ボクシングWBA世界スーパーフライ級タイトルマッチが23日、東京・大田区総合体育館で行われた。井岡一翔(志成)が、前日計量の体重超過により王座を剝奪されたジョシュア・フランコ(アメリカ)を判定で下した。井岡はWBA王座を獲得。昨年大晦日のダイレクトリマッチを制した。

 

「自分が自分に対して後ろめたいことを1ミリもしていない。だから動じない。どう過ごしているかを自分が一番分かっている。応援してくれる人を裏切ったことはない」

 試合後、改めて自身の“潔白”を訴えた井岡。リングに上がる前からゴタゴタが続いた。21日、昨年末の試合のドーピング検査で、井岡から大麻成分が検出されたと日本ボクシングコミッション(JBC)が発表。JBCは世界ドーピング防止機構(WADA)の基準以下の量だったため違反はなしと決めた。また試合前日の23日にはフランコが体重超過で王座を剥奪。半年前は王者としてリングで向かい合った両者は、前王者としてリングに上がることとなった。

 

<覚悟のリマッチ>

 そう銘打たれた一戦は、井岡が自身の“覚悟”を示した。昨年末に行われたWBA・WBO世界スーパーフライ級王座統一戦はドロー。WBA王者フランコ、WBO王者・井岡はそれぞれ防衛と、白黒付かなかった。井岡はこのリマッチを実現するため、WBOの王座を返上までした。前日にはフランコがリミット(52.16kg)を2.9kg(1回目は3.1kg)オーバーする異例の体重超過で王座を剥奪された。それでも試合を成立させるため、当日計量58.9kgという条件を受け入れた。

 

 井岡は左ジャブ、左ボディを軸にフランコを仕留めにかかる。「そこ(相手の体重超過)を意識して戦っていない。逆に考えたくもなかった。言い訳をして戦いたくなかった。自分との勝負にだけ集中した」と井岡。だがタフなフランコも手数で応酬。前回ほどの圧力は感じさせなかったものの、意地を見せた。フランコは5ラウンドに右まぶた付近をカット。今回もフルラウンドまで闘い抜いた血染めの決戦の結果は3-0のユナニマスディシジョンで井岡が勝利した。「これからも挑戦し続ける」。リング上でファンに誓った井岡は改めてWBC王者ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)戦を希望した。

 

 試合後、フランコは「井岡の方が強かった」と多くを語ろうとしなかったが、体重を調整できなかったことは残念で仕方がない。「個人的な理由」(フランコ)で体重調整が間に合わず、試合中止を考えたとも言う。井岡はリング上で「前回同様強かった。ハートも強く、グレートなチャンピオンでした」とリスペクトを示したものの、昨年の大晦日に好ファイトを見せていただけにフランコは自らのキャリアに泥を塗った感が否めない。

 

(文・写真/杉浦泰介)