国士舘大女子、目指すは日本一、全員がキーマン ~全日本学生柔道優勝大会~

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 大学団体日本一を決める「全日本学生柔道優勝大会」(全日本学生優勝大会)が6月24日からの2日間、東京・日本武道館で開催される。女子一部(5人制)の国士舘大学は、第2回大会以来、30年ぶり3度目の優勝を目指す。同大の山口葵良梨主将と山内直人監督に、大会への意気込みを聞いた。

 

――5月下旬の東京学生柔道優勝大会は東海大学に決勝で敗れ、大会連覇はなりませんでした。

山口葵良梨: 初戦(2回戦)から厳しい戦いでした。団体戦ではそれぞれポイントを取りにいく選手、引き分け以上を目指す選手と役割があるのですが、それぞれがうまく機能せず決勝で敗れてしまいました。(監督の)山内先生にも言われましたが、ここで勝っていたら自分たちは天狗になっていたかもしれない、と。この悔しさを忘れず、全日本学生優勝大会で東海大にリベンジしたいです。

 

――初戦から決勝までの3試合すべてで山口選手は中堅を任されました。

山口: 自分は主将でもありますし、絶対に一本を取らなければいけない立場だと思っています。東京学生優勝大会では初戦と決勝で引き分けてしまった。特に決勝で相手を指導2つに(3つで反則負け)まで追い込みながら、ポイントを取り切れなかったことは、反省点です。

 

――今年の春から山内監督が就任し、数カ月が経ちました。

山口: これまでは先生方から課される稽古を一生懸命やるという感じだったのですが、今は自分たちの意見も取り入れてもらっています。それは先生が自主性を求めているからです。その点は大きく変わったと思います。私が入学して以降はコロナ下ということもあり、全体的な稽古量がなかなか積めませんでした。朝練も自主的にやっていた程度です。現在は週3回の朝練に加え、ウエイトトレーニングとチームで行うようになりました。稽古量も増えましたが、強くなるためには必要なことだと感じています。

 

――過去の記事などを拝見すると、山内監督には熱血漢のイメージがありますが、実際はどうですか?

山口: 稽古はすごく厳しいのですが、稽古以外の場面ではすごく私たちを気遣ってくれます。稽古の時は自分たちに勝って欲しいから厳しいことも言われますが、畳を降りればすごく優しい先生です。

 

「全試合で一本を取る」

 

――今年度から主将を任されています。

山口: 自分は高校の時も主将を経験しましたが、大学は高校以上にみんながいろいろなモチベーションで戦っている。個人で日本一になりたい、世界大会に出場したいという人がいれば、在学中に1度全国大会に出られればいいと考えている人もいる。柔道を続けている理由は様々。それでもチームとしては日本一という目標に向かってひとつにならなければいけません。みんなを同じ方向に向かわせることは大変ですが、この経験は自分が社会に出た時にも生きるものだと思っています。

 

――どんなリーダーシップを見せていきたい?

山口: 自分はどちらかと言えば“背中”で見せていきたいタイプ。ただ稽古前の声掛けは積極的にするようにしています。

 

――チームメイトに喝を入れることは?

山口: 自分はあまり怒ったりしないですね。その役目はどちらかというと山内先生が担ってくれています。自分から「元気出していこう!」と声を掛け、選手たちをポジティブな気持ちに持っていこうと心掛けています。

 

――今年のチームの魅力は?

山口: 学年関係なく仲が良いことです。団体メンバーも学年はバラバラですが、全員仲が良い。お互い励まし合い、高め合うことができていると思います。

 

――それでは今大会への意気込みを。

山口: 今年は力のあるメンバーが揃っていて、100%の力を出し切れば、絶対日本一になれると思っています。ここで優勝を逃したら、もうこの先は優勝できないとの覚悟でいます。自分の役割は、あくまでもポイントゲッター。全試合一本を取るという気持ちで臨みます。

 

 学生とともに戦える幸せ

 

 今春から女子部監督に就任した山内監督は、男子部の助監督、監督として鈴木桂治、石井慧らオリンピック金メダリストを指導してきた。その熱心な指導法は、柔道場を多摩キャンパスから町田キャンパスに移しても変わらない。「ここ集中!」「練習は嘘つかないぞ!」と檄を飛ばす。

 

――女子部の指導は初めてということで、これまでとの違いは?

山内直人: 正直、どうしたらいいのかわからない。それぐらい手探りのスタートでしたね。選手やコーチとコミュニケーションを取りながら試行錯誤やっている感じです。

 

――手探りの中、徐々に自分のカラーを押し出していったと?

山内: そうですね。いきなり最初から自分のカラーを押し付けるのはダメだなと思っていたので、徐々に変えていきました。厳しい稽古をした次の日は、強度を落としたりメリハリを付けるようにしています。

 

――これまでと比べ、稽古量も増やしたそうですね。

山内: はい。選手たちはきついと感じていると思いますが、よくついてきてくれている。やはり強くなるためには稽古をするしかない。そのためには質も量も大事。選手たちには「オレのことを一生嫌ってもいい。だから厳しい稽古にもついてきて欲しい」と伝えています。

 

――監督としてのプレッシャーは男子部時代と異なりますか?

