38年ぶり、2度目の日本一を達成した阪神。岡田彰布監督は杉山健博オーナーとの会談で「FAとかは眼中にない」と明言した。

 

 

<この原稿は2023年12月4日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 

「当然新しい力が必要よ。同じメンバーでは戦えないから、そこの上積みやね」

 

「チームの底上げという意味では11月(の秋季キャンプ)が一番ええねん。ものすごく伸びる要素があるから、一番鍛えたいんよ」

 

「若い選手を鍛えて、もう少し膨らみのあるチームができればと思っているよ」

 

 岡田の口から発せられた言葉は「上積み」「底上げ」「膨らみ」。

FAなどを利用して外から戦力を補強するのではなく、あくまでも現有戦力を強化することで連覇を目指す――それが来季に向けての岡田の施政方針である。

 

 別段、新しいことを言っているわけではない。2005年のリーグ優勝直後にも、同じような趣旨の発言をしていた。

 

 オリックスと阪神で2軍コーチや2軍監督を務めたことのある岡田は「若手育成」に自信を持っている。

 

 岡田が1軍の将として、反面教師にしているのが、中日を4度のリーグ優勝と1度の日本一に導いた落合博満だ。

 

<落合監督は若い選手を我慢しながら育てるということをしなかった。そうしているうちに根腐れしていき、二軍は12、13年に、2年連続で最下位に沈んでしまっている。この結果に表れているように、新しい選手が育ってきていない>

 

 これは岡田が2014年に上梓した『そら、そうよ』(宝島社)からの抜粋だ。

 

<落合監督は勝つということに特化していたが、二軍を指導した経験はなく、選手を育てる監督ではなかった。二軍の育成をおろそかにしてきたツケが今、回ってきている>

 

 手厳しい指摘だが、的を射ている部分もある。

 

 長い歴史を誇る阪神だが、連覇は、まだ一度もない。若手育成なくして常勝軍団なし――。岡田は、そう考えているようだ。果たして黄金期は訪れるのか……。

 


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