日本代表にとってはビッグニュースである。

 

 9月9日(現地時間)にヴォルフスブルグのフォルクスワーゲン・アレーナにおいてドイツ代表との国際親善試合が決定したのだ。“リマッチ”が実現する形となった。

 

 先のカタールワールドカップで両者はグループリーグ初戦で対戦し、日本はドイツの猛攻を受けて前半に先制されながらも後半に2点を奪って逆転勝ちを収めた。日本からすれば“ドーハの奇跡”なのだが、ドイツからすれば“ドーハの悪夢”でしかない。勢いに乗った日本がスペイン代表にも勝ってノックアウトステージに進出したのとは対照的に、ドイツは2大会連続のグループリーグ敗退となった。

 

 今回DFB(ドイツサッカー連盟)のほうから声が掛かり、実現に至ったとも聞く。来年に予定されるEURO(欧州選手権)のホスト国となるドイツからすれば、しっかりとリベンジを果たして弾みをつけたいところだろう。森保一監督はJFA(日本サッカー協会)を通じて、このようにコメントしている。

 

「この試合は我々にとっては11月に始まるワールドカップアジア2次予選、来年のアジアカップに向けた準備、ドイツにとっても自国開催 の欧州選手権に向けた調整という位置づけかもしれませんが、素晴らしい強化の場になることは間違いありません。

 また、昨年行われたFIFAワールドカップカタール大会での対戦時は我々が勝利できましたが、ドイツは世界トップクラスの実力を兼ね備 えていることに疑いの余地がありません。我々が世界トップ基準を忘れることなく、チーム強化を進めていくためにも貴重な機会にもなります」

 

 リリースの文面から、興奮が伝わってくるようでもある。

 

 なぜビッグニュースなのかと言えば、「貴重な機会」という指揮官の言葉どおり、親善試合のマッチメークに苦労している背景があるからだ。UEFA(欧州サッカー連盟)が2018年よりネーションズリーグをスタートさせたことによって一気に“内向化”したため、日本もここ数年、国際Aマッチデーにおいて欧州勢とほとんど対戦がない。2018年のロシアワールドカップ以降、親善試合では2021年6月11日のセルビア代表戦(ノエビアスタジアム神戸)のみ。それほど欧州勢との対戦は難しくなっている。そのため南米、北中米カリブ海、アフリカ、そしてアジアを中心に対戦相手を探さなければならなかった。

 

 ブラジルワールドカップで日本代表を率いたアルベルト・ザッケローニ監督に大会後、イタリアでインタビューした際、強い口調でこう語っていたのを思い出す。

 

「日本代表が次のステップに進むためには、フレンドリーマッチでイングランドやドイツ、イタリアといったチームとアウェーで次々に戦うことだ。そのことに尽きる」

 

 あれから9年近く経ち、まさにそれが現実になってきたのだ。

 

 ドイツのほうから声を掛けてもらい、アウェーの地で戦える。ドイツとすればワールドカップで負けているのだから、ハンジ・フリック監督を筆頭にリベンジへの思いは強いはず。テンションの高いゲームになることは想像がつく。最高の強化となれば当然、日本代表の力も引き上げられていくはずである。

 

 それもこれもカタールの地で日本がドイツ代表、スペイン代表という欧州列強の2チームを撃破したからこそ。2試合とも前半は希望を見出せないような一方的な展開となりながらも、後半に入って「いい守備からいい攻撃」を体現してアップセットを起こしたわけだ。もし試合内容が互角でも、ドイツが勝っていたら対戦候補のリストに挙がってこなかったかもしれない。たとえ引き分けであったとしても。ドイツとしてはやはり日本に負けたことが対戦実現に動いた最大の理由ではないかと感じる。

 

 ドイツ、スペインをワールドカップで倒した日本。その事実が、今後の日本のマッチメークに希望をもたせたということ。いずれスペインからも声が掛かるかもしれないし、ほかの欧州勢も続くかもしれない。そのためには9月のドイツ戦が大事になってくることは言うまでもない。内容でも上積みを示すとともに、結果にもこだわってもらいたい。いずれにしてもドイツとのリマッチが最高の強化となることは間違いない。


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