球、1試合1試合を大事にして投げました。その結果がプレーオフでのいいピッチングにつながったと思います。もちろん開幕戦の時よりもプレーオフの時の方が成長した自分がいたと思いますし、技術もメンタルもレベルアップできたと感じています。また今季も新しい気持ちで挑戦し続けていきたい。

 

「ピッチャー全員で勝ちたい」

 

――マウンドではあまり表情を変えない印象があります。

濱村: 元々、感情を表に出して投げるタイプではないと思っています。やはり相手に隙は見せちゃいけないですし、余裕を見せないといけない。ただ若い頃は焦ってしまうこともありました。焦ってもいいプレーはできません。できることは限られているので、冷静に自分自身のスキルを出し切るだけ。常に冷静に、でも心は熱くという気持ちで投げています。

 

――そういったメンタルコントロール術は誰かのアドバイスがあったのでしょうか?

濱村: 宇津木妙子さん(現・ビックカメラ高崎シニアアドバイザー)からはいろいろなことを教えてもらいました。日本代表の(宇津木)麗華監督は私が1年目のチームの監督。“もっとこうしたらいいんじゃない”とアドバイスをもらえます。あとはキャッチャーの我妻(悠香)さんの存在が大きいですね。私の良い時も悪い時も分かっているので。そういう方々と話ができる今の環境のおかげで、自分が成長できていると実感します。

 

――日本代表の正捕手でもある我妻選手との呼吸は抜群ですね。

濱村: もちろんです。先ほど心は熱く、という話をしましたが、私がもしキャッチャーだったら、その熱くなっている気持ちがわかるから真っ向勝負にいってしまう。でも我妻さんはすごく冷静。バッターの仕草や反応を見ながら、味方のピッチャーが投げるボールの質を踏まえて配球する。すごく考えてサインを出していることがマウンドからも伝わってきます。まずはその要求通りに自分が投げられるか。ピッチャーから見える、感じることもあるので、そこは2人で話し合いながら投げられています。

 

――先輩の上野投手から学んだことは?

濱村: 本当にたくさんのことを教えていただきました。私は不安なことや聞きたいことがあると、上さんを頼ります。いろいろなピッチャーと話をしましたが、上さんはいろいろな発想があり、たくさんの引き出しを持っている。私が言うのもおこがましいかもしれませんが、それが世界一のピッチャーたる所以なのかなと思っています。

 

――尊敬する先輩であり、ポジションを争うライバルでもあるわけですよね。

濱村: 誰が投げるかは、私が決めることではありません。ただ監督が「ハマ(濱村)だったら勝てる」と思ってもらえるピッチャーでいたい。全試合1人で投げることはできないので、私は全員で勝ちたい。他のピッチャーが投げている時に、ライバル意識はないですね。

 

 零封がモチベーション

 

――先発へのこだわりはありますか?

濱村: 特にないです。先発は先発、リリーフはリリーフ、それぞれの準備の仕方、緊張感があります。どちらも楽しいです。

 

――今季はもっと投げたい?

濱村: はい。昨季、たくさん投げさせてもらって、試合ごとにいろいろな反省点が出ました。それを経て、自分自身が成長できたと思う。試合で投げてこそ、気付くこともあるので、試合での経験はとても大事だと実感しています。

 

――リーグのHPに掲載されている「注目して欲しいプレー」の項目に<粘り強いピッチング>と答えています。

濱村: 際どいコースに投げ続け、ボールが多くなっても焦らない。フォアボールを嫌がって甘いコースに入って打たれるのが一番嫌です。どんなにカウントが悪くなっても、ファウルで粘られても確実にコースを突いていくというのが自分の粘り強さだと思います。

 

――ピッチングの理想像は?

濱村: 私はヒットを何本打たれてもいい。ただホームベースさえ踏まさなければ1点も取られない。ノーアウト満塁になっても、どうやったら0点で抑えられるかを常に考えています。ゼロで抑え続けることが自分の中でのモチベーションです。

 

――最後に今季の目標を。

濱村: 最後は笑顔で終わりたい。そのためには1戦1戦の積み重ねが大事だと思っています。最終的な目標は優勝ですが、それまでの過程も大事に戦っていきたい。

 

――個人としては?

濱村: 昨季はいい結果を残せたと思いますが、防御率はもっと下げられたと思っています。

 

――防御率0.81でも満足できない?

濱村: 0.00なら完璧です。0.10でも満足はしないと思う。マウンドを任された以上は役割を全うしたい。無駄な失点を防ぎ、勝ちに導けるピッチングをしたいですね。

 

濱村ゆかり(はまむら・ゆかり)プロフィール>

1995年6月23日、千葉県生まれ。小学4年で野球、中学1年でソフトボールを始める。八木が谷中学、木更津総合高校を経て、2014年、ルネサス高崎(現・ビックカメラ高崎)に入部した。在籍9年間で6度のリーグ優勝を経験している。JD.LEAGUE初年度の昨季は13勝2敗、防御率0.81の活躍で、ビックカメラ高崎の優勝に貢献。東地区&ダイヤモンドシリーズのMVPに輝いた。日本代表としては16年、18年の世界選手権に出場。右投右打。身長171cm。背番号15。

 

BS11では昨季「JD.LEAGUE」ダイヤモンドシリーズファイナルのビックカメラ高崎vs.豊田自動織機戦を4月15日(土)20時より放送予定です。また4月12日(水)にオンエアした「JD.LEAGUE」情報番組『Wow! JDリーグ』の初回放送はBS11+で配信中。是非、ご視聴ください。

 

(取材・構成/杉浦泰介、写真/ビックカメラ高崎提供)


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