14日、プロ野球のセ・リーグ阪神対巨人23回戦が兵庫・甲子園球場で行われた。優勝マジック1の阪神が巨人を4-3で破り、11連勝。岡田彰布監督(第1次)の2005年以来、18年ぶり10度目のリーグ優勝(1リーグ時代を含む。2リーグ制では6度目)を達成した。

 

 佐藤輝、NPB史上7人目の新人から3年連続20HR(阪神16勝6敗1分け 甲子園)

巨人

3=000|000|111

4=000|003|10X

阪神

勝利投手 才木(8勝5敗)

敗戦投手 赤星(3勝5敗)

セーブ  岩崎(3勝2敗32S)

本塁打 (巨)岡本39号ソロ、坂本19号ソロ

    (神)佐藤輝20号2ラン

 

 伝統の一戦で「アレ」を決めた。18年ぶりの優勝に、本拠地・甲子園に詰め掛けた虎党が大いに沸いた。

 

 先発は才木浩人。岡田監督は前日、「力み倒すだろうな」と笑っていたが、189cmの長身右腕は150kmを超える速球を軸に長野久義と門脇誠から2者連続三振を奪う。3番・丸佳浩をセンターフライに打ち取り、3者凡退と最高の立ち上がりを見せた。

 

 20年に右肘のトミー・ジョン手術を受け、昨季復帰。今季は先発ローテーションの一角に食い込んだ。ここまでキャリアハイとなる7勝を挙げている右腕は、力のあるストレートで押してスコアボードにゼロを並べ続けた。

 

 好投の右腕を援護したのは6回裏。巨人先発の赤星優志から先頭の近本光司がライト前ヒットで出塁した。1死後、3番の森下翔太がレフト前ヒットで一、三塁とチャンスをつくる。ここで4番の大山悠輔がセンターへきっちり犠牲フライを放った。猛虎の大黒柱は、他球団の主砲と比べて派手さは欠けるかもしれないが、四球数、犠牲フライ数でリーグトップに立つ。

 

 4番が最低限の仕事を果たせば、5番も続く。前日満塁弾の佐藤輝明が赤星の3球目をセンターへ弾き返し、バックスクリーンに飛び込む一発を見舞った。新人から3年連続となる20本塁打は球団初、NPB史上7人目となる快挙だ。近本、森下、大山、佐藤輝のドラフト1位カルテットで3点をリードした。

 

 打線の援護を受けた才木は7回、先頭の岡本和真に一発を浴びたものの、後続を切って取り、7回3安打1失点とスターターの役割を十二分に果たした。阪神はその裏、2死二塁で相手のエラーで1点を追加し、再び3点差とした。

 

 8回からはセットアッパー岩貞祐太がマウンドに上がった。しかし連打を浴び、1点を返された。ここで岡田監督はブルペン陣を惜しげもなくマウンドに送る。右の長野久義に対し、右の石井大智を当て、サードゴロに打ち取った。左の門脇を迎えるとなると、石井を左の島本浩也にスイッチ。島本は門脇の代打・萩尾匡也と、3番・丸佳浩から連続三振を奪い、見事な火消しだ。

 

 迎えた9回表、守護神・岩崎優の出番である。先頭は打ち取ったものの、続く坂本勇人にソロホームランを打たれた。続く秋広優人にはツーベース。一打同点のピンチを招く。「安心して見ていました」と岡田監督。百戦錬磨の鉄腕は、あと1点を許さなかった。最後は北村拓己をセカンドフライに打ち取り、試合を締めた。

 

「今日で“アレ”は封印して、みんなで優勝を分かち合いたい」

 セ・リーグ優勝回数と同じ6度宙に舞った岡田監督。第2次政権は、チーム成績(9月13日時点)を見ても、投打の安定感が光る。失点数(371)は最少、得点数(500)はリーグトップ最少だ。それを支えたのは四球数。投手陣が与えた四球はリーグ最少の276個、打線はリーグ最多452個の四球を選んだ。

 

 無駄な四球を与えなかったことが、リーグ唯一2点台のチーム防御率(2.61)の要因だろう。今季ブレイクした村上頌樹、昨オフの現役ドラフトで獲得した大竹耕太郎、3年目の伊藤将司が揃って2ケタ勝利を挙げている。ブルペン陣も当初の守護神・湯浅京己が離脱しても、その穴を岩崎が埋め、中継ぎは岩貞、石井、島本、加治屋蓮らで凌いだ。

 

 チーム打率はリーグ3位ながら、出塁率はトップ。チームの規定打席到達者に3割バッターはいないものの、ほぼ固定した打順で戦い抜いた。岡田監督は「優勝の瞬間までこの打順でいけたのは、適材適所、役割、その打順でみんなが仕事をした」と選手たちを称えた。

 

 もちろん阪神が目指すのは「アレ」だけで終わりではない。指揮官が「まだ通過点」と口にしたように、クライマックスシリーズ、日本シリーズとポストシーズンは続く。岡田監督の現役時代の85年以来、遠ざかっている日本一がゴールである。

 

(文/杉浦泰介)

 

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