第160回 九十九里をもって半ばとす
元旦、私はある病院の救急受付にいた。もう、とうに2時間は経過している。
新年を気持ちよく迎えるはずのこの日、熱・頭痛・喉の痛み・咳……オールスターがそろって襲ってきた。
今年は身体を動かす機会を増やすべく、1月から30年ぶりのスキーなど、いろいろ計画していたのに。とてもとてもスポーツなんてする気が起きない。
診察室に入り、「元旦からすみません」と、思わず私。当番で忙しくしていらっしゃる医師は朗らかに笑ってくれました。
診察の結果、インフルエンザ。5日間外出禁止。実は生まれてこの方、罹患したことがなく「私、インフルエンザにはかからないんです」と豪語していました。だから予防接種は打っていなかった。今になって、とてもかっこ悪く、みっともなく、恥ずかしく思います。
2日目の夜は、喉が痛くて眠れません。このまま私の声が出なくなってしまったらどうしよう(カラオケとか、どうしよう)、と夢うつつの中で絶望しました。
5日目、何とか快復し、テレワークで仕事始め。
よし、いろいろ開始するぞ、まずはゴルフ練習に行きました。そして、ついにスキーに行くんだ(毎年誘ってくれる女子会。今年こそ参加するんだ)。
数日、外出を重ねてお仕事、新年会に連続で参加しました。
しかし、2週間ほど経過した頃、頭が重い……。ちょっと咳が出る。完全に治っていなかったのかな?
きちんと治さなきゃと思いつつも、また新年会です。
すると翌日、喉の痛みと発熱が。みるみる高熱になっていきました。39.5℃。これは私史上最高、最長不倒というわけで、病院へ。こちらも私史上初めての扁桃腺炎。免疫力が低下している、とのことです。医師には「インフルエンザをきちんと治しておくべきでしたね」とも。
喉の痛みと高熱にうなされ、あれもこれもと予定をキャンセルしました。本当に申し訳ありませんでした。キャンセルをお願いした時、すべての人からあたたかく優しいお声がけをいただきました。どれほど嬉しくありがたかったか。気も弱くなっており、涙で枕を何度も濡らしました。
この扁桃腺炎は、とにかく最後まできちんと治すことを目標に取り組みました。
久しぶりに病に臥せって思ったのは、意欲が湧かないことの重大さです。食欲をはじめとするすべてのことへの気力がなくなりますが、想像していなかったのがスポーツです。スキーに行けなくて残念などという気持ちには一切なりません。ただただキャンセルできて助かった、と思うのみ(現在完治しており、すごく残念だったと思えるし、来年は絶対行くと決めている)。
つまりはバロメーター。不調発見器! 体調が少し悪いと思ったら、スポーツをしたいかどうかである程度を計ることができるのでは、と感じています。
さて、そんなこんなで、大変スローなスタートを切った私ですが、今後の教訓として強く誓ったことがあります。
百里の道は九十九里をもって半ばとす
治りかけに調子に乗った行動をとる浅はかな私とは決別します。
<伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>