千葉ロッテによるアイランドリーグ球団買収構想は、四国のみならず、球界全体に波紋を広げている。実現には越えるべきハードルが多いが、この構想でアイランドリーグはどこへ向かおうとしているのか。舵をとる運営会社IBLJの鍵山誠社長(写真)を直撃した。

――今回の買収構想はロッテ・バレンタイン監督の発言がきっかけで明らかになりました。ただ、内容がまだ何も詰まっていない段階での公表はかなり唐突な印象も受けました。率直な今の感想を。
鍵山: 正直言うと、もう少しお互いに話を進めて、コンセンサスをとり、問題点をクリアにした上で公表したかったという気持ちです。ロッテだけでなく、NPBの全球団にもさまざまなご提案をしていた最中でしたから。ただ、公になったことでNPBも我々もメリット、デメリットを含め、検討しようという雰囲気が生まれてきています。いずれは明らかになることですし、問題提起として、早い時期に話が出たことはよかったのではないか。そう前向きに捉えています。

 NPBとのパイプを太くしたい

――リーグ側からNPBの各球団にさまざまな働きかけを行っているということですが、その目的は?
鍵山: 1つは「アイランドリーグのあり方を改善したい」ということです。リーグは今年で3年目になりますが、経営的には合格点とはいえない状況です。各球団とも地域密着で頑張っているところですが、四国のみならず、外との連携に向けてアクションを起こす段階にきています。
 もう1つ、このリーグの目的である選手の育成を考えると、NPBとのパイプを太くすることが大切です。選手たちはこのリーグが最終目的ではありません。全員、NPBや上のレベルを目指そうと努力しています。
 この2つを踏まえた上で、NPBの各球団にこちらから提携のご提案をしようということになりました。

――具体的にはどのような提案を?
鍵山: まずは「選手のリーグ派遣」。2軍で出場機会の少ない選手はリーグに来てもらって、戦力の底上げに活用してほしいと思っています。もちろん、これはリーグに在籍する選手にとっても刺激になります。
 次に「オープン戦の請負」。7月にはNPB2軍と7試合、交流試合を組みました。興行面でも選手のアピールの面でも、NPBとの試合は大きな目玉です。交流試合を増やすことに加え、春先のオープン戦で、ぜひリーグとの試合を組んでほしいとお願いをしています。
 最後が「資本提携」。リーグスポンサーなどの形で出資をしていただけないかという話です。本来なら12球団合同で独立リーグを支援する仕組みができればありがたいのですが実現は難しいでしょう。ならば1球団でも2球団でも援助していただけるところを探そうと考えました。我々の提案にロッテが手を挙げてくれたことは本当にありがたく思っています。

 買収先は高知!?

――実際、ロッテとはどのような話が進んでいるのですか。報道では高知球団の保有が有力のようですが……。
鍵山: まだ具体的には何も話は進んでいません。交渉はこれからです。球団の保有に関してもロッテさんが100%保有を希望しているのか、地元企業との合弁を考えているのか分かりません。ロッテ以外のNPB球団が手を挙げる可能性もあります。高知と決まったわけではありません。

――ただ、現実的に考えれば買い手がみつかっていない高知が有力になりますよね。
鍵山: 経営面だけをみればそうなるかもしれません。ただ、各球団から意見もあるでしょう。この点はリーグ内でも調整が必要です。

――バレンタイン監督からは「20名ほどの育成選手を送り込む」との発言がありました。大量に選手がやってくると現在、所属する選手の処遇はどうなるのか。心配する声もあります。
鍵山: 正式に人数のご提案をいただいていないので、これは仮定の話として聞いてください。もし1チームできるくらいの人数がやってくるのであれば、球団をエクスパンションしてもいいと思っています。人口比から考えれば、愛媛と徳島は倍近く違います(愛媛145万人、徳島81万人)。たとえば東予に新球団をつくってもいい。
 さらにいえば、我々は将来的には四国外にもマーケットを広げていきたいという希望があります。まだ具体化はしていませんが、3月には九州独立リーグ準備室との業務提携を結びました。九州や中国の企業がロッテと組むなら出資したいと名乗り出るのであれば、四国外にチームを作る手もありだと考えています。

 球団間の格差は生じないのか

――リーグ全体の支援ではなく、1球団を保有するとなると球団間に格差が生じませんか?
鍵山: それはリーグとして、どうバランスをとるかという話でしょう。現時点でもリーグの選手はNPBのファームと対等に戦える実力をつけています。ロッテが保有するといっても1軍の選手がくるわけではありません。育成選手が中心のチームであれば、戦力差はないと思っています。むしろ、ロッテのチームを標的に他球団が戦えば、リーグ全体が盛り上がるのではないでしょうか。

――ただ、育成選手はあくまでも所属はNPB。リーグの選手とは待遇が異なってくると思われます。
鍵山: 報酬面では契約が違いますから差が出てくるでしょう。ただ、今年からリーグではサラリーキャップ制を導入しました。球団での年俸総額の上限は決めてあります。ロッテが球団を保有しても、リーグに参加する以上、条件は変わりません。極端な差は生じないと思います。
 
――NPBの球団は全国にスカウト網があります。トライアウトに頼らなくてはいけない他球団と比べれば、結果的にいい選手が集まってしまうのではないでしょうか。
鍵山: そこは配分の仕方次第です。実はオーストラリアや韓国の選手から、うちのリーグでやってみたいという話がきています。ロッテが育成選手を使って保有球団を補強する代わり、外国人選手や元NPB選手は他球団に優先的に配分する。こういったシステムをつくればいいことです。 
 
――もうひとつ懸念されるのは環境面の格差。同じレベルの選手をあつめてもNPB並みの練習環境を整えて指導すれば、どうしても伸びが違ってきますよね。
鍵山: 環境面の格差は、現時点でも存在します。たとえば愛媛には坊っちゃんスタジアムがあれば室内練習場もある。一方で徳島などは当初、河川敷で練習していました。選手や野球の発展を考えれば、NPBの球団が地方にインフラを整備し、指導してくれることは、むしろ歓迎すべきでしょう。

(後編につづく)

鍵山誠(かぎやま・まこと)プロフィール>:株式会社IBLJ代表取締役社長
 1967年6月8日、大分県出身。徳島・池田高、九州産業大卒。インターネットカフェ「ファンキータイム」を手がける株式会社S.R.D.(徳島県三好市)代表取締役。アイランドリーグ関係では05年5月、徳島インディゴソックスGMに就任。同年9月からIBLJ専務取締役を経て、07年3月より石毛宏典コミッショナーの社長退任に伴って現職に。高知ファイティングドッグスの球団代表も兼務する。

(聞き手:石田洋之)

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