岡崎慎司にはやはりストライカーが似合う。

 

 ベルギー1部シントトロイデン2年目のシーズンが開幕。インサイドハーフなど主に中盤で起用された昨季と違い、ヴィッセル神戸を率いたトルステン・フィンク新監督のもとフォワードに“再コンバート”されている。

 

 今シーズン2試合目の出場となった第3節、8月13日のホーム、アンデルレヒト戦は0-1で迎えた後半24分から出場。得点に結びつけることができず消化不良に終わったとはいえ、激しいチェイシングからボールを蹴らせて味方に回収させ、味方がボールを持てば常にゴールを狙ってボールを要求し、クロスに対して何度も動き直し、迫力を持って飛び込んでいくなど持ち味は出せていた。コンディション自体も悪くない。彼の欲しいタイミングでもっとボールが出てくるようになれば、おのずと結果もついてくるに違いない。

 

 昨季のように中盤でプレーして新境地を開くのもいいが、前線でエネルギッシュに働いてこそ岡崎だと感じる。

 

 今オフ、雑誌の企画でインタビューする機会があった。

「たくさん試合に出ることができたシーズンでしたし、そのうえで結果を出すことが求められてくると思うんです。どのポジションであっても、いかにしてゴールを取っていくか。それを次のシーズンのテーマにしたいと考えているんです」

 

 ポジション関係なく、ゴールに絡むのが自分の使命。そう思っていただけに、フォワード復帰は本人からしてみれば“渡りに船”だったのではないだろうか。

 

 チームメイトだった林大地(今季、ドイツ2部ニュルンベルクに移籍)のプレーを見て気づかされたことがあったそうだ。彼はこう語ってくれた。

 

「アイツ、凄くガムシャラにプレーするじゃないですか。自分ももちろんやってきて、(今は)いけなくなってしまっているところがあるんですよね。(相手にとって)やっぱりああいう怖さを出さなきゃいけないと思っていて、そのためにももっと体を動かせるようにしたい」

 

 ガムシャラにプレーできる肉体を、コンディションを。

 

 37歳のベテランがオフの間、しっかりと準備してきたことは十分に見てとれる。開幕から3試合が終わって出場時間が限られたなかでも、相手に怖さを与える意識というものは伝わってくる。

 

 今シーズンのシントトロイデンは岡崎、シュミット・ダニエル、橋岡大樹に加え、新たに小川諒也、伊藤涼太郎、山本理仁、藤田譲瑠チマ、鈴木彩艶の日本人選手5人が仲間入りした。アンデルレヒト戦ではシュミット、橋岡、伊藤が先発し、岡崎と山本が途中出場。現日本代表や若手が注目を集めるなかでも、岡崎のプレーには目を引くものがある。自分のなかでしっかりとテーマを決め、真摯に向き合っていくことで「姿勢」がプレーにあらわれている。若い選手にはぜひ岡崎の背中を見て、学んでもらいたい。

 

 言うまでもなく岡崎は日本を代表するストライカーだ。2010年南アフリカ、2014年ブラジル、2018年ロシアとワールドカップ3大会連続で出場し、国際Aマッチ通算50ゴールは釜本邦茂(75得点)、三浦知良(55得点)に次ぐ数字を誇る。清水エスパルスからプロキャリアをスタートさせ、ドイツ、英プレミア、スペイン、ベルギーと欧州4カ国のリーグでプレー。レスター時代の2015~16年シーズンには奇跡のリーグ優勝に大きく貢献している。そんな彼もキャリア終盤を迎えているのは間違いない。

 

「ヨーロッパで何とか40歳までやりたいっていう思いはあります。やり切ったって自分が思えるところまではいきたいなって」

 

 ヨーロッパの舞台において全力で戦い続け、走り続けて、ゴールを狙い続けて。

 

 己の持ち味に磨きを掛け、岡崎慎司は再びストライカーとして勝負に出る――。


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