「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」(リーグワン)の東京サントリーサンゴリアスは今季のスローガンに“THIS IS SANGOLIATH”を掲げ、リーグ王座奪還に燃える。ラグビー界の巨人らしく大型補強を敢行。南アフリカ代表(スプリングボクス)のW杯連覇に貢献したWTBチェスリン・コルビ、W杯フランス大会準優勝のニュージーランド代表(オールブラックス)で主将を務めたFLサム・ケインが加入した。

 

 28日に行われた記者会見の冒頭で大久保尚哉GMは「サンゴリアスは『DREAM WITH US』をビジョンに、強く愛されるチームを目指しています」と語り、続けた。
「全てのサンゴリアスファミリーとともにチャレンジする。様々な人とリンクして最大化し、常に勝ちにこだわり、愛されるチームをつくることが我々の目指すところです。そして『強く』という部分では、昨季のプレーオフ準決勝でクボタスピアーズ船橋・東京ベイに敗れ、大変悔しい思いをしました。今季こそ、リーグワン初制覇、5シーズンぶりの優勝に向け、チェスリン・コルビ選手、サム・ケイン選手を新たに仲間に迎え、必ず王座奪還を果たしたい。彼らにはプレーはもちろんのことを、サンゴリアスには若くて優秀な選手がいるので、彼らが経験、リーダーシップ、心構えを吸収することで、チームに化学反応が生まれると思っています」

 

 今季のチームスローガンの“THIS IS SANGOLIATH”。これについて大久保GMは「サンゴリアスのラグビーだとわかるプレーをすること。それに加え、ラグビー以外でもスタンダードや規律を守り、サンゴリアスのメンバーに相応しい行動かと、自分にも仲間にも問い続ける。優勝した時に“これがサンゴリアスだ”と胸を張って言えるチームになろうという意味が込められています」と説明した。持ち味であるアタッキング・ラグビーを披露するだけでなく、勝つことへのハングリーさを覗かせる。リーグワンがスタートしてから準優勝、4位とカップを掲げることができていない。前身のトップリーグを含めると17-18シーズン以来優勝から遠ざかっている。これまでオールブラックスのSO/FBボーデン・バレット、SO/FBダミアン・マッケンジー、スプリングボクスのNo.8/FLスカルク・バーガー。SHフーリー・デュプレア、オーストリア代表(ワラビーズ)のFL/No.8ジョージ・スミス、SHジョージ・グレーガン、SO/CTBマット・ギタウら歴戦の猛者たちが在籍してきた。今回は“強者”というらしさを取り戻すためのピースとして加わったのがコルビとケインだ。

 

 コルビはスプリングボクスW杯2連覇の立役者である。愛称“ポケット・ロケット”と呼ばれる男は弾丸のような圧倒的なスピードで相手の守備網を切り裂く。その快速を守備でも生かし、先日のW杯フランス大会準々決勝フランス戦ではコンバージョンキックをチャージし、勝利に貢献した。根底にあるのはチームプレーだ。「どんなプレーをファンに見てもらいたいか」という質問に対し、「チームとしての結果を見ていただきたい」と答えた。
「アウトサイドバックスとしては、アタック、ディフェンス、キックゲームのすべてに関わっていくことが多いし、何もないところからエキサイティングな瞬間を創り出すポジションです。だがチームの結果ありき。チームに良い結果をもたらすためにパフォーマンスするところを見ていただきたい」

 

 

 チームファーストなのは、オールブラックスとしてW杯3大会に出場し、優勝、3位、準優勝を経験したケインも同じだ。フランス大会では主将を務めた。接点に強く、運動量豊富なハードワーカー。「自分自身にチャレンジを課しながらチームの勝利に貢献したい。攻守共にチャレンジし続け、チームとして皆さんが誇りに思ってもらえるようなパフォーマンスを見せたいと思っています。自分自身が身に付けるジャージーの意味を考えながら、身を粉にして毎試合プレーしたい」。ケインは初の国外クラブでのプレーとなるが、東京SGに対しては「クラブから受ける印象は、勝つことにハングリー。その一員になれたことがエキサイティングだと思う。自分の性格にも合っている」と口にした。

 

 コルビとケインの加入で、東京SGにどんな“化学変化”が生まれるのか。

「自分はフランスで6年間プレーしていたので、日本のラグビーとは違った知識を周りの選手たちに共有できればうれしく思う。同時に自分もリーグワンから学ぶことがたくさんあり、吸収できることを楽しみにしている。自分らしさを表現できるプレーをしていきたい」(コルビ)
「新しい環境に馴染むために、大事なのは時間を取り、チームの環境やラグビースタイルに慣れていくことだと思っている。自分の持っている知識、スキルを体現しながら、周りと共有できればうれしい。毎試合、毎試合チームとしてインパクトを与えていきたいと思う。サンゴリアスはアタックのマインドセットが強いチームなので、そこをうまく使いながらディフェンスで貢献したい。ターンオーバーしてボールを奪ったら、隣にいるチェスリンに回してトライを取れたらうれしいと思っている」(ケイン)

 

 東京SGの開幕戦は12月10日、東京・秩父宮ラグビー場で昨季王者のS船橋・東京ベイと対戦する。

 

(文・写真/杉浦泰介)