あっという間に7月がもう終わります。僕が支配人を務める鹿島ハイツは少しずつですがコロナ禍以前の活気が戻りつつあります。子どもたちは夏休みということもあり、うちの施設で合宿をはるサッカークラブがあります。客足はコロナ禍前の6割くらいは戻ってきたでしょうか。ピッチ上には爽やかな汗の香りが少しずつ戻ってきました。なんだか、懐かしささえ感じます。

 

 女子サッカー発展のため

 

 現在、合宿を行っているのは3、4年生の少年団チームです。なんと、男子チームに3年生、4年生の女子が1名ずつ参加しています。初めての合宿らしく勝手がわからないのか姉妹のように行動をともにしています。僕は心の中で「頑張れ」とエールを送っています。

 

 これまで、高校生、大学生くらいの男子たちは鹿島ハイツに合宿に来ると「小学生の時も鹿島ハイツに来たことがあるんです」と僕に伝えてくれる学生がチラホラいました。個の時は“おじいちゃんになった気持ちだなぁ”と嬉しくなります(笑)。今回の女子たちは、今後もサッカーを好きで居続けてくれて、年齢を重ねても競技を続けて、いつか鹿島ハイツに戻ってきてくれるといいな、と思います。

 

 今後も彼女たちがプレーを続けるためには小学生が中学に上がった時にも、プレーできる環境がないと話になりません。そのためには、なでしこジャパンのW杯での躍進はかかせないでしょう。特に今回のオーストラリア・ニュージーランド大会はWEリーグが開幕してから1回目のW杯です。観客動員数が寂しいと暗いニュースを目にしますから、なでしこジャパンが勝ち進んで女子サッカー界に光を照らしてほしい。間接的かもしれませんが、なでしこの結果が女子サッカー人口の裾野を広げ、部活動発足、子どもたちを対象にしたクラブチーム発足に繋がっていくのではないでしょうか。

 

 助け合いの精神をピッチで表現

 

 さて、グループリーグまでのなでしこの戦いも少し触れましょう。初戦・ザンビア戦、第2節・コスタリカ戦に勝利し、最終節・スペイン戦を残しグループリーグ突破を決めたのはさすがです。なでしこらしい統制のとれた戦いを披露しています。味方を重んじ、尊重し、そして補い合う。これらが体現できています。「ミスはしょうがない。それをどうカバーし合うか」という気持ち溢れるプレーが見られます。ボールホルダーに対して、サポートに入る位置、タイミング、角度も素晴らしい。助け合いの精神があるがゆえのサポートな気がしてなりませんね。

 

 グループリーグでは、サイド突破とカウンターが綺麗に機能しました。ノックアウトステージに進むと、これほど綺麗に狙いがハマる相手ばかりではないはず。少々、強引でもシュートに持って行くかたちやミドルシュートに持って行くかたちも大事になってくるでしょう。

 

 女子サッカーの未来のためにも、なでしこたちには頑張ってほしい。僕も“未来のなでしこ”が合宿をできるように、鹿島ハイツを守り続けます。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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