2日、男子プロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」の年間表彰式「B.LEAGUE AWARD SHOW2022-23」が都内で行われた。レギュラーシーズン最優秀選手賞(MVP)が発表され、横浜ビー・コルセアーズのPG河村勇輝が初受賞。河村はレギュラーシーズンベストファイブ、最優秀インプレッシブ選手賞(MIP)、新人賞も獲得した。ベストファイブは河村のほか、PG富樫勇樹、SG/SF原修太、SG/SFクリストファー・スミスの千葉ジェッツふなばし勢と、ペリン・ビュフォード(島根スサノオマジック)を選出。富樫は7季連続7度目、ほか4人は初受賞となった。

 

「すごく驚いています。僕より遥かに素晴らしい成績を残しておられる選手がいる中で、まさか僕が選ばれるとは思っていなかった。本当に驚いていますし、恐縮しています」

 河村は壇上でMVP受賞の気持ちを率直に述べた。リーグトップの1試合平均8.5アシスト、日本人トップの同19.5得点。チーム初のチャンピオンシップ(CS)進出&ベスト4に導いたことが評価され、B1の各選手・HC、メディアによる投票でリーグトップの496ポイントを集めた。アシスト王の個人タイトルに加え、この日受賞を発表された『ココロ、たぎる。』賞、MIP、新人賞、ベストファイブに続く6冠目を手にした。

 

 昨年は日本代表デビューも果たし、日本を代表するPGの1人だ。だが、驕り高ぶる様子は見られない。

「今でもこのMVPにふさわしいか不思議な気持ちでいます。きっとこの受賞は今シーズンの実力が一番ということではなく、“これから日本のバスケット界を盛り上げてほしい”とのメッセージだったり使命を僕に与えてくださったのではないかと、自分なりに解釈しています」

 

 河村が「僕より遥かに素晴らしい成績」というのは、おそらくビュフォードのことだろう。島根を2季連続CS出場に導いたオールラウンダーは、レギュラーシーズン得点王(1試合平均22.5得点)である。アシストは河村に次ぐ2位(同7.9アシスト)。リバウンド、スティール、ブロックでもトップ10入りした。トリプルダブルは今季10度も記録。CSでは3試合全てでトリプルダブルをマークした。月間MVPも3度受賞。しかしMVP選考はベストファイブ得票の最上位者に決まる。またベストファイブは外国籍選手は2枠という限りがあるため、票割れを起こしやすい点も起因したのかもしれない。

 

 表彰式後の囲み取材で、河村は改めて気持ちを語った。「この賞をもらったからといって、自分の現在地が上になったという気持ちはない」。MVP受賞は栄誉なことだが、それがゴールでもない。昨年東海大学を中退し、卒業を待たずしてプロ入りを決断。大学入学前から特別指定選手としてB.LEAGUEに出場していたが、今季がフルシーズン戦う初めての1年だった。

「結局、最後はケガでベストコンディションではない中で、試合に臨んでしまった。自分の責任だし、実力不足だなと感じると共に1シーズンを戦い抜く難しさを体感することができました」

 

 これだけの活躍を見せながら、「実力不足」と言うのだから自己評価は厳しい。ただチームとしては手応えを感じているようだ。

「ただチームメイトと共にやってきた1シーズンは誇りに思っていい。CSという大きな目標を掲げた中で、それを上回るベスト4にいけたことは、チームとして喜ばしいことかなと思います」

 

 この日、チームから契約継続を発表された。来季も司令塔として横浜BCを牽引する覚悟は変わらない。河村には個人賞よりも手にしたいものがある。

「自分もですが、誰もが納得するかたちでMVPを獲れるように(AWARDに)戻ってきたいと思う。ただ自分の中でMVPを目標としてバスケットをしているわけではありません。チームが日本一になって、その中でのひとつの評価としてMVPがついてくる。そこ(MVP)にはあまり固執していないですし、とにかくチームで日本一になりたいです」

 来季は一層厳しいマークにもさらされるだろう。それを乗り越えられるか。更なる進化が求められるシーズンとなりそうだ。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

 主な受賞者は次の通り。

 

【MVP】

河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ) 初

 

【レギュラーシーズンベストファイブ】

富樫勇樹(千葉ジェッツふなばし) 7季連続7度目

原修太(千葉ジェッツふなばし) 初

クリストファー・スミス(千葉ジェッツふなばし) 初

河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ) 初

ペリン・ビュフォード(島根スサノオマジック) 初

 

【ベストディフェンダー賞】

原修太(千葉ジェッツふなばし) 初

 

【ベスト6thマン賞】

クリストファー・スミス(千葉ジェッツふなばし) 2季連続2度目

 

【最優秀新人賞】

河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)

 

【最優秀HC賞】

桶谷大(琉球ゴールデンキングス) 初

 

【最優秀審判賞】

加藤誉樹 7季連続7度目

 

【得点王】

ペリン・ビュフォード(島根スサノオマジック) 22.5点 初

【アシスト王】

河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ) 8.5アシスト 初

【リバウンド王】

ジャック・クーリー(琉球ゴールデンキングス) 12.7リバウンド 2季ぶり3度目

【スティール王】

ジェレミー・ジョーンズ(ファイティングイーグルス名古屋) 2.2スティール 初

【ブロック王】

ジョーダン・ヒース(川崎ブレイブサンダース) 1.8ブロック 3季ぶり2度目

【ベスト3P成功率賞】

ニック・ケイ(島根スサノオマジック) 44.6% 初

【ベストフリースロー成功率賞】

平尾充庸(茨城ロボッツ) 89.1% 初

 

【ベストタフショット賞】

西田優大(シーホース三河) ※2023年2月12日の富山グラウジーズ戦(富山・黒部市総合スポーツセンター)

 

【MIP】

河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ) 初