小兵ながら気風のいい相撲でファンを魅了した豊ノ島さん。相撲技術のみならず、話術にも長け、タレントとしても好評を博す。弊社HP編集長・二宮清純と5月場所を総括しつつ、自身の相撲人生を振り返る。

 

※現役力士の番付は2023年5月場所時点

 

二宮清純: お久しぶりです。まずは5月場所についてお聞きしたいと思います。4場所連続休場(3場所連続全休)明けの横綱・照ノ富士が優勝しましたが、これは完全復活と考えていいのでしょうか。

豊ノ島: 初日、正代(小結)が押し込んでいたので、この場所は難しいかなと思ったのですが、徐々に調子を上げていきました。だいぶ本調子に戻ってきたと思います。

 

二宮: ひざの具合はどうなのでしょう?

豊ノ島: そんなに良くないと思いますが、相手を正面に置いて取る相撲が多かったので、ひざへの負担も少なかったのだと思います。

 

二宮: 関脇・霧馬山(場所後、霧島に改名)は11勝を挙げ、来場所の大関昇進が決まりました。

豊ノ島: 彼は、時津風一門では若い時から期待されていて、むしろもっと早く昇進していてもおかしくありませんでした。筋トレをみっちりやって、この1年くらいで体も大きくなり、力強さも増しました。

 

二宮: 豊昇龍(関脇)は11勝を挙げました。朝青龍の甥として注目されていますが、彼もいずれ大関になるでしょうね。

豊ノ島: ポテンシャルは高いのですが、少し相撲が荒いように思います。翠富士(前頭筆頭)や翔猿(前頭3枚目)などの相撲巧者に中に入られた時に、どうしても慌ててしまう。そうした相手をうまくさばけるようになれば大関も見えてくると思います。

 

二宮: それにしても大栄翔(関脇)の爆発力はすごいですね。

豊ノ島: 気持ちのいい相撲で、私は好きですね。立ち合いから踏み込み、一気に手を伸ばす迷いのない突き押しが強みです。

 

二宮: 一方で、大関・貴景勝はかろうじて勝ち越したものの、伸び悩んでいるようです。横綱を狙うのであれば、四つ相撲もやらなければいけないという意見もありますが……。

豊ノ島: ずっと突き押しで勝負してきたわけで、今から四つ相撲を鍛えるのは難しいでしょう。突き押しで大関まできたということは、それだけの爆発力や突き落とす時のタイミングの良さなどがあるからだと思います。あの爆発力がうまくハマッた時は強いのですが、ハマらない時にどうするか。そのあたりが課題ですね。

 

二宮: 若元春(関脇)と若隆景(小結)の兄弟力士はどうですか。

豊ノ島: 私がアキレス腱を断裂して幕下まで落ちた時に、この兄弟とよく対戦しました。若元春は当時から強くて、「どうしてこんなところ(幕下)にいるんだろう」と思っていましたが、やはりどんどん番付を上げてきました。若隆景はバチッとおっつける形が崩れない、しっかりした芯のある力士です。ただ、体が小さいので、相手の正面で押すのではなく、もう少しずる賢い相撲を取ったほうがいい気がします。

 

二宮: 大横綱・大鵬の孫である王鵬(前頭16枚目)はもう少し上で勝負できると思いますが、なかなか上がってきません。何が足りないのでしょう?

豊ノ島: 左右の動きですかね。足の運びがもう少しうまくできればいいなと思います。でも、今場所は11勝したので、次の場所が大事ですね。しっかり勝ち越せれば、波に乗っていけるかもしれません。

 

二宮: 話題の力士・落合(十両8枚目。場所後、伯桜鵬に改名)は優勝決定戦で敗れましたが、14勝を挙げました。今後、一気に上がっていきそうな気がします。

豊ノ島: 十両で14勝するというのは力がないとできません。19歳とは思えないほど仕上がった体ですが、これからもっと体力もついていくと思うので楽しみです。

 

二宮: 他に豊ノ島さんが期待している力士は?

豊ノ島: 私が注目しているのは幕下の大の里です。今場所デビューした大卒の力士ですが、すでに幕内の中堅くらいの力があると思います。体格もいいし、順調に伸びれば面白い存在になるでしょう。

 

(詳しいインタビューは7月1日発売の『第三文明』2023年8月号をぜひご覧ください)

 

豊ノ島(とよのしま)プロフィール>

本名・梶原大樹。1983年6月26日、高知県宿毛市出身。小学1年から相撲を始める。中学3年時に全国都道府県中学相撲大会で個人・団体優勝を果たす。宿毛高校3年時の2002年1月、時津風部屋に入門して初土俵を踏む。04年5月場所で新十両に昇進。同年9月場所で新入幕を果たす。07年5月場所で新三役(小結)、08年9月場所で関脇に昇進。16年7月場所前の稽古で左足アキレス腱断裂のケガを負うものの、同年11月場所で復帰。その後、ケガの影響もあって一時幕下に陥落するが、19年3月場所で幕内に復帰した。20年3月場所後に現役を引退。23年1月に日本相撲協会を退職し、現在はタレントとして活躍中。通算成績は109場所で703勝641敗68休。殊勲賞3回、敢闘賞3回、技能賞4回。最高位は関脇。身長168cm、体重154.5kg。


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