元旦、私はある病院の救急受付にいた。もう、とうに2時間は経過している。

 新年を気持ちよく迎えるはずのこの日、熱・頭痛・喉の痛み・咳……オールスターがそろって襲ってきた。

 今年は身体を動かす機会を増やすべく、1月から30年ぶりのスキーなど、いろいろ計画していたのに。とてもとてもスポーツなんてする気が起きない。

 

 診察室に入り、「元旦からすみません」と、思わず私。当番で忙しくしていらっしゃる医師は朗らかに笑ってくれました。

 診察の結果、インフルエンザ。5日間外出禁止。実は生まれてこの方、罹患したことがなく「私、インフルエンザにはかからないんです」と豪語していました。だから予防接種は打っていなかった。今になって、とてもかっこ悪く、みっともなく、恥ずかしく思います。

 

 2日目の夜は、喉が痛くて眠れません。このまま私の声が出なくなってしまったらどうしよう(カラオケとか、どうしよう)、と夢うつつの中で絶望しました。

 

 5日目、何とか快復し、テレワークで仕事始め。

 よし、いろいろ開始するぞ、まずはゴルフ練習に行きました。そして、ついにスキーに行くんだ(毎年誘ってくれる女子会。今年こそ参加するんだ)。

 

 数日、外出を重ねてお仕事、新年会に連続で参加しました。

 しかし、2週間ほど経過した頃、頭が重い……。ちょっと咳が出る。完全に治っていなかったのかな?

 

 きちんと治さなきゃと思いつつも、また新年会です。

 すると翌日、喉の痛みと発熱が。みるみる高熱になっていきました。39.5℃。これは私史上最高、最長不倒というわけで、病院へ。こちらも私史上初めての扁桃腺炎。免疫力が低下している、とのことです。医師には「インフルエンザをきちんと治しておくべきでしたね」とも。

 

 喉の痛みと高熱にうなされ、あれもこれもと予定をキャンセルしました。本当に申し訳ありませんでした。キャンセルをお願いした時、すべての人からあたたかく優しいお声がけをいただきました。どれほど嬉しくありがたかったか。気も弱くなっており、涙で枕を何度も濡らしました。

 この扁桃腺炎は、とにかく最後まできちんと治すことを目標に取り組みました。

 

 久しぶりに病に臥せって思ったのは、意欲が湧かないことの重大さです。食欲をはじめとするすべてのことへの気力がなくなりますが、想像していなかったのがスポーツです。スキーに行けなくて残念などという気持ちには一切なりません。ただただキャンセルできて助かった、と思うのみ(現在完治しており、すごく残念だったと思えるし、来年は絶対行くと決めている)。

 

 つまりはバロメーター。不調発見器! 体調が少し悪いと思ったら、スポーツをしたいかどうかである程度を計ることができるのでは、と感じています。

 

 さて、そんなこんなで、大変スローなスタートを切った私ですが、今後の教訓として強く誓ったことがあります。

 

 百里の道は九十九里をもって半ばとす

 

 治りかけに調子に乗った行動をとる浅はかな私とは決別します。

 

伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。STANDでは国や地域、年齢、性別、障がい、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。第1期スポーツ庁スポーツ審議会委員、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問を務めた。2022年10月、石川県成長戦略会議委員に就任。同11月に馳浩スペシャルアドバイザーに就いた。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ~パラリンピックを目指すアスリートたち~』(廣済堂出版)がある。

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