第247回 NPB、どうするピッチクロック!?
米国がくしゃみをすると、日本は風邪をひく――。
<この原稿は2023年5月1日号『週刊大衆』に掲載されたものです>
株式投資の世界で、昔から、よく耳にする言葉だ。
日本株と米国株の動きは連動しており、影響を避けるのは困難であるという意味だ。
同じことは野球においても言える。もとより米国がベースボールの本家なのだから、当たり前と言えば当たり前の話ではあるのだが……。
とりわけメジャーリーグ(MLB)の影響を強く受けるのが新ルールである。米国で採用されたコリジョンルールもリプレー検証も、当初、NPBはあまり乗り気ではなかったが、少しばかり遅れて導入された。
その伝でいくと、試合時間を短縮するためMLBが今季から採用したピッチクロックを取り入れるのは、もはや時間の問題だろう。
ピッチクロックとは、MLBが試合時間短縮のために設けた新ルールで、投手は走者なしでは15秒以内、走者がいる場合は20秒以内に「始動」しなくてはならない。制限時間を超えた場合、投手にはペナルティとして「1ボール」が課される。
さる5日(日本時間6日)のマリナーズ戦では、ピッチクロックに違反したエンゼルスの先発・大谷翔平が審判に説明を求める一幕があった。
「審判の方も、ちょっとグレーゾーンみたいな感じだった」と大谷。こうした混乱は、しばらく続くのではないか。
一方、打者は8秒以内にバットを構えなければならず、これに違反すると「1ストライク」がカウントされる。大谷は打者としても、ひとつ違反を犯した。
実は、このピッチクロック、社会人野球では今季から7イニング制の実証実験を始めた。走者なしでは12秒以内と、MLBと若干、中身は異なるが、試合のスピードアップを目指すという目的は同じである。
MLBに社会人野球。先行事例があれば、対策も立てやすい。NPBが“後発者利益”を狙っているとすれば、それはそれで賢いやり方と言えるのかもしれない。