山内: いや、どちらも一緒ですよ。何のために女子部の監督になったのかというと、チームを勝たせるためですから。それは男子だろうが女子だろうが変わらない。選手たちを“勝たせたい”との思いは、他の大学の先生方もきっと同じはず。男子部の監督を務めていた時は、プレッシャーがきつく、怖いし、逃げたくもなった。私は一度現場を離れたことで、学生とともに戦う環境にいられることは幸せだったんだな、と思えるようになってきましたね。

 

 打倒・全大学

 

――東京学生優勝大会は全日本学生優勝大会の予選を兼ねています。全日本に向けた通過点という位置付けでしょうか?

山内: 私としては、どの大会も優勝を目指しています。全部の試合が大事なんです。初めて試合に出る選手もいますから。選手はある試合をきっかけに大きく成長する。大会での1試合は稽古以上では得られない経験値が得られますし、実戦で手にした自信は選手にとって相当なプラスになるはずです。課題が見つかれば、それを克服するためにはどうすればいいかを話し合い、稽古につなげられる。どの大会、どの試合も大事にしていこうという考えは昔から変わりませんね。

 

――準優勝という結果に対する手応えは、いかがでしょうか?

山内: 手応えはありませんが、私は大会直後、選手たちにこう言いました。「キミたちと団体戦を一緒に戦って、感謝の気持ちでいっぱいだ。この緊張感、この場を与えてくれて感謝しかない」。加えてこうも。「今日負けてオレは良かったと思う。なぜなら勝ったら調子に乗っていた。“たったこれだけの稽古で勝てるんだ”と。そんなに甘いもんじゃない。だから落ち込むことはない。ひとりひとりが高い意識を持って次の試合に臨もうよ」と。

 

――主将を務める山口選手についてはどう評価していますか?

山内: 私としては、あまり言うことがありません。それだけ彼女は主将として、よくやってくれていると思います。格好が良い選手というか、皆がついていきたくなるタイプでしょうね。

 

――監督から見て、今年のチームの武器は?

山内: チームワークですね。ただ仲が良いというだけでなく、勝つためにまとまることができていると感じます。チームを引っ張っている山口の存在も大きいと思いますよ。

 

――今大会に向け、チームのキーマンは?

山内: 全員がキーマンです。女子の団体戦(一部)は5人で戦いますので、7人で戦う男子以上にひとつの負けが大きい。ただ団体戦は、選手個人の実力だけを見れば8対2くらいの差があったとしても徹底した戦術と強い気持ちあれば、引き分け、もしくは勝つ可能性だってある。ひとつの引き分けや勝ちで、試合の流れが大きく変わったことを、私も男子の監督時代、何度も経験してきました。だから選手たちにも「オマエたちの踏ん張り次第で、試合はどうにでも転がるぞ」と話しています。

 

――改めて、大会への意気込みを。

山内: もちろん目標は優勝しかない。ただし監督が代わったばかりの新しいチームですから、1試合1試合が大切だと思います。ひとつひとつ勝ち上がり、その先に優勝があるのかなと思っています。打倒・他の大学全部です。対戦する全チームがライバルだと考えています。

 

山口葵良梨(やまぐち・きらり)プロフィール>

2001年8月11日、福岡県生まれ。国士舘大4年。63kg級。5歳で柔道を始める。大牟田中学、大牟田高校を経て、2020年に国士舘大に進学した。大牟田高校では全国高校選手権大会女子63kg級で、1年時から2年連続3位入賞。3年時には全国高校総合体育大会(インターハイ)とエクサンプロヴァンスジュニア国際大会を制した。国士舘大2年時には全日本ジュニア選手権大会、ヨーロッパオープンで優勝した。3年時の講道館杯、4年時の全日本体重別選手権で3位入賞を果たした。身長165cm。得意技は内股。

 

 

山内直人(やまうち・なおと)プロフィール>

1964年6月9日、宮崎県生まれ。小学4年で柔道を始める。国士舘高校、国士舘大学を経て、87年に旭化成に入社。31歳まで現役を続けた。96年に国士舘大学助監督に就き、2000年から国士舘大学男子柔道部監督に就任。監督在任12年間で全日本学生柔道優勝大会5回、全日本学生柔道体重別団体優勝大会2回の優勝に導いた。2012年に同部の副部長、コーチを経て、23年4月、同大女子部の監督に就いた。

 

BS11では「全日本学生柔道優勝大会」の模様を6月25日(日)19時から放送します。女子は今回取り上げた国士舘大の他にも、4連覇を狙う東海大にも注目が集まります。男子は7連覇のかかる東海大に、斉藤立選手(4年)擁する国士舘大らが挑む構図。女子の解説は04年アテネ、08年北京オリンピック63kg級金メダリストの谷本歩実さん、男子は2016年リオデジャネイロオリンピック100kg級銅メダリストの羽賀龍之介選手が担当します。放送をお楽しみに! またBS11公式YouTubeにて昨年度大会決勝の代表戦「東海大 村尾三四郎 vs 国士舘大 斉藤立」を配信中です。名勝負を、大会前にお楽しみください。

 

(取材・構成/杉浦泰介)

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