今年の「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補に、18年ぶりのリーグ優勝、38年ぶりの日本一を達成した阪神・岡田彰布監督の口ぐせである「アレ(A.R.E.)」がノミネートされた。優勝の隠語だ。

 

 

<この原稿は2023年11月13日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

「えぇ、そうか。まぁ、流行ったよな。ほかの競技でもアレ言うてるやん」と岡田。まんざらでもなさそうだ。

 

 最近では、阪神の優勝をこれ幸いとばかりに、「アレ」をカムフラージュに使っている者もいる。会場建設費が当初の2倍近くに上振れすることが明らかになった2025年大阪・関西万博。逆風下で税金投入を促す議論をするのは、さすがにはばかられる空気があるのか、関係者は、万博のことを「懸案のアレ」と呼んでいるという。ほとんど厄介者扱いだ。

 

 流行語大賞が、その年の世相を表す言葉としてスタートしたのは1984年からだが、今となっては死語に近いものもある。

 

 たとえば1988年の「ペレストロイカ」。最高指導者のミハイル・ゴルバチョフによって始まったソ連の民主化政策だが、ウクライナに軍事侵攻したウラジーミル・プーチン大統領の強権的統治を見れば明らかなように、35年たった今、ペレストロイカの成果は影も形もない。

 

 大賞の選には漏れたものの、話題になったこの言葉、今では死語どころか、覚えている向きも少ないのではないか。

 

 1987年の国鉄分割民営化に伴い、JR東日本は「国電」の新愛称として「E電」を採用し、これを大体的に宣伝したのだが、その効果は皆無に等しかった。

 

 ちなみに「E電」のEは、East(東)、Electric(電気、電車)、Enjoy(楽しむ)、Energy(エネルギー)の意味が込められているというが、こじつけのようで人口に膾炙することはなかった。

 

 一方で、1989年の「セクハラ」のように、一過性に終わらず、今も多くの人が日常的に使っている言葉もある。逆に言えば、改善の効果があまり見られない、ということか……。

 


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