公式戦がスタートして、約1カ月が経ちました。現在11試合を消化し、7勝3敗1分。数字だけを見れば、まずまずの成績といえます。しかし、相手のミスで、たまたま勝たせてもらっている試合もいくつかあります。また、負けた3試合の中には、勝てる試合もありました。もちろん、選手はみんな一生懸命です。それでも、日々の練習で何度も繰り返しやっている基本に忠実なプレーが、試合でできていないことが多々あります。
 BCリーグの試合では、まだまだエラーの数が多いのは確かですが、仕方のない部分もあるのです。一つに、グラウンドコンディションの問題が挙げられます。例えば、石川県立野球場は昼間に中高生や軟式チームの試合が行なわれ、それからナイターで私たちが試合をするのです。そのため、グラウンドが荒れていることも多く、バウンドが変わりやすくなっていたりします。

 ですから、私はエラーの数にはそれほどこだわってはいません。それよりも、選手たちに求めていることは、「正確に捕って、正確に投げる」という基本。きちんとできている選手もいれば、まだまだできていない選手もいます。ただ、一つ言えることは、どの選手も少しずつでありますが、着実にレベルアップしているということです。

 制球力のよさが光る2人のエース

 さて、投手陣には大きな柱となっている2人の投手がいます。一人は開幕投手を務めた蛇澤敦(NOMOベースボールクラブ出身)。そして、もう一人は右肩を故障した一川幸司の代わりに4月末に入団した渡辺孝矢(常総学院高出身)です。

 蛇澤は開幕こそ引き分けに終わり、勝利を逃したものの、2試合目からは負けなしの3連勝。NOMOベースボールクラブ時代に壊した右肩が未だ完治していないとはいえ、スタミナは十分で、4試合のうち実に3試合に完投しています。
 彼の持ち味は、抜群のコントロールとピンチにも動じない冷静さです。強いて課題を言えば、ストレートが少しシュート回転してしまい、甘く入ってしまうこと。そこを修正できれば、さらに三振も増えるでしょうし、より安定したピッチングができるでしょう。

 渡辺も非常にコントロールのいい投手です。フィールディングも素晴らしく、軽快な動きで守備にも貢献しています。彼の持ち球はストレートとスライダーの2種類。どちらのボールにも緩急をつけることができ、ストライク先行のピッチングで相手バッターを追い込んでいきます。今はまだストレートの球速は130キロ台半ばですが、彼はまだ高校を卒業したばかりの19歳。これから体が出来上がっていくに従って、球速も伸びてくると思いますので、成長が楽しみな選手の一人ですね。

 公式戦は、まだスタートしたばかり。これから約60試合をこなしていかなければなりません。そのためには毎日のトレーニングの中で、しっかりと体作りをしていくことが大事だと思っています。そして基本に忠実なプレーを何度も繰り返し練習し、それをいかに試合で出していけるか。それができるようになれば、今以上にヒットも打てるようになるでしょうし、守備でも併殺が増えると思います。選手たちの伸びしろはまだまだありますから、これからどんどんレベルアップしてくれることを期待しています。


金森栄治(かなもり・えいじ)プロフィール>: 石川ミリオンスターズ監督
石川県金沢市出身。PL学園(大阪)、早稲田大学、プリンスホテルを経て、81年ドラフトで西武に2位で指名され、翌年入団。85年には打率3割1分2厘をマークし、ベストナイン、ゴールデングラブ賞を獲得。88年のシーズン途中に交換トレードで阪神に移籍。93年にはヤクルトに移籍し、代打の切り札として活躍した。96年に現役を引退後は、ヤクルト、西武、阪神、ソフトバンクの打撃コーチに。07年より石川ミリオンスターズの監督に就任した。




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