ボクシングは自分にとって唯一没頭できる宝もの ~中谷潤人インタビュー~

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 相手を圧倒する強さから2階級4団体統一王者の井上尚弥にならって、「ネクストモンスター」と称される中谷潤人。3階級制覇を懸けた大一番を前に、当HP編集長・二宮清純がその胸中に迫る。

 

二宮清純: WBC世界バンタム級タイトルマッチが、2月24日に迫ってきました。東京の両国国技館で王者アレハンドロ・サンティアゴ選手(メキシコ)に挑むわけですが、減量を含めて調整は順調ですか。

中谷潤人: 本格的な減量はこれからですが、全体としては順調だと思います。

 

二宮 ボクサーの減量と聞くと、サウナなどのいわゆる“水抜き”を思い浮かべる人も多いと思います。中谷さんはどのような減量を?

中谷: 以前はサウナを使っていたのですが、コロナ禍でなかなか行けなくなり、ジムワークだけで落とすようになりました。それが自分に合っているみたいで、今回もそうするつもりです。

 

二宮 健康的な落とし方ですね。今回、スーパーフライ級からバンタム級に1つ階級が上がった点に不安は?

中谷: 全くないと言ったらうそになりますが、パフォーマンスは良くなると思っているので期待の方が大きいです。

 

二宮: 今日は、中谷さんのこれまでのボクサー人生についてもお聞きします。ボクシングを始める前は極真空手をやっていたそうですね。

中谷: はい。地元は三重県の東員町です。当時、実家はお好み焼き店を営んでいて、常連のお客さんの中に空手の先生がいたことがきっかけで始めました。

 

二宮 その後、中学1年時にボクシングのKOZOジムに入門されます。なぜボクシングに転向を?

中谷: 体が小さかったこともあり、空手ではなかなか勝てずにいました。そんな時に店のお客さんから「ボクシングなら体重別だからいいんじゃないか」と勧められたんです。それで中学入学前に少し体験したらすごく楽しくて、ボクシングで頑張っていこうと決意しました。

 

二宮 確かKOZOジムの会長は、元東洋太平洋スーパーバンタム級王者の石井広三さんでしたね。

中谷 すごいファイターで、パンチに自信を持っている方でした。最初にそういう方から指導を受けられたことが、今の自分に生きています。

 

二宮: 中学時代は、2年時に15歳以下の全国大会(32.5kg級)で優勝、続く3年時も優勝(40kg級)するなど、見事な成績を収めます。そして中学卒業後は、プロを目指して単身渡米。ずいぶん思い切った決断をしましたね。

中谷: 中学3年の全国大会前に、石井会長が交通事故で亡くなりました。それでこれから誰に指導を受けるか、どうやってプロを目指すかと考えた時に、1度、本場アメリカでやってみたいという気持ちが強くなりました。

 

二宮: ご両親から、「せめて高校卒業後でもいいのではないか」といった話はされなかったですか。ボクシングの強豪校に進むという道もあったと思いますが……。

中谷: 両親をはじめ皆からそう言われました。確かに、アマチュアでキャリアを積んでからプロになるというのが一般的です。でも、私にはプロの世界でチャンピオンになるという夢があったので、少しでも早くプロの道に進みたかった。

 

二宮: 単身での渡米に不安はなかったですか?

中谷: 不安を感じる前に、飛行機に飛び乗りました(笑)。

 

二宮: 現在、中谷さんにはトレーナーとしてルディ・エルナンデスさんが付いていますね。ルディさんといえば、畑山隆則さん(世界2階級制覇王者)のトレーナーを務め、世界的なカットマン(止血担当)としても名をはせた人物ですが、アメリカで知り合ったのですか。

中谷: ルディさんのお父さんの家にホームステイさせてもらいました。もともとは、日本に帰って来た時にルディさんと会う機会があって、「世界チャンピオンを目指している」と言ったら、「ウチに来い」と。

 

二宮 そうでしたか。中谷さんのボクシングを見ていると隙がないと感じます。離れても戦えるし、接近戦もいける。パンチも多彩です。非常に完成度が高いという印象があります。やはりルディさんの影響が大きいですか。

中谷: そうだと思います。ルディさんは、相手のスタイルや特徴などを見極めた上で、どう戦うかという戦術も教えてくれます。それに合わせていろいろなタイプの選手とすごい数のスパーリングをやらせてもらえるので、自然と技術も身に付きました。

 

(詳しいインタビューは2月1日発売の『第三文明』2024年3月号をぜひご覧ください)

 

<中谷潤人(なかたに・じゅんと)プロフィール>

1998年1月2日、三重県東員町生まれ。小学3年から極真空手を始め、中学1年時にボクシングへ転向し、KOZOジムに入門。中学2年時に32.5kg級、3年時に40kg級で全国U-15ジュニアボクシング大会を連覇した。中学卒業後は単身渡米し、ルディ・エルナンデスに師事。その後、現在のM.Tボクシングジムに所属し、2015年に17歳でプロデビュー。以後、16年に全日本フライ級新人王、17年に初代日本フライ級ユース王座、19年に日本フライ級王座を獲得。20年にWBO世界フライ級王座を獲得し、21年にはアメリカで初防衛に成功した。23年にWBO世界スーパーフライ級王座決定戦を制して2階級制覇を達成。身長1m72cm、プロ戦績26戦26勝(19KO)。

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株式会社第三文明社

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月刊誌「第三文明」で2010年1月号より好評連載中の「対論×勝利学」は、 二宮清純が一流アスリートや指導者などを迎え、勝利への戦略や戦術について迫るものです。 現場の第一線で活躍する人々をゲストに招くこともあります。 当コーナーでは最新号の発売に先立ち、インタビューの中の“とっておきの話”をご紹介いたします。

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