先週の3連戦で3連敗。再びチームは借金生活に突入してしまいました。しかし、戦力が4球団で最も充実している香川相手に3勝4敗1分と互角の勝負をするなど、ここまでは、まずまずの戦いができているのではないでしょうか。

「徳島は強くなりましたね」
 会う人、会う人にそう言われます。でも、よくメンバーを見ていただければわかるように、徳島は戦力を大きく補強したわけではありません。今の主力は2、3年目の選手たちです。僕は昨年が弱すぎただけだと思っています。監督就任以降、秋、春と練習を積む中で戦力の底上げができました。ようやく他と対等な立場で勝負できるレベルになってきたというのが正直な感想です。

 以前もこのコーナーで取り上げたように、投手陣には連日100球、200球の投げ込みを課しました。その効果はシーズンに入って出てきています。スタミナがついたことはもちろん、「オレたちはこれだけやったんだ」という練習に裏打ちされた自信が安定感のあるピッチングを生んでいます。

 特に進化が見られるのが、3年目の渡邊隆洋。3勝をあげ、現在、チームの勝ち頭です。勝てる投手になった最大の理由はボールにキレが出てきたこと。4月27日の愛媛戦では完封勝利を決めました。やはり先発は完投してなんぼ。本人も「達成感がありますね」と完投する喜びを感じてくれたようです。

 意識面もだいぶ変わってきました。11日の香川戦、3本のホームランを浴びて負け投手になったときのことです。その日の渡邊は別人のような悪い出来でした。後から理由を聞くと体調を崩していたとか。自分が登板しないといけないという思いで、体調不良を隠してマウンドに上がったみたいです。チームに迷惑をかけるので、次からきちんと報告するよう注意はしましたが、責任感が出てきたことは評価できます。

 いまや渡邊は徳島の新しいエース。当分は連戦の頭に彼を先発で起用するつもりです。中継ぎ、抑えにまわす考えはありません。先発して完投、そしてチームを勝利に導く。これを目標に頑張ってもらいます。

 これまでエースと呼ばれてきた角野雅俊も復活の兆しが見えてきました。一昨年、11勝をあげながら、昨年は4勝。今年は「なんとかしたい」という気持ちが練習態度に出ています。彼の欠点はマウンドでひとりよがりになるところ。打者を相手にする前に、自分の四球や味方のエラーにイライラしてリズムを悪くしていました。チームにとっても本人にとっても、これはマイナスです。
(写真:5日の高知戦で2年ぶりの完封勝利をあげた角野)

「そんな勝手なピッチングをするなら、もう使わんぞ!」
あまりにも目に余るので、かなり厳しい言葉を彼に投げつけたこともあります。説教が転機になったのかはわかりませんが、今年の角野は感情をいい意味で表に出さなくなってきました。選手たちの目標はあくまでもNPB。もちろん試合で勝つに越したことはありませんが、きちんと自分のピッチングをすることの方が重要です。
「結果に一喜一憂するのではなく冷静に」
 自滅を繰り返していた前の角野に戻らないよう、今後もこのことを繰り返し、徹底していきたいと思います。

 さて、このたび阿南市に新しい運動公園が完成しました。20日は球場のこけらおとしゲーム(対香川)です。NPBの公式戦も可能なナイター設備があるとのことで、試合をとても楽しみにしています。先発バッテリーはズバリ、片山正弘−矢野大天。徳島出身コンビでオープニングゲームを飾る予定です。この試合は入場無料ですので、ぜひお近くのみなさんは新球場見学がてら応援にいらしてください。お待ちしています。

渡邊隆洋(わたなべ・たかひろ)
 1983年12月5日、埼玉県出身。関東学院大を中退して、リーグ初年度の05年より徳島へ。球速は速くないが、コントロールとキレで勝負するサウスポー。昨年の成績は6勝8敗、防御率2.70。

角野雅俊(かくの・まさとし)
 1982年7月19日、大阪府出身。上宮太子高時代は甲子園も経験。専修大を経てリーグ初年度の05年、徳島に入団。その年に11勝9敗、防御率2.17の好成績を残してチームMVPに輝いた。

白石静生(しらいし・しずお)プロフィール>:徳島インディゴソックス監督
 1944年5月22日、徳島県出身。鳴門高から四国鉄道管理局(現JR四国)を経て、66年、ドラフト2位で広島に入団。左の本格派投手として69年に11勝、70年には13勝をマークした。当時、外木場義郎、安仁屋宗八、大石弥太郎とともに先発の4本柱を形成していた。75年に阪急に移籍。77年、78年の日本シリーズで1勝ずつを挙げている。81年限りで引退。16年間の通算成績は394試合、93勝111敗、防御率3.81。引退後は徳島に戻り、全国野球振興会(日本プロ野球OBクラブ)の徳島県代表幹事や徳島中央シニアの監督を務め、野球の底辺拡大に力を注いでいた。06年10月より徳島インディゴソックスの監督に就任。

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