今年11月から始まるワールドカップ2026アジア2次予選の組み合わせが決定した。アジアでFIFAランクトップ(20位)の日本代表は、シリア代表(94位)、北朝鮮代表(115位)、アジア1次予選ミャンマー代表(160位)対マカオ代表(182位)の勝者(10月に決定)と同組に入った。

 

 北中米3カ国開催となる次回ワールドカップから出場枠が「36」から「48」に拡大し、アジア枠も「4.5」から「8.5」に増える。そのため予選方式も変更され、今回の2次予選は各組上位2チーム(計18チーム)が最終予選に駒を進めることができる。前回は各組5チームが入って1位と成績上位の2位4チームが突破できるレギュレーションだっただけに、単純に比較すれば今回のほうが楽にはなる。日本が3位以下になること現実的に考えにくい。

 

 とはいえ、楽観的に捉えないほうがいいだろう。前回はキルギス、タジキスタン、ミャンマー、モンゴルと同居し、8試合全勝し、46得点、2失点とぶっち切りのトップ通過ではあった。しかし今回はシリアと北朝鮮が入っており、簡単な試合になるとは思えない。

 

 アルベルト・ザッケローニ監督体制でブラジルワールドカップ出場を目指したアジア3次予選でもシリア、北朝鮮と一緒のグループになった。しかしこのときのシリアは出場資格のない選手を2次予選で起用したために失格処分となり、タジキスタンと入れ替わった経緯がある。日本はシリアに対して過去9勝2分けと相性はいい。ただ筆者もカタールで現地取材した2011年のアジアカップではグループリーグで対戦し、規律ある組織的な守備の前に苦しめられた(結果は2-1勝利)。2017年6月の親善試合では1-1引き分け。大勝した試合はあるものの、実力差はあっても食らいついてくる印象がある。情報も少なく、不気味な感じが漂う。かつシリア国内は内戦が続いているため、中立地開催の可能性も出ている。

 

 そしてこのグループで最も油断ならない相手となりそうなのが北朝鮮である。ザックジャパンの3次予選では2011年9月にホームで1―0と勝利したものの、1989年以来22年ぶりに実現したアウェーマッチ(同年11月)は既に日本が最終予選進出を決めていたとはいえ、0-1で敗れている。大観衆の声援を背に闘争心むき出しで戦ってくる相手に対して優位に試合を運べず、ザッケローニ体制になって初の黒星を喫した。

 

 過去の対戦成績は8勝4分け7敗。現在どのようなチームになっているか、情報も入ってこないだけに予想がつきにくい。

 

 日本にとっては国交がなく政治的な緊張関係も続いているばかりでなく、北朝鮮は前回のカタールワールドカップ予選ではコロナ禍の対応として2次予選を途中棄権している。今回どのように臨むのかが不透明なままだ。ホーム&アウェーできちんと試合を開催できるかどうかが、2次予選最大の関心事と言えるだろう。

 

 2011年、北朝鮮に入国する際には約4時間足止めされるなどの対応面での問題について日本サッカー協会がFIFA、AFC、北朝鮮サッカー協会に意見書を送付したという。そういったことも今回クリアされていく必要がある。

 

 森保一監督は日本協会を通じてこうコメントを出している。

「いよいよ2026年のワールドカップにむけた予選が始まります。今回の組み合わせをみても、我々にとっては決して楽な道は一つもないということをあらためて思いました。選手にとってはシーズン中の長距離移動による疲労蓄積、すり合わせの時間も十分にないタイトなスケジュール、強いモチベーションをもった対戦相手、これらすべてに打ち勝つ強いメンタリティと選手、スタッフ一丸となってチームワークを発揮して臨みたいと思います」

 

 ワールドカップに出場できるアジア枠が増え、数字上は楽になったのは事実。だが気を緩めてしまえば足もとをすくわれてしまう可能性だってある。指揮官が言うように、長距離移動などコンディション面の負担や日本に向ける相手の強いメンタリティを、はね飛ばしていかなければならない。

 

 一丸となって簡単ではない2次予選をしっかり乗り越えていければ、チームとしてまたひとつ成長を遂げることができるに違いない。


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