1日、「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-2023」のプレーオフトーナメントに出場する横浜キヤノンイーグルス(横浜E)が東京・キヤノンスポーツパークでの練習の一部をメディアに公開した。

 

 レギュラーシーズン4位で初のプレーオフ進出を果たした横浜E。横浜EキャプテンのCTB梶村祐介は「まずひとつのターゲットをクリアできたことはうれしい。これで優勝するチャンスが出てきたので、チームとして掴んでいきたい」と意気込む。就任3季目で、チームを初の4強入りに導いた沢木敬介監督は「(4強入りは)クラブとして成長してきた証。ここから進化していくことが大事」と前を見据えている。13日の準決勝はリーグ連覇を狙う埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)と東京・秩父宮ラグビー場で対戦する。今季は第6節(1月28日、埼玉・熊谷ラグビー場)で当たり、埼玉WKに土壇場で19‐21と逆転負けを喫した。

 

 横浜Eは4月23日にレギュラーシーズン最終節を戦い終え、約1週間のオフを挟んで、この日がプレーオフに向けた全体練習のスタートだった。プレーオフの戦いにおいて、平常心を保つことが大事だと強調するのは、経験豊富な2人だ。ジャパン70キャップのSO田村優が、「ただの1試合。今までやってきたラグビーの中の1試合に過ぎない。いつも通りの感情でやればいいと思います」と言えば、南アフリカ代表46キャップのSHファフ・デクラークも「特に変わることはない。プレーオフだからといって大きく変えてしまうと、命取りになってしまう。同じようなプロセスで準備して行きたい」と語った。

 

 また、この試合で注目されるのが横浜Eのスペシャルプレーだ。前回の対戦で後半7分に飛び出した“奇策”があったからである。敵陣深くでペナルティーを獲得すると、LOコーバス・ファンダイクがタップキック。すぐにボールを地面に置き、埼玉WKの守備を撹乱し、それを拾ったデクラークが走り込んできたFBエスピー・マレーに繋ぎ、トライを挙げた。

 果たして、プレーオフでも仕掛けてくるのか――。4月24日に行われたプレーオフの記者会見で、司会者に促されて埼玉WKキャプテンのHO坂手淳史が横浜E側にぶつけた質問は、「スペシャルプレーはまたやってきますか? どのくらいオプションの量があるんですか?」だった。

 

 その席では「オプションはたくさんあります」とデクラークは煙に巻いたが、この日の囲み取材でも沢木監督に報道陣からスペシャルプレーに関して問われた。それに対し、「スペシャルプレーを前面に押し出しているわけではない」と前置きした上で、指揮官は答えた。

「ただ何をやってくるかわからないチームということを楽しんでもらえれば、と。それが僕はチームとして値打ちのあることだと思います」

 スペシャルプレーを披露した試合後の記者会見で沢木監督は、こうも話していた。

「誰が考えたかはご想像にお任せします。ただ、ああいうプレーは面白いじゃないですか。ラグビーを楽しむというのが僕らの根底にある。あのプレーを見て楽しんでもらえたら」

 

 ワクワクするラグビー。スペシャルプレーもラグビーを楽しむことの一部ということだろう。13日のプレーオフ準決勝は、初の4強入りを果たした横浜Eが王者の埼玉WKに挑む構図だが、田村は「パナ(埼玉WK)どうこうより、楽しんでやることが一番じゃないですか」と言う。梶村も「もちろん勝ちに行きますが、ワクワクする、面白いラグビーを皆さんに見せたい」と口にする。やはり埼玉WKの堅牢なディフェンスとディシプリンを、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)と並ぶリーグ最多の84トライを挙げた攻撃力で打ち破りたい。

 

(文・写真/杉浦泰介)