真夏の渋谷で、吉成名高(エイワスポーツジム)が快挙達成!

 7月9日、東京・Spotify O-EAST『BOM42』で名高は、王者ウェウワー・ウォークリンパトゥム(タイ)を3-0の判定で破り、ラジャダムナンスタジアム認定フライ級王座を奪取した。

 彼は、これまでにムエタイの2大殿堂ラジャダムナンとルンピニー両スタジアムのミニフライ級王座に就いたことがあり、今回の勝利で2階級制覇を果たしたことになる。

 

 試合展開は、予想通りの技術&心理戦。

 1ラウンドは互角の展開も、2ラウンド以降は激しい蹴撃戦を吉成が制す。

 ジャッジ3者の採点は50-47、49-46、49-48。文句なしの勝利だった。

 

 キックボクシングは、ムエタイをヒントに誕生した競技。昭和40、50年代のブーム期から「打倒ムエタイ」は日本キックボクシング界の悲願であった。

 日本人として初めてムエタイ王者になったのは藤原敏男(目白)。

 1978年3月8日、東京・後楽園ホールでモンサワン・ルークチェンマイ(タイ)に4ラウンドKO勝利を収め、ラジャダムナンスタジアム認定ライト級王座に就いた。

 以降、キックボクシング界が低迷期に入ったこともあり、日本人ムエタイ王者は長く生まれなかった。だが2000年以降には以下の日本人選手がムエタイの頂点に立っている。

 

小笠原仁(伊原)、ラジャダムナン・ジュニアミドル級<2000年12月3日獲得>

武田幸三(治政館)、ラジャダムナン・ウェルター級<2001年1月21日獲得>

石井宏樹(目黒藤本)、ラジャダムナン・スーパーライト級<2011年10月2日獲得>

T-98(クロスポイント吉祥寺)ラジャダムナン・スーパーウェルター級<2016年6月1日獲得>

梅野源治(PHOENIX)、ラジャダムナン・ライト級<2016年10月23日獲得>

吉成名高(エイワスポーツジム)、ラジャダムナン・ミニフライ級<2018年12月9日獲得>/ルンピニー同級<2019年4月14日獲得>/ラジャダムナン・フライ級<2023年7月9日獲得>

奥脇竜哉(エイワスポーツジム)、ラジャダムナン・ミニフライ級<2019年9月9日獲得>

石毛慎也(LAILAPS東京北星)、ラジャダムナン・ミドル級<2019年11月28日獲得>

 

「道をブラさずに闘っていきたい」

 

 この中で、タイ・バンコクに乗り込んで王座奪取を果たしたのは、小笠原、奥脇、石毛の3人のみ。そしてバンコクで王座防衛を続け長期政権を築いた日本人は、まだ一人もいない。

 

 試合後に吉成は言った。

「目指すは(ムエタイ)3階級制覇です」

 ハードルは高い。それでも現在の実力、今後の伸びしろを考えれば実現の可能性は十分にあろう。

 だが階級を上げる前に8月か9月、バンコクに乗り込んで王座防衛戦に挑む可能性が浮上している。日本でムエタイ王者になるよりも、バンコクで王座防衛を果たす方が、はるかに難しい。吉成がさらに高い山に挑み制する姿が見たい。

 

 また今年22歳になった彼は、こうも口にしている。

「目指す道をブラさずに闘っていきたい」

 単に人気を得るのではなく、ムエタイという過酷な競技で実力を証明したいのだ。

 志の高さを感じる。

 吉成は現在、22連勝中。通算成績は47勝(29KO)5敗1分け。

 

 

<直近の注目格闘技イベント>

▶7月17日(月・祝)、東京・両国国技館/「K-1 WORLD GP 2023」スーパーウェルター級タイトルマッチ、和島大海vs.ジョーダン・ピケオーほか

▶7月22(土)、東京・後楽園ホール/「Krush.151」スーパーバンタム級タイトルマッチ、璃明武vs.永坂吏羅ほか

▶7月23日(日)、大阪・世界館/「WARDOG.43」ウェルター級王座決定戦、倉岡寿美津vs. キム・ヨハンほか

▶7月23日(日)、東京・竹芝ニューピアホール/「DEEPvs.NARIAGARI」北岡悟vs.大木良太ほか

▶7月23日(日)、東京・後楽園ホール/「PROFESSIONAL SHOOTO 2023 Vol.5」ストロー級チャンピオンシップ、新井丈vs.安芸柊斗ほか

▶7月25日(火)、東京・有明アリーナ/プロボクシングWBC&WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ、スティーブン・フルトン(米国)vs.井上尚弥(大橋)ほか

▶7月30日(日)、さいたまスーパーアリーナ「超RIZIN.2」フェザー級王座決定戦、朝倉未来vs.ヴガール・ケラモフほか

▶7月30日(日)、東京・後楽園ホール/「RISE170」QUEENバンタム級王座決定トーナメント決勝戦、村上悠佳vs.聖愛ほか

 

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『伝説のオリンピックランナー“いだてん”金栗四三』『柔道の父、体育の父 嘉納治五郎』(いずれも汐文社)ほか多数。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


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