「JAPAN RUGBY LEAGUE ONE」(リーグワン)のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S船橋・東京ベイ)が4日、千葉・船橋市にあるクラブハウスで記者会見を開いた。会見にはフラン・ルディケHC、石川充GMに加え、新加入のウェールズ代表95キャップのFBリアム・ウィリアムズとニュージーランド代表90キャップのHOデイン・コールズが意気込みを語った。
 
 昨季、前身のトップリーグ時代を含めても初のトップディビジョンでの優勝を成し遂げたS船橋・東京ベイ。ルディケHC、CTB立川理道キャプテン体制は継続だが、新戦力にビッグネームを加え、連覇へ邁進していく。「やっと戦力が整った。ここからいいプロセスを踏んで上がっていきたい」と石川GM。指揮官が「ワンダフルな選手」と評する、経験豊富な32歳のウィリアムズと36歳のコールズが連覇へのキープレーヤーとなるのだろう。
 
 石川GMはウィリアムズの獲得理由について、以前こう語っていた。
「彼のようなキッキングゲームを得意とするFBを探していた。今季は18試合中16試合に出場(13試合FB、3試合WTB)したゲラード・ファンデンヒーファーは34歳。彼の負担を軽減することも考えなければいけませんし、彼とは違う特長を持つFBが必要でした。特にサントリー(東京サントリーサンゴリアス)、パナソニック(埼玉パナソニックワイルドナイツ)と戦う際にはキックの出来がポイントになります。後方からキックでゲームをマネジメントできる選手が欲しかった」
 ウィリアムズはウェールズ代表として13年のテストマッチ、19年W杯で来日している。「日本の人たち、文化が好きになった」こともあり、今回のオファーを快諾した。S船橋・東京ベイとは単年契約ではないという。
 
 ウェールズ代表としてW杯に3大会連続で出場したウィリアムズは、ルディケHC曰く「Xファクター(特殊な能力を持つ存在)」である。
「相手からしてみれば何をしてくるかわからない。ライン参加がうまいのでカウンターアタックでも期待したい。あとはハイボールキャッチが巧いので楽しみ。(SO)バーナード・フォーリーや9番(SH)の選手が蹴るボールをキャッチしてもらいたい」
 188cmの長身を生かし、FBとWTBをこなす。キック、ランのスキルに長ける32歳だ。ウィリアムズ自身も「攻守におけるハイパントの処理、バックスリー(FB、WTB)の動きを見てもらいたい」と言う。
 
 もう1人のコールズは、“ピンチヒッター”である。W杯フランス大会に出場していた南アフリカ代表HOマルコム・マークスの負傷離脱により急遽、獲得に至ったのだ。大会期間中、S船橋・東京ベイ側は、コールズ側にアタック。ウィリアムズと同じくW杯3大会連続出場のコールズは、フランス大会を最後にジャージーを脱ぐ予定だったが翻意した。その理由が、彼と縁のあったチームからの“ラブコール”だったからだろう。S船橋・東京ベイとスーパーラグビー・パシフィック(SRパシフィック)のハリケーンズ(ニュージーランド)は以前から交流がある。ハリケーンズのダニエル・クロンコーチはS船橋・東京ベイにスポットコーチとしてスクラム指導をしたことがあったという。
「彼(クロン)がクボタに対しての熱量を伝えてくれた。決めたのは4日間くらいだった。W杯中のバイウィーク(試合のない週)に、(昨季までチームに在籍したライアン・)クロッティとも話した。ここに来られてうれしい。半年のプレーとなるが自分のすべてを出し切りたい」(コールズ)
 
 コールズ自身との交流もある。過去にS船橋・東京ベイはFWの強化策として、ニュージーランドを訪れ、ハリケーンズのトレーニングに参加した。その際に広報の岩爪航氏は、コールズから指導を受け、「すごく親身になって教えてくれました」と証言する。前川泰慶チームマネジャーも「兄貴分的存在だと聞いています」と話しており、その実力はもちろんのこと、人望も厚い。「彼からラインアウト、スクラムの安定感を若手選手に学んで欲しい。ハリケーンズでは主将をしていたので、チームを引っ張ってほしい」とルディケHCはコールズのリーダーシップにも期待しているようだ。本人も「自分の知識、スキルを伝えたい」と、その役割を重々理解している。
 
 プレー面では、「HOのイメージを変えた選手」というのが、ルディケHCのコールズ評だ。「セットプレーの要になるポジションだが、彼は3列目やCTBのような動きをする」。機動力のあるHOで、ニュージーランド代表やハリケーンズではボールキャリーの場面が度々見られた。ニュージーランド代表でも100得点以上記録しており、S船橋・東京ベイのアタックを後押しする存在となるだろう。
 
 連覇に向け、立川は「もう一度獲りに行く」と挑戦者の姿勢を示す。その想いに呼応するかのような積極的な補強策と言えよう。
 
 (文・写真/杉浦泰介)