19 日、「NTTジャパンラグビー リーグワン2022-23 プレーオフトーナメント」(PO)3位決定戦が東京・秩父宮ラグビー場で行われ、横浜キヤノンイーグルス(横浜E)が東京サントリーサンゴリアス(東京SG)を26-20で下した。横浜Eは前身のトップリーグ時代を含め初の3位となった。

 

 1980年創部以来、初めてトップ4に入った横浜E。準決勝は前年王者・埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)に屈したが、優勝経験のある強豪・東京SGを初めて破り、3位を掴み取った。

 

 準決勝から中5日の横浜Eと中4日の東京SG。ショートウィークで迎えた3位決定戦はアタックを得意とするチーム同士の対戦となった。先制は東京SGだ。4分、CTB中野将伍のパスを受けたWTB尾﨑泰雅がタッチライン際を走った。サポートするFB雲山弘貴に一旦ボールを預け、再びパスを受けると、SHファフ・デクラークのタックルをものともせずインゴール左隅にダイビングトライ。5ー0とリードした。

 

 15分には横浜Eが逆転する。左ラインアウトからデクラークが抜け出し、No.8シオネ・ハラシリ、WTB松井千士とパスが繋がった。松井はCTBサム・ケレビにつかまれながらもインゴール左中間に飛び込んだ。SO田村優がコンバージョンキックを決めて7-5と2点のリードを奪った。

 

 東京SGは20分にSOアーロン・クルーデンのPGで再逆転すると、30分には左ラインアウトから抜け出したFL小澤直輝がトライで追加点を挙げる。クルーデンがコンバージョンキックを成功し、前半は15-7と東京SGリードで終了した。

 

 後半に入ってもシーソーゲームは続く。6分、ラインアウトからのモールで前進すると、デクラークがスキを見逃さない。ショートサイドを抜け出し、WTB尾﨑泰雅をショートパントでかわす。自らのボールをキャッチし、そのままインゴール右隅に滑り込んだ。12-15と3点差に迫った。

 

 17分にはスペシャルプレーが飛び出す。敵陣深くでペナルティーを獲得。FLコーバス・ファンダイクがボールを持つ。今季第6節(1月28日、埼玉・熊谷ラグビー場)での埼玉WK戦でトリッキーなアタックを見せたが、この時も起点はファンダイク。再現を予感させたが、同じ手は使わない。

 

 左側をデクラーク、FB小倉順平が走り出すと、ファンダイクが逆側に放る。ボールをキャッチしたハラシリらFW団がモールを組んでインゴールに雪崩れ込んだ。これで17-15。小倉のコンバージョンキックが決まり、19-15と試合をひっくり返した。

 

 サインプレーを考案したのは沢木監督だ。小倉は「沢木さんがいろいろ考えてくれる。プレーヤーとしても面白い。まずそれをすぐにチームに落とし込む力がすごいと思います。1回しか練習していないので」と振り返る。デクラークも「敬介さんが持ってくるアイディアは自分が今までやってきたことのないものもあるので、すごく新鮮です」と話した。

 

 勝敗の行方はまだわからない。21分、ラインアウトモールから横浜EのHO中村駿太に押し込まれた。19-20。「あの時間に取られたらズルズルいく。カジ(キャプテンのCTB梶村祐介)たちリーダーが引っ張りながら耐えることができた」と沢木敬介監督が振り返ったように、横浜Eは下を向かなかった。

 

 26分、右ラインアウトからデクラークは左に展開。梶村がノールック気味に田村へパスすると、背番号10はグラバーキックで裏のスペースを狙う。走り込んだ小倉がキャッチして、すぐに外の松井へ繋いだ。松井はインゴール左に飛び込み、逆転トライ。小倉がコンバージョンキックを決め、26-20とした。

 

 1トライ1ゴールで逆転できる点差だが、東京SGの反撃に耐えた。ファンダイクのジャッカル、デクラークがボールを奪取。最後はデクラークが外にボールを蹴り出した。この瞬間、対サントリー戦白星とトップディビジョンでの3位を初めて手にした。

 

 沢木監督は試合後の会見で、こう語った。
「新しい景色を見られたことと、チームが成長した姿を見せてくれたのは喜ばしいこと。僕やカジが元サントリー(東京SG)所属だとか、そういうことは関係なく、サントリーに対しては、すごく苦手意識があったと思います。接戦に持ち込めるけど、勝てない。それが強いチームということなのでしょうけど、勝ったことでさらに自信がつくと思います」

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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