『超(スーパー)RIZIN.2』(7月30日、さいたまスーパーアリーナ)の開催が発表されて以降、ファンの視線がこちらに向きがちだが、その前に一つ、見逃せない闘いが控えている。

 6月24日、北海道・真駒内セキスイハイムアイスアリーナで行われる『RIZIN.43』のメインカード、RIZINフェザー級タイトルマッチだ。王者クレベル・コイケ(ブラジル/ボンサイ柔術)に鈴木千裕(クロスポイント吉祥寺)が挑む。

 

「クレベルにとってはイージーファイト」

「鈴木千裕に挑戦する資格があるのか? クレベルとはレベルが違う」

 そんな声が多く聞かれる。

 また、朝倉未来(トライフォース赤坂)から「クレベルは中堅選手と遊んでいる」と言われてしまったカードだが、私は勝負論のある面白いマッチアップだと思っている。

 

(写真:KNOCK OUT-BLACKスーパーライト級のベルトを持ち、キックボクシング王者でもある鈴木千裕。“二刀流ファイター”を貫いている ⓒRIZIN FF)

 鈴木は現在、5連勝中でレコードは以下の通りだ。

○vs.山本空良(パワーオブドリーム)、判定3-0/『RIZIN TRIGGER 1st』2021年11月28日、神戸ワールド記念ホール

○vs.平本蓮(ルーファスポーツ/当時)、判定3-0/『RIZIN LANDMARK 2』2022年3月6日、都内シークレットスペース

○vs.萩原京平(SMOKER GYM)、リアネイキッドチョーク、2ラウンド2分14秒/『RIZIN.38』同年9月25日、さいたまスーパーアリーナ

○vs.今成正和(今成柔術)、判定3-0/『RIZIN LANDMARK 4』同年11月6日、愛知・ドルフィンズアリーナ

○vs.中原由貴(マッハ道場)、KO、1ラウンド4分44秒/『RIZIN.40』同年12月31日、さいたまスーパーアリーナ

 

 勢いに乗っている。

 ただ、鈴木はまだRIZINフェザー級のトップどころとは闘っていない。朝倉未来、斎藤裕(パラエストラ小岩)、牛久絢太郎(K-Clann)、ヴガール・ケラモフ(アゼルバイジャン)らとは対峙していないのだ。よって、これらの誰かに勝ってこそ王座挑戦権は得られるのではないかとの見方が根強くある。

 

 もっともだと感じる。

 それでも「面白いマッチアップ」と記したのは、朝倉、斎藤、牛久らよりもクレベルに勝てる可能性が高いからだ。

 

(写真:昨年10月、牛久絢太郎を破りRIZINフェザー級王者となったクレベル・コイケ。6・24『RIZIN.43』で初防衛戦に挑む ⓒRIZIN FF)

 グラウンドの展開に持ち込まれ寝技勝負となれば、RIZINファイターの誰もがクレベルには敵わないだろう。そんな王者を攻略するには、寝技に持ち込まれる前に勝負をしなければならない。となれば、殺傷能力の高い打撃の持ち主であることが条件となり、その点においては、総合力が高いファイターたちよりも鈴木は優れているのではないか。

 

 クレベルは打撃戦を厭わない。打ち合う中で相手の隙を見出し、グラウンドの展開に持ち込もうとする。その段階が、鈴木にとってのチャンスポイント。テイクダウンを恐れて腰を引くのではなく、「寝技に持ち込まれたら仕方がない」と腹を括って一撃を見舞いに行くのだ。ここで強打をクリーンヒットさせることができれば、下馬評を引っくり返せるかもしれない。

 

 もちろん、総合的にはクレベル優位。掛け率で言えば「8-2」、いや「9-1」だろう。だが、鈴木の打撃が当たれば……との期待もある。

『RIZIN』初の「北の大地」でのイベントで、アップセットは起きるのか――。

 

 

<直近の注目格闘技イベント>

▶6月11日(日)、東京・後楽園ホール/「KNOCK OUT 2023 vol.2」龍聖vs.チュームーシーフーほか

▶6月15(木)~18日(日)、東京体育館/「全日本レスリング選抜選手権大会」

▶6月16日(金)、東京・後楽園ホール/「Krush.150」ライト級タイトルマッチ、大沢文也vs. 里見柚己ほか

▶6月18日(日)、メルパルクホールOSAKA/「PROFESSIONAL SHOOTO 2023 Vol.4」田上こゆるvs.ザ・タイガー石井ほか

▶6月23日(金)、東京・後楽園ホール/「RISE 169」第2代ライトヘビー級王座決定トーナメント準決勝ほか

▶6月24日(土)、東京・大田区総合体育館/プロボクシングWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチ、ジョシュア・フランコ(米国)vs.井岡一翔(志成)ほか

▶6月24日(土)、フランス/パリ・ゼニスアリーナ「Impact in Paris」ISKA K-1ルール世界61キロ級タイトルマッチ、武尊vs.ベイリー・サグデンほか

▶6月25日(日)、東京・後楽園ホール/ 「SHOOT BOXING 2023 ACT.3」世界スーパーウェルター級王座決定戦、海人vs.サモ・ペティほか

 

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『伝説のオリンピックランナー“いだてん”金栗四三』『柔道の父、体育の父 嘉納治五郎』(いずれも汐文社)ほか多数。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


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