日本のスポーツはこれまで「学校」と「企業」を中心に発達してきた。世界的にも珍しい、いわゆる「日本スタンダード」だ。しかし、この在り方が今、危機に直面している。
 まず「学校」だが、折からの少子化でボールゲームや団体競技は試合を行おうにも人数が揃わないのが現状だ。地方では過疎化が追い討ちをかける。
 続いて「企業」だが、不況下、相次いでスポーツ部門が縮小された。かつて都市対抗野球は企業スポーツの花形といわれたものだが今じゃ見る影もない。
 そこで今、全国各地で脱学校、脱企業、いわゆる地域密着型のスポーツクラブづくりが推進されるようになった。ヨーロッパ型のシステムを構築しようというわけだ。
 しかし財政難、指導者不足もあって、スポーツ界における構造改革はまだ成果をあげるまでには至っていない。
 本書は地方紙の記者が長きにわたって綴った地方からの現状報告である。地道な取材をもとに地方スポーツの問題点を浮かび上がらせるだけでなく、だからこそスポーツはかけがえのない文化なのだと訴える。中央集権から地方分権へ――。スポーツの挑戦は成功するのか。
「地域スポーツに夢をのせて」(政 純一郎 著・南方新社・1800円)


2冊目は「マネー・ボール」(マイケル・ルイス 著・ランダムハウス講談社・1600円)。金満軍団ヤンキースの約3分の1の総年俸でほぼ同等の成績を収めているアスレチックス。弱小球団躍進の陰には名GMの奮闘があった。中山 宥 訳。

3冊目は「日本地図の楽しみ方」(ライフサイエンス著・三笠書房王様文庫・495円)。身近にも不思議なことはたくさんある。多摩川を隔てて東京にも神奈川県にも「等々力」「野毛」という地名がある。なぜか? そんな素朴な疑問が満載。

<この原稿は2004年6月3日付『日本経済新聞』夕刊に掲載されたものです>
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