スワローズが本拠とする神宮球場の右翼席中段に、<56th HOME RUN>と刻まれたモニュメントが設置された。

 

 

<この原稿は2023年7月10日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 言うまでもなく昨季、日本人登録選手最多の56本塁打を記録したスワローズ村上宗隆の功績を称えたものだ。設置場所は56号の落下地点が選ばれた。

 

 昨季の村上の成績は神がかっていた。56本塁打に加え、打率3割1分8厘、134打点で史上最年少の三冠王にも輝いた。

 

 しかし、今季は序盤から不振続きで、打率は規定打席到達者の中では、下から6番目の2割3分4厘。本塁打も12本で、トップを走る巨人・岡本和真に6本もの差をつけられている。打点40はリーグ8タイだ。

 

 かつて若い選手が「スランプ」という言葉を口にすると鉄人の異名をとった衣笠祥雄は「100年早い」と怒っていた。

 

「単に下手くそなだけ。スランプという言葉を口にできるのは、毎年のように3割を打ったり、何かタイトルを獲ったことのある選手だけですよ」

 

 その伝で言えば、村上には「スランプ」という言葉を口にする資格がある。

 

 強打者の場合、困ったことにバットが湿ると、守備にも悪影響が及ぶ。10失策はリーグワーストだ。高校時代は捕手だったこともあり、元々、内野守備には危なっかしいところがあった。21年、22年も失策数は三塁手のリーグワーストだった。

 

 名手として鳴らし、若手時代の村上をコーチとして指導した宮本慎也は「守備位置の深さが気になる」と指摘していた。ボールを後ろで捕ると、イレギュラーのリスクが高まり、送球にも影響する――。実際、そうしたケースをよく目にする。

 

 実は通算868本塁打の王貞治も、打撃不振に陥ると、下を向きがちになり、打撃のことばかり考えていたという。勢い、失策も増える。そういう時は内野の土井正三や黒江透修が「顔を上げて」「頭を切り替えて」と声をかけ、守りに神経を集中させたというのだ。村上にも、こうした声かけが必要かもしれない。(記録は全て7月2日現在)

 


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