いよいよ北信越BCリーグの一年目がスタートしました。まずは開幕3試合、そしてGWの4試合を終え、富山サンダーバーズは5勝2敗。いいスタートを切ることができたと満足しています。
 アウエー(新潟)での開幕試合、先発の小園司(阪南大出身)が3安打完封勝利。これはもう嬉しい誤算でした。彼は投手陣の中で兄貴分的存在を発揮しています。マウンド上でも堂々としていますし、バッターに向かっていく負けん気の強さは、投手陣の中でもピカ一です
 練習から先頭に立って投手陣を引っ張っている小園なら、最もプレッシャーのかかる開幕でも自分の力を発揮して積極的に向かっていくピッチングをしてくれる、と踏んで彼を開幕投手に選んだのです。

 とはいっても、試合前の予定では6回まで投げてくれれば、後はつないでいこうと。ところが、終盤に入ってもずっとゼロ行進。あれよ、あれよという間にとうとう最後まで投げきってしまいました。監督の私もビックリするほどパーフェクトピッチングを見せてくれました。

 四球はピッチャーのエラー

 オープン戦から好調だった打線も、相手のミスにうまくつけこんで序盤にリードを奪うことができました。今は4チームとも力の差は紙一重です。それだけに勝負のポイントは序盤にあります。どれだけ失点を少なくできるか、どれだけ得点できるか。これが勝敗の分かれ目といっていいでしょう。それが、今はうまくいっているからこそ、投手陣と野手陣の信頼関係に厚みが増し、結果として表れているのです。

 もちろん、課題は山ほどあります。投手陣に対しては、一つは余計な四球を減らすこと。積極的にいって打たれるのは仕方ありません。しかし、一番悪いのは四球で安易にランナーを出してしまうことです。「四球はピッチャーのエラー」です。また、バックにとっても守りにくい。「また、ボールか」と集中力を欠き、いざという時に出だしの一歩が遅れたりします。そうすれば、今度はバックのエラーにもつながりかねません。

 ここまで敗戦は少ないものの、まだまだ投手陣はボールが高めに浮くケースが多く見受けられます。逆に変化球はワンバウンドしてしまっています。これは抑えようとするあまり、腕に力が入り過ぎてしまっているからです。力を抜くところは抜く、入れるところは入れる。そうした投球のバランスを身につけていってほしいと思います。

 宮地の復調が打線のカギに

 もちろん、キャッチャーのリードも重要です。おそらく、一番苦労しているのはキャッチャーの廣田嘉明でしょうね。彼は昨年まで四国アイランドリーグの愛媛マンダリンパイレーツで正捕手として活躍した選手で、素質は非常にいいものを持っています。私は彼に「かっこいいキャッチャーではなく、泥くさいキャッチャーになれ」と言っています。彼がもう一段レベルアップするには、この“泥くささ”がポイントです。変にきれいにまとめようとせず、例えばワンバウンドのボールをユニホームを真っ黒にしてでも、絶対に捕ってやるんだという姿勢が重要なのです。

 今は毎日欠かさずワンバウンドのブロッキング練習をこなすなど、頑張っています。キャッチャーはピッチャーの盛り立て役。決して目立つ存在ではありませんが、なくてはならない大事な柱です。廣田はキャプテンでもありますし、ぜひピッチャー、そしてチームの“縁の下の力持ち”になってもらいたいと期待しています。

 さて、先述したように打線は絶好調です。特に1番・大士(富山ベースボールクラブ出身)、2番・優士(茨城ゴールデンゴールズ出身)、3番・草島諭(富山国際大出身)と上位打線の出塁率が高く、4番・野原祐也(国士舘大出身)の前にランナーをためることができています。これが、7試合中3試合が2ケタ安打・得点という大量得点をもたらしているのです。現在、主砲の野原(4割6分4厘)を凌いでリーグトップの打率を誇っているのが、草島(4割8分1厘)です。また、大士や5番・井野口祐介(平成国際大出身)もチャンスに強く、どちらもリーグトップの打点を誇っています。

 また、下位打線もいいバッターが揃っています。7番・廣田は俊足ですし、8番・町田一也(NOMOベースボールクラブ出身)も、実力的にはクリーンナップの一角を任せられるほどのバッターです。ですから宮地克彦(元福岡ソフトバンク)に当たりが戻ってくれば、6番・宮地、7番・廣田、8番・町田で“第2のクリーンナップ”を築くことができます。そうすれば、リーグでも最強打線になるでしょうね。

 4チームの中で最も早くからキャンプを張り、結束力を高めてきたことが、今の結果に結びついているのでしょう。正直、まだ一人ひとりの技術はそれほど高いものではありませんが、チーム力はリーグ一だと自負しています。これからも“全員野球”でチャンピオンを目指して頑張りたいと思います。


鈴木康友(すずき・やすとも)プロフィール>: 富山サンダーバーズ監督
1959年7月6日、奈良県出身。天理高から77年にドラフト5位で巨人に指名され、翌年入団。その後、西武、中日に移籍し、90年シーズン途中に再び西武へ。主に守備固めとして活躍し、92年に引退。その後、西武、巨人、オリックスのコーチに就任。05年より茨城ゴールデンゴールズでコーチを務め、07年より富山サンダーバーズ初代監督に就任した。




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