いささか旧聞に属する話になりますが、59年ぶりの関西ダービーとなった日本シリーズは、阪神がオリックスを4勝2敗で下し、38年ぶりの日本一になりました。シーズンを通して、阪神の岡田彰布監督は人心掌握術に長けていると感じました。解説者時代から選手を把握していたようで、若い選手の使い方が非常にうまかったですね。主力の3年目・佐藤輝明選手も不調に陥れば、2軍に落とすこともありました。

 

 また投手陣を中心にメンバーを固定できたことが良かったのだと思います。普通、連敗すればスターティングメンバ―に迷ったりもしますが、岡田監督にはそういった向きが見られませんでしたね。シリーズに関しては、やはり初戦で、山本由伸投手を相手に勝ったことが、勝敗を分けたと思います。

 

 シーズンを終え、ストーブリーグに突入しました。各チームの戦力補強のニュースが届いています。11月15日に千葉・鎌ケ谷で行われたトライアウトには、私を含めセガサミー野球部も視察に行きました。今年からプロ野球の2軍に参戦する「ハヤテ223(ふじさん)」と「新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ」の監督、スタッフの方たちもいらっしゃっていました。約20年前、独立リーグ(四国アイランドリーグ)がスタートしましたが、NPBに次々と選手を輩出するようになりました。野球の裾野は確実に広がっていると感じますね。

 

 昨年のトライアウトを経て、元広島カープの田中法彦がセガサミーに加わりましたが、今年はNPB出身者の獲得はありませんでした。ピッチャーに関しては、何人か“面白いな”と目に留まる選手もいました。ただ補強ポイントではなかったため、今回は見送りました。私がトライアウトで重要視するのは、ピッチャーならストライク率、バッターならコンタクト率です。あとは性格的にもチームに溶け込めるかどうか。トライアウトで見せるプレーだけでなく、関係者などに聞き取りをして調査してから獲得を決めます。今年からチームの仲間になった田中ですが、今ではすっかり溶け込み、チーム内での評判も良い。来年の飛躍を期待するひとりです。

 

 さて、11月は井端弘和新監督率いる侍ジャパン(野球日本代表)が「アジアプロ野球チャンピオンシップ」で初陣を飾り、見事優勝を果たしました。今大会は24歳以下の若手を中心に構成したメンバーで臨みましたが、井端監督の選手の起用が光っていましたね。韓国代表との決勝、延長10回タイブレークで、森下翔太選手(阪神)に代えて古賀悠斗捕手(埼玉西武)を送り、バントを命じました。手堅い野球は岡田監督とよく似ていると感じました。確実に得点圏に進める堅実な攻撃。対戦相手の韓国は失敗し、ゲッツーに倒れました。きめ細かい野球をきちんとできたことが勝因に挙げられます。

 

 来年への期待

 またサヨナラ打の門脇誠選手が打席に入る際には、井端監督が助言を送ったと聞いています。監督は広い視野を持って、選手とのコミュニケーションを図る。いかに臨機応変のアドバイスができるかも重要です。井端監督のひらめき、直感力は素晴らしかったと思います。井端監督は現役時代、亜細亜大学で鍛えられ、プロ入団後も中日で落合(博満)さんに鍛えられてきた経験があります。指導者としては巨人と侍ジャパンコーチ、U12とU15とアンダーカテゴリー日本代表では監督を務めました。社会人のNTT東日本でも臨時コーチを務めるなど育成力に長けた指導者のように感じます。

 

 選手の発掘、育成というタスクを与えられながら、まずは優勝という素晴らしい結果を残したので、初陣は100点満点と言っていいのではないでしょうか。勝てば官軍。勝つ野球をすれば周囲が認め、次に繋がっていく。それが勝負の世界の常です。来年秋に開催予定のプレミア12で、真価が問われることになりそうです。

 

 ちなみに私がセガサミーの監督に就任した1年目、とにかく明るく元気よくやろうと取り組みました。選手は、みんな息子みたいなもんです。コーチ陣とコミュニケーションを取りながら地道な作業を経て、チームの方向性を決めていく。最初は選手を信頼することから始めました。長い時間練習する必要はない。効率性を求めました。数多く実戦を積ませるためにオープン戦をたくさん組み、選手の力量を見極めたのです。練習はもちろん大事ですが、試合の中で状況判断を身に付けることが大事だと考えました。特に社会人野球は公式戦の数が限られていますから。私が監督に就いて、来年で4年目。選手たちも着実に成長している手応えもあります。

 

 今年のセガサミーを振り返ると、都市対抗の東京都第4代表決定戦で劇的な勝利を挙げました。本戦出場を勝ち取ったものの、1回戦で敗れてしまったことは我々も反省しなくてはいけないところです。日本選手権は予選敗退。私が就任してから続いていた全国大会出場が途絶えてしまい、ファン・関係者の皆様には申し訳ない気持ちでいっぱいです。

 

 チームは来年2月から宮崎で約1カ月キャンプを張ります。新人選手も入ってきますので、その選手たちがどれだけチームに刺激を与えてくれるのか楽しみです。来シーズンはセガサミー野球部としても、明るい話題を届けられるよう頑張ります。これからもセガサミー野球部への変わらない声援をよろしくお願いいたします! ではまた来年、このコラムでお会いしましょう。

 

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