9日、格闘家の武尊が都内で記者会見を行い、アジア格闘技団体『ONE Championship』との独占複数試合契約を結んだことを正式に発表した。会見にはONEの創始者であるチャトリ・シットヨートンCEOも同席し、「武尊はストライカーの中でパウンド・フォー・パウンド」と契約理由を語った。

 

 6月24日に復帰戦を控える武尊は、現在の心境を述べた。

「約1年ぶりの試合になる。やっと応援してくれる皆さんに見てもらえる。勝つ姿を1日でも早く見せたくて、うずうずしています。僕自身、格闘家として闘いに飢えている状態なので早くリングに上がって全力で闘いたい」

 急遽、会見を開いたことについては「復帰戦に勝ってから発表しようと思っていた」というONEとの独占複数試合契約締結が既に報道されてしまったことにより、「自分の口からファンの皆さんに報告したかった」ことが理由だ。

 

 昨年10月31日にK-1との契約を満了して以降、新たな道を切り拓いている。3月にはフランス・パリでの復帰戦決定とインターネット放送局ABEMAの“専属PPVファイター”としての契約を発表。そのファイトマネーは1試合1億円。これもあくまで最低額であり、PPVの売り上げに応じた追加報奨金もあるという。復帰戦後の闘いの場にONEを選んだことについては、こう説明した。

「僕の現役キャリアは最終章に入っている。今が一番に強いと思っている。その時期に世界に挑戦したい。世界最強選手がたくさん集まっているONE Championshipで試合をしたい気持ちがあった。今はK-1ファイターではないがK-1チャンピオンの誇りを持っているし、K-1代表としてONEに殴り込みに行こうと思っている。世界でもっと日本人選手が注目され、活躍できる環境をつくりたい」

 

 日本人の母を持つチャトリCEOも興奮気味にまくし立てた。

「魔裟斗さんも(那須川)天心選手も、日本の中で戦っていた日本のチャンピオンです。例えて言うならば、日本のプロ野球でしかプレーしていない野球選手と同じ。大谷翔平選手は日本を飛び出し、メジャーリーグという大舞台で努力を続け、そして世界で最高のポジションを努力とともに獲得した。武尊は格闘技界の大谷翔平になるために、これから日本を飛び出し、大きな大きな一歩を踏み出していく。今まさに格闘技においてその大きな偉業を成し遂げようとしているわけです」

 

 チャトリCEOは武尊を「ストライカーとしてはパウンド・フォー・パウンド。唯一無二の存在」と絶賛。ONEデビュー戦については「スケジュールはこれから。どこがデビューに適しているか。まずは武尊とABEMAとディスカッションしたい」と話すにとどめた。武尊はONEを選んだ理由のひとつに「闘いたい相手がONEにいた」と口にした。この日の会見では詳しく言及しなかったが、現ONE世界フライ級ムエタイ王者のロッタン・ジットムアンノン(タイ)を指していると思われる。6月24日の復帰戦は、ISKA K-1ルール世界ライト級(61kg)王座決定戦に臨む。対戦相手は同スーパーライト級王者のベイリー・サグデン(イギリス)。ロッタン戦実現のためにもフランスでベルトを手にし、日本に戻ってきたいところだ。

 

「日本の皆さん、大谷翔平選手のようにこれから世界を目指していく武尊選手に最大の賛辞と応援をよろしくお願いいたします」とチャトリCEO。だが武尊は「ONE Championshipで世界最強を証明します。僕は大谷翔平のようにではなく“世界の武尊”になれるようにやっていく」と力強く宣言した。

 

(文・写真/杉浦泰介)