25日、ボクシングのダブル世界戦が東京・有明アリーナで行われた。WBC&WBOスーパーバンタム級タイトルマッチは挑戦者の井上尚弥(大橋)が2団体統一王者のスティーブン・フルトン(アメリカ)に8ラウンド1分14秒TKO勝ちを収め、同級“デビュー戦”で王座を獲得した。ライトフライ級、スーパーフライ級、バンタム級に続く4階級制覇を達成した。WBO世界フェザー級タイトルマッチは挑戦者の清水聡(大橋)が王者のロベイシ・ラミレス(キューバ)に5ラウンド1分8秒TKO負け。オリンピックメダリスト対決で敗れ、王座獲得はならなかった。

 

 階級を上げても、相手が無敗王者でも井上は“モンスター”だった。

 

 セミファイナルのラミレスvs.清水戦が終わってから50分以上も空いたが、有明アリーナに詰め掛けた観客は主役の登場を辛抱強く待った。

 

 5年2カ月ぶりに挑戦者として上がるリング。それを意識してか黒を基調としたガウン、トランクス、シューズに青色が入っていた。井上は大橋秀行会長、父・真吾トレーナー、弟・拓真らを引き連れてゆっくりと花道から歩を進めた。

 

 対戦相手のフルトンは22勝8KOと派手な戦績ではいが、スピードとテクニックを駆使して戦う試合巧者。身長で4cm、リーチでは8cm、フルトンが井上を上回るが、「スーパーバンタム級の壁は感じなかった」と井上は、ゴングが鳴ると主導権を握った。

 

 試合後、井上は「距離感」をポイントに挙げた。

「戦う前からどちらの距離で戦うか陣営と話をしていた。身長、リーチではフルトンが有利。その中で自分が距離感、ペースを掴むトレーニングをしていたのでポイントはそこ」

 さらに「フルトンが(前に)出なこなきゃいけない展開をつくりたかった」と序盤から相手にペースを掴ませる余裕を与えなかった。左のボディに突き刺すようなジャブを軸に試合をリードした。

 

 勝負の決着は8ラウンドに訪れた。井上は左ボディジャブからの右ストレートでフルトンをフラつかせせる。飛び込むようにして左フックを当て、ダウンを奪った。なんとか立ち上がったフルトンだがダメージは明らか。勝敗はほぼ決した。再開後、コーナーポスト際で猛ラッシュ。無敗の王者はポストにもたれかかるように沈むと、レフェリーが試合を止めた。

 

「自分が思うスーパーバンタム級最強のフルトンを8ラウンドで倒すことができたので、このスーパーバンタム級、最強と言えるんじゃないかなと思います。ただ僕が今持っているベルトは2本です。今日、この会場にタパレスが見に来ているということで。スーパーバンタム級で次戦、4団体統一戦をしたいと思います」

 井上はリング上で4団体統一戦をアピール。WBA&WBC世界2団体統一王者のマーロン・タパレス(フィリピン)がリングに上がり、「自分が王者だと証明したい」と答えると、井上は「今年中にベルトを賭けて戦いましょう」と締めた。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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