甲子園の盛り上がりをよそに、高校野球人口は減少の一途をたどっている。高野連の調査によると、今年5月末時点での硬式部員数は、昨年から2902人減の12万8357人。これで9年連続の減少となった。言うまでもなく最大の原因は少子化だ。

 

 

<この原稿は2023年8月14日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

 それに加えて、野球用具の高価格化が部員の減少に拍車をかける。他競技に比べ、野球はグラブやバットなど用具を一式揃えようとなると、かなりのおカネがかかる。キャッチャーの場合はミットにレガース、プロテクター……。ボールも硬式球1ダースあたりの値段は7000円前後。初期費用だけでも大変だ。

 

 こう見ていくと、部員減少に歯止めをかけることは容易ではない。

 

 近年は部員不足により、“連合チーム”で地方予選に臨むところが増えてきた。今年は385校、128チームにまで増加した。

 

 私の故郷である愛媛県でも、今治南・今治東・今治北大三島・今治明徳の4校18人、土居・西条農の2校12人、済美平成・上浮穴・農子小田分校の3校17人が“連合チーム”で予選を戦った。

 

 愛媛県といえば“野球王国”と呼ばれるほど高校野球の盛んな土地柄で、春夏通じてのべ10校が頂点に立っている。

 

 先に紹介した今治南も強豪校のひとつで、1964年夏、65年春、67年夏に甲子園出場を果たしている。

 

 そんな学校でも、部員が集まらないとは、ちょっとした驚きだった。

 

 野球王国ですら、こうなのだから、他の地域も推して知るべしだろう。

 

 しかし、部員数の減少は、悪いことばかりではない。レギュラーになれる確率は、これまでに比べれば、格段に高くなっている。

 

 その昔、強豪校の中には、部員数が数十人、いや100人を超えるところもあり、入部したはいいが、「1回も公式戦に出られなかった」という話を聞いたことがある。もっと、ひどいところになると、「3年間、声出しだけで終わってしまった」。これじゃ野球部ではなく応援部だろう。

 

 旧知の監督の中には、こう言って唇を噛む者もいた。

 

「部員が多過ぎて辞めさせるために、敢えて1年生にランニングばかりやらせたことがあります。要するに“人減らし”ですよ。あの子たちは、その後、野球が嫌いになったんじゃないか……。教育者にあるまじき行為で、今はとても反省しています」

 

 野球部も世の中同様、人手不足である。買い手市場から売り手市場へ。高校野球を巡る環境は激変している。

 


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