日本女子ソフトボールの「JD.LEAGUE」はいよいよ大詰めを迎える。プレーオフの勝者と東・西地区王者が対戦するダイヤモンドシリーズで、東地区3位のホンダリヴェルタは同王者ビックカメラ高崎ビークイーンと、西地区2位の豊田自動織機シャイニングベガは同王者トヨタレッドテリアーズと対戦する。11月18日からの2日間、埼玉・朝霞中央公園野球場を舞台に、今季のリーグ王者を決める熱い戦いが繰り広げられる。

 

 1番・大工谷で6連勝中

 

 セミファイナル第1試合、リーグ2連覇を目指すビックカメラと戦うホンダは、今季レギュラーシーズンで東地区トップの防御率を誇るジェイリン・フォードと同2位のアリー・カーダというアメリカ代表の二枚看板を擁す。

 

(写真:防御率、勝数、勝率の東地区投手3冠のフォード)

 フォードはストレートとライズボール、そして鋭く落ちるドロップが持ち味のサウスポー。カーダは縦横にボールを動かし、ボールのキレで勝負する右腕だ。今季ホンダの18勝はフォード11勝、カーダ7勝と全て2人が稼いだものだ。チーム防御率は東地区トップの1.42である。カーダは「どちらかが先発なら、もう片方はリリーフに回る。そのどちらにいても安心感がある。2人で情報を共有し、お互いを助け合っている」と盟友に信頼を寄せる。

 

 ホンダはこの二枚看板に加え、強打が持ち味。それに今季は機動力が加わった。キャプテンの下村歩実がリーグトップの14盗塁をマークするなど、チーム全体42盗塁。昨季22個から倍近く増やした。

 

 加藤一秀監督はチームの強みに「一人ひとりが勝ちにこだわり、どうすればチームに貢献できるかを考えている」ことを挙げる。クリーンアップを任される長谷川優理は「足を生かす人、つなぐ人、還す人と役割がはっきり成り立っているチームだと思う」と語る。12日のプレーオフ2ndステージでは3本塁打を放ち、強打の日立サンディーバに8-7で打ち勝った。

 

(写真:持ち前のパンチ力だけなく、今季は8盗塁もマークした大工谷)

 キープレーヤーには2021年までビックカメラに所属していた、元日本代表の大工谷真波を挙げたい。第12節のデンソーブライトペガサス戦から1番に起用されると、以降リーグ戦5連勝。プレーオフも合わせれば現在6連勝中だ。「経験値が高く、バッティングでチームを勢い付けてくれると考えた」と加藤監督。大工谷自身は「基本的に自分は何番でいいタイプ」と言うが、長谷川は「大工谷さんが突破口を開いてくれるので、後ろがいい流れでつないでいける」と打線にもたらす効果を説明した。それが見事に図に当たった。

 

 今季リーグ戦では3勝0敗と東地区で唯一ビックカメラに勝ち越しているホンダ。「東地区の優勝チーム。底力もある。我々はチャレンジャー精神で挑みたい」と加藤監督。“下剋上”の準備はできている。

 

 日替わりヒロイン

 

(写真:抜群の反射神経を見せるショート竹中)

 セミファイナル第2試合でトヨタと対戦する豊田自動織機は、「点数を取られなければ負けることはない。負けないチームをつくろうと思った」と就任以来、永吉慎一監督が育ててきた堅守が売り物のチームだ。特に二遊間を組む須藤志歩と竹中真海は鉄壁。12日に行われたプレーオフ2ndステージのデンソー戦で、エースのダラス・エスコベドを好守で支えた。

 

 まずは4回、先頭打者のゴロを須藤志歩が難しいバウンドを軽快にさばいてアウトにした。6回には今村あこの三遊間後方に落ちそうな打球を、竹中がダイビングキャッチ。守備で流れをつくり逆転劇につなげた。豊田自動織機OGで、デンソーの中森菜摘監督は「守備でリズムをつくり、攻撃につなげていた。6回に竹中選手が好捕した場面は、織機じゃなければ、落ちて(ヒットになって)いたと思う」と舌を巻いていた。

 

(写真:セカンド須藤は今季8本塁打とバットでも貢献)

 打線は日替わりでヒロインが誕生している。「どこからでも点が取れる。貧打ということがなくなった」とは、キャプテンの田井亜加音。今季完封負けは2試合だけ。チーム打率は昨季の2割1分9厘から2割6分1厘、総得点は81点から134得点と大幅に上がった。

 

 選手たちはリーグ戦中断期間の7月、約2週間の合宿で、永吉監督に鍛え抜かれた。田井が「(あの時のことを)もう考えたくない」と苦笑するほど、ハードなものだったという。「夏につくった貯金がプレーオフ、ダイヤモンドシリーズに生きてくるとずっと言われ、それを信じてやってきた。まだまだ貯金は残っているので、この先もしっかり使いたい」

 

 対戦相手の西地区王者トヨタには、今や日本代表のエースに成長したサウスポー後藤希友がいる。今季はレギュラーシーズンで14勝1敗、防御率0.83と圧倒的な成績を残した。チーム成績も総得点リーグ最多、総失点リーグ最少と攻守に隙がない。「もう隠すことはない。トヨタは後藤投手だと思うし、ウチはダラスでいく。ガチンコの戦いになる」と永吉監督。真っ向勝負で2季連続のファイナル進出、その先の日本一を目指す。

 

(文・写真/杉浦泰介) 

 

 BS11では「JDリーグ2023 ダイヤモンドシリーズ」の模様を、11月18日(土)、19日(日)の2夜連続で放送します。18日20時はセミファイナルのビックカメラ高崎ビークイーンvs.ホンダリヴェルタ戦を、19日19時はその勝者と、トヨタ自動車レッドテリアーズvs.豊田自動織機シャイニングベガ戦の勝者が対戦するファイナルを放送予定。2028年のロサンゼルス五輪の正式種目に追加競技として決定し、今後益々の盛り上がりが期待される女子ソフトボールの、今シーズンの日本一を懸けた熱い戦いに、是非ご視聴ください。

※放送内容は中止、または変更になる可能性がございます。

 


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