B1千葉ジェッツふなばし(千葉J)は1月6日から12連勝するなど、今年に入り、14勝1敗(3月5日時点)と上り調子だ。目下、27勝14敗と東地区3位ながら、チャンピオンシップ(CS)進出のワイルドカード(各地区3位以下の勝率上位2チームまでがCS出場)争いでトップに立つ。ジョン・パトリックHCは若手を積極的に起用している。その1人が25歳のPG/SG大倉颯太だ。「年齢的には若いですが、コートに立てば何も変わらない。“若いから”だけを理由に許されることも、評価されることもない。一人前以上の責任を持ってやるべきです」と語っている。

 

――左膝内側側副靱帯損傷・関節包損傷のケガから復帰した1月27日の富山グラウジーズ戦(富山市総合体育館)は、アップから笑顔を見せていたのが印象的でした。

大倉颯太: 特別な感情はなく、いつも通りでしたが、試合に出られることがうれしかった。待ってくださっていたファンの人たちがいたこともありがたかった。富山は地元・石川から近く、知り合いもたくさん観に来てくれていた。そこでプレーできることが、とにかくうれしかったですね。

 

――ここ数年、ヒザの大ケガを2度負っています。

大倉: 今回は過去の2回とはケガの程度が違う。だから復帰に対しても特に不安はありませんでした。

 

――2021年に右ヒザ、22年に左ヒザ、いずれも復帰に半年以上かかりました。

大倉: 気持ちの落ち方は1回目と2回目では全然違いましたね。1回目はケガからのリハビリの過程を知らなかった。2回目はそれを経験していますから。仲間だったり、船橋整形外科病院のドクター、千葉ジェッツのメディカルチーム、パフォーマンスチームなど、復帰に向けては、本当にたくさんの人に支えられました。

 

――昨年12月16日のサンロッカーズ渋谷戦(船橋アリーナ)で、シーズンハイの13得点をマークした際、「いつも通りの仕事をしただけです」と淡々としていました。

大倉: スタッツは全く気にしていません。中学・高校の時はアベレージで30点くらい取っていましたが、千葉ジェッツでの役割は、そうじゃない。ディフェンスをしたり、アシストしたりと様々な仕事があります。それが数字に残るか、残らないかは試合によって変わってくる。30得点取ったからいいというわけではない。自分の得点数に一喜一憂することはないですね。

 

――その考えは昔から?

大倉: 元々、感情を表に出すタイプではなかったですね。

 

――「PGはチームを勝たせるのが仕事」と口にする選手もいます。大倉選手のポイントガード観は?

大倉: 味方や相手の動きにアジャストすることが強みだと思っています。パトリックHCはポジションレスな考え方。僕自身、どこでプレーするかについて、あまりこだわりはありません。

 

――パトリックHCは、「全員が“自分がシュートを打つ役割”と思ったら、ボールが回らない。(大倉)颯太や(西村)文男の存在はありがたい」と話していました。

大倉: 僕自身、何よりも周りから必要とされる存在でありたい。僕よりサイズの大きい選手やドライブが得意な選手、得点を決められる選手はたくさんいます。そういった選手たちをうまくひとつにするのが自分の仕事だと思っています。

 

 代表入りが全てじゃない

 

――千葉ジェッツの公式SNSでは、「#そうたのお手伝い」と題して、チームの雑用を手伝っている様子が紹介されています。

大倉: SNSによって僕の評価が上がってきているので助かります。でも、僕はこれまでもそうしてきたから、正直特別なことをしているつもりはないんです。

 

――チームの中で若手だから、やっているというわけでもない?

大倉: 年齢は関係ないですね。むしろ中学・高校の時は下級生が仕事をサボっていれば上の学年が怒られていました。大学の時は、1年生は雑用をせず、2年生以上から仕事が増えていく。4年生が練習の準備をしていました。例えば荷物が10個あった場合、マネジャー1人で何個も持つより、選手を含めた10人でシェアしたほうがいい。ただそれだけなんです。

 

――今季チームはリーグ戦と並行して、東アジアスーパーリーグ(EASL)に出場するというタフなスケジュールをこなしています。大倉選手は以前から「EASLに出たい」と語っていました。

大倉: 僕はヨーロッパのバスケットボールが好きで、ユーロリーグをよく観ます。ユーロリーグは欧州各国の国内リーグから強いチームが集まる大会。それのアジア版があるなら絶対に経験したいと思っていた。幸いグループリーグ6戦全勝で、ファイナル4(3月8日~)に進出したので、準決勝以降も楽しみです。

 

――今季の目標は?

大倉: 準決勝まで進んだEASLと、決勝に進んだ天皇杯はしっかり勝ちたい。そこで勢いを付け、レギュラーシーズンを勝ち抜き、CSを制覇したい。

 

――日の丸を付けることは?

大倉: 選ばれればうれしいですが、代表に入ることだけに固執はしていません。僕のバスケットボール人生において、それが全てじゃないという気持ちがあります。

 

――選手としての理想像は?

大倉: 僕はケガから復帰した際に、いろいろな方たちにサポートしてもらった。その人たちに恩返しできるプレーヤーになりたいですね。

 

大倉颯太(おおくら・そうた)プロフィール>1999年5月28日、石川県生まれ。ポジションはポイントガード、シューティングガード。小学1年でバスケットボールを始める。布水中学時代に全中優勝を経験。北陸学院高校では1年時からレギュラーの座を掴み、2年時にエースとして、チームをインターハイベスト8、国体準優勝、ウインターカップ3位に導いた。東海大学でも1年時から出場機会を得て、4年時に第72回全日本大学バスケットボール選手権大会でMVP&アシスト王に輝き、優勝に貢献した。大学在学中の2019-2020シーズンに千葉ジェッツふなばしに特別指定選手として加入。翌20-21シーズンは練習生・特別指定選手。21年から千葉ジェッツとプロ契約を交わす。身長185cm。背番号13。

 

BS11では動画配信サービス『U-NEXT』が配信しているスポーツコンテンツからイチ押し映像をコンパクトに切り取ってお届けする情報番組「ワールドスポーツCLIP! Supported by U-NEXT」を毎週木曜日に放送中。3月14日(木)の放送回では、大倉選手が所属する千葉JのEASL準決勝の見どころや戦いぶりを紹介する予定です。ぜひご視聴ください。

 

(取材・構成・写真/杉浦泰介)


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