割り切りが大事
9月上旬に行われた日本選手権関東代表決定戦は、1回戦でSUBARUに敗れ、3大会連続7度目の出場はできませんでした。チャンスはつくったものの投打の歯車がうまく噛み合わなかった。打線は10安打1得点。取れるところで点が入っていれば、流れがこっちにきたと思うのですが、ピッチャーも8回に2死から勝ち越しの1点を取られてしまいました。
選手たちも頑張っていますし、本当にいいチームになってきたと実感しています。粘れるチームになってきましたが、上を目指すなら細かいところを徹底できなけれいけません。それはバントであったり、得点圏のバッティングであったり、ピッチャーなら無駄な四球出さず必ず点を取った後はゼロに抑える。そういう当たり前のことをきっちり出来ないと、やはり一発勝負は難しい。そのあたりでチームがレベルアップしていかなければいけないと痛感しています。
今月下旬はNPBのドラフト会議があります。セガサミーでは、大卒2年目のピッチャー古屋敷匠眞にチャンスがあると思います。スカウトの方から聞いたデータによると、都市対抗の平均球速は古屋敷が一番速かった。打たれはしましたが、150km前後のスピードボールは魅力。本人もプロに行きたいでしょうし、可能性がある限り、オープン戦などにスカウトの方たちも来られると思うので、アピールを続けていってほしい。会議当日が楽しみです。
社会人で上位指名が有力視されているのがENEOSの度会隆輝選手。これはチーム状況にもよるでしょうが、若い左バッターがほしいところは上位で獲るかもしれません。NPB各球団、左バッターが結構多い印象があります。ただ彼の場合は、高卒3年目で年齢的に21歳と若い。高卒2年目の都市対抗であれだけ活躍できる何かを持っている。そのあたりをスカウトが評価すれば、獲る球団は3位以内での指名もあるんじゃないかと思っています。
度会選手のいいところは、やはり自分のポイントで打っていること。ある程度飛ばす能力もあるし、プレーにも躍動感がある。NPBに行けば強い球が多いですから、そこへの対応力が問われると思います。チームによっては成功する可能性も十分にあると思います。あとは獲得したチームの監督が我慢強く使ってくれるかどうか。今シーズはマークされて成績は少し振るわなかったですが、鍛えてNPBで通用する体をつくっていけば、伸びしろは十二分にありますからね。
セ・パともに投手陣が支えた優勝
さてプロ野球に目を向けると、同じ関西の阪神とオリックスが優勝しました。両チームとも投手陣が素晴らしかった。やはり、打線ってよく水物と言いますからね。オリックスの場合は山本由伸投手という大黒柱もいましたが。特に安定感のあるブルペン陣がチームを支えましたね。それは阪神にも言えることですが先発が7回までしっかり投げられれば、終盤はブルペンが抑えてくれる。僅差の試合を勝ち切る力がありました。
阪神の岡田彰布監督が元オリックスですし、日本シリーズで阪神対オリックスの関西ダービーとなるかにも注目が集まっています。阪神の本拠地・甲子園球場は浜風の影響で左バッターのホームランが出にくい。その中で佐藤輝明選手は要所要所でホームランを打っています。もし関西ダービーとなった場合、甲子園の風がどちらにとって追い風となるのか。オリックスは浜風を考慮しながら、どのように戦っていくのかに注目しています。
阪神はオーダーを固定し、オリックスは打順を入れ替えて戦ってリーグ優勝を掴み取りました。阪神はまず守りを固める野球ということで、中野拓夢選手をセカンドにコンバートして、ショートはほぼ木浪聖也選手を起用しました。佐藤もサードに固定し、岡田監督の起用が当たったっていうところじゃないでしょうか。中嶋聡監督は吉田正尚選手(現ボストン・レッドソックス)がメジャーに移籍した中で、2軍監督の経験を生かしたチームマネジメントが上手かった。実績のある杉本裕太郎選手でも調子が落ちれば2軍に落とし、1軍に戻した時に選手も活躍するといういいサイクルができていましたね。
私自身、カープでプレーしていた現役時代、レギュラーと控えのどちらも経験しました。ただ私は守備があまり、ね。もちろんレギュラーがいいですが、チームに代打として期待されていた時は割り切っている部分もありました。ちなみに8月にカープの松山竜平選手が代打通算100安打を放ちました。球団としては歴代4位。トップはスカウト部長を務めた村上(旧姓・宮川)孝雄さん。2位は私と同じ準レギュラー的な立ち位置だった浅井樹。そして3位が私なんです。ただ私がランクインしているなんて、松山選手が100安打達成し、記者の方からコメントを求められるまで全然知りませんでした。
データをどう捉えるか
一方でタイトル争いで気になるのは、セガサミーOBの宮﨑敏郎選手ですね。自身2度目の首位打者獲得に向けトップに立っています。ただセは宮﨑選手含め3人、パは頓宮選手ら2人しか3割バッターがいません。昔は3割バッターが一流と言われました。今も選手たちはひとつの目標値として打率3割を目指してると思いますが、メジャーリーグも打率以外の部分を評価される傾向にもある気がしまう。
バッターで言えば、長打力と打点、出塁率。OPS(出塁率+長打率)ですね。フィラデルフィア・フィリーズの1番カイル・シュワバー選手は打率1割9分6厘でホームラン47本、104打点を記録しています。打率は低いですが、フォアボールは124。出塁率は3割4分以上(3割4分3厘)。あまり打率3割にこだわっていないように感じます。
阪神の主砲・大山悠輔選手は打率2割台(2割8分7厘)ですが、四球数が多く出率は4割台(4割3厘)でリーグトップに立ちます。手前味噌ですが、私も現役時代の91年、規定打席には足りませんでしたが打率2割8分9厘で出塁率は4割6厘でした。打線を繋げるためにも出塁率は大事な指標のひとつ。2割台だと監督としても使いづらい。やはり監督してもコンスタントに出てくれる選手ではないとね。
数字はやはり意識するものです。バッターとしては打ちたい気持ちは強いし、得点圏打率も数値化されますから意識するなと言われても意識してしまいます。得点圏で20の8だったら4割。得点圏になったら打てるなという信頼感にも繋がる。そういった数値化されたデータに対し、ネガティブになるかポジティブになるのか。たとえネガティブな数字だったとしても、選手自身がそれをどうポジティブに変えられるかが非常に大事になってくるんじゃないですかね。
今は社会人野球も細かくデータが出ます。ただそこを乗り切っていかないといけない。あまり数字ばかりを追ってはダメだけど、そこはプロアマ問わず結果が全ての世界です。それは我々、指導者も同じですが、結果を求めていかなければいけません。セガサミーとしては、来シーズンいい報告ができるよう頑張りたいと思います!
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