22日、ラグビーの「NTTリーグワンアワード2022-23」が都内で開催され、ディビジョン1のMVPにはクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)の初優勝に貢献したキャプテンのCTB立川理道が輝いた。新人賞には準優勝の埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)からCTB長田智希が選ばれた。ベストフィフティーンにはS船橋・東京ベイと埼玉WK勢がそれぞれ4人ずつ選出。そのほか得点王、最多トライゲッターなどの個人賞受賞選手が表彰された。

 

 国立競技場での激闘から2日後、シーズンを締めくくる表彰式、「リーグワンアワード」が開催された。初優勝を遂げたS船橋・東京ベイからはMVP(立川)、ベストフィフティーン(PRオペティ・ヘル、HOマルコム・マークス、SOバーナード・フォーリー、WTB木田晴斗)、優勝ヘッドコーチ賞、フェアプレーチーム賞に加え、個人タイトルの得点王(フォーリー)、ラインブレイカー賞(木田)と多くの賞が授与された。

 

 立川は「ここに来てMVP受賞を知ったので、本当にびっくりしています。自分ひとりの力ではなく、チームのみんな、“オレンジアーミー”(ファンを含めたS船橋・東京ベイの選手、スタッフ、関係者の総称)のおかげ。来季も賞をいただけるように成長していきたいと思います」と喜びのスピーチ。今季を振り返り、「これ(MVP受賞)に関してはでき過ぎ。選んでくれて感謝しています。フラン・ルディケHCと一緒にやってきて苦しいシーズンもありました。今年の勝利で自分たちがやってきたことは間違いではなかった、と証明できました。さらにいい文化をつくり上げていって、来季も勝てるようにしたい」と前を見据えた。

 

 ルディケHC、立川主将体制は7シーズン。最初の2シーズンは12位、11位と結果は出なかった。「シーズン終わって2人で、チームが勝てない理由、変わらない理由を僕が愚痴のようにこぼすと、フランは冷静に『それをつくりあげたのはオレとオマエじゃないか』と言いました。『それを変えられるのはオレら2人だろ』と。キャプテンとしての在り方が変わった。自分の意見を、うまく話せなかったとしても、しっかりと口に出すきっかけとなりました」と立川。それによって風通しの良い土壌づくりに繋がったと言えよう。一昨季から3位タイ、3位と徐々に順位を上げていき、今季頂点に辿り着いた。

 

 この日、チームはマークスとフォーリーの契約延長を発表した。ベストフィフティーンにも選出され、今季も絶大な存在感を放った助っ人の残留は、オレンジアーミーにとって朗報だろう。立川の同期で幼馴染のSH井上大介、ニュージーランド代表48キャップのCTBライアン・クロッティらチーム文化醸成に寄与してきた選手たちは去るものの、進化の歩みを止めるつもりはない。「連覇しなければならないという使命感も今はありません。大きな目標はもちろん立てますけど、それだけを追っかけてやるわけではない。1週間準備して、週末にいい結果が待ってる、そのプロセスを大事にすることで、結果が付いてくるっていうのは分かってきた」。今季は先を見過ぎず、自分たちにファーカス、目の前のことにフォーカスすると言い続けてきた。王者となってもその姿勢を変えるつもりはないようだ。

 

 S船橋・東京ベイと優勝を争った埼玉WKもベストフィフティーンは同じ4人(PR稲垣啓太、CTBディラン・ライリー、長田、FB野口竜司)。長田は新人賞との個人2冠を達成した。木田との“マッチレース”を制した新人賞はファン、メディア、監督・HC、主将、選考委員の5部門での各順位をポイント化して選出される。「いつ出てもいいように準備していた」という長田は第5節で初キャップを刻むと、プレーオフを含む16試合に出場し、9トライを挙げた。

 
 受賞は「予想していなかった」という。ここまでの活躍からすれば驚きではないが、確かに16トライを挙げ、ベストラインブレイカー賞も獲得した木田のインパクトも負けず劣らずである。「(自分の)プレー自体はまだまだですが、賞をいただけたことはでき過ぎ。(ベストフィフティーンは)僕よりもすごい選手がいた。もっと成長したいと思います」と殊勝なコメント。24日にはジャパン候補が発表される。木田と共に初のメンバー入りする可能性は十分にあるだろう。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

 主な受賞チーム、選手は次の通り。

 

【優勝】
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ
【準優勝】
埼玉パナソニックワイルドナイツ
【3位】
横浜キヤノンイーグルス

【4位】

東京サントリーサンゴリアス
【フェアプレーチーム賞】
クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

 

【MVP】
立川理道(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 初

【新人賞】
長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ)


【得点王】
バーナード・フォーリー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 173 得点 (43G/29PG) 初

【最多トライゲッター】
尾﨑晟也(東京サントリーサンゴリアス) 18トライ 初
【ベストキッカー】
松田力也(埼玉パナソニックワイルドナイツ) 85.5%(PG 16/20、 G37/42) 初
【ベストラインブレイカ―】
木田晴斗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 23回 初
【ベストタックラー】
ハリー・ホッキングス(東京サントリーサンゴリアス) 87.9% 初

【優秀ヘッドコーチ賞】
フラン・ルディケ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 初

【ベストホイッスル賞】
古瀬健樹 初

【ベストフィフティーン】
PR1 稲垣啓太(埼玉パナソニックワイルドナイツ) 2季連続2回目
HO マルコム・マークス(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 初
PR3 オペティ・ヘル(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 2季連続2回目
LO ワーナー・ディアンズ(東芝ブレイブルーパス東京) 初
LO ハリー・ホッキングス(東京サントリーサンゴリアス) 初
FL 姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ) 初
FL ピーターステフ・デュトイ(トヨタヴェルブリッツ) 初
No.8 クワッガ・スミス(静岡ブルーレヴズ) 2季連続2回目
SH ファフ・デクラーク(横浜キヤノンイーグルス) 初
SO バーナード・フォーリー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 初
WTB 木田晴斗(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ) 初
WTB 尾﨑晟也(東京サントリーサンゴリアス) 初
CTB 長田智希(埼玉パナソニックワイルドナイツ) 初
CTB ディラン・ライリー(埼玉パナソニックワイルドナイツ) 2季連続2回目
FB 野口竜司(埼玉パナソニックワイルドナイツ) 初

 

【プレーヤー・オブ・ザ・シーズン】
クワッガ・スミス(静岡ブルーレヴズ) 初
【ゴールデンショルダー】
山本凱(東京サントリーサンゴリアス) 2季連続2回目
【社会貢献賞】

NTTドコモレッドハリケーンズ大阪 初