(写真:王者スーパーレックに果敢に挑んだ武尊。3ラウンドに猛ラッシュをかけるも判定負け、ジャッジ3者の採点はいずれも49-46だった Photo by 藤村ノゾミ)

「僕ができる限界はここまでです。もうこれ以上、カラダをつくれません」

 1月28日、東京・有明アリーナ『ONE165』スーパーレック・キアトモー9(タイ)に敗れた直後、リング上で武尊(team VASILEUS)はそう言った。

 

 この言葉を受け「引退するのか?」と報じられもしていたが、それはないだろうと思った。このまま武尊がリングを去れるはずがない。

 最近、負けるとすぐに「引退」を匂わせる選手が増えた。

 総合格闘技の朝倉未来(JTT)、皇治(TEAM ONE)然りである。

 わざと匂わせているわけでは勿論ない。精一杯闘って負けた後には「ここまでか」と心が沈む。正直な思いが言葉や態度に出るのだろう。だが時間が経過し冷静になると「悔しさ」が湧いてくる。

「このまま終わってたまるか!」と。

 

(写真:試合を終え判定が告げられた直後に武尊はリング中央で跪いた Photo by 藤村ノゾミ)

 今回の武尊もそうだった。

 試合の6日後にスーパーレックにメッセージを送るかのようにSNSで、こう発信している。

「戦ってくれてありがとう。あなたの強さを感じて、さらにモチベーションが上がりました」

 現役を続行する武尊は、スーパーレックとの激闘が評価され最新ランキングでONEキックボクシング・フライ級2位となった。1位は本来『ONE165』で武尊と闘うはずだったロッタン・ジットムアンノン(タイ)。

 

 ならば武尊の次戦は、vs.ロッタンか。

 スーパーレックとの激闘で多大なダメージを負った武尊の再起戦は早くても夏。そして、武尊vs.ロッタンの勝者が再度、スーパーレックに挑むストーリーとなろう。

 

 

 聖地での偉業達成なるか

 

(写真提供:RWS JAPAN)

『ONE165』の熱狂冷めやらぬ中、2月12日には後楽園ホールでムエタイのビッグマッチが行われる。

『RWS(ラジャダムナン・ワールドシリーズ)JAPAN』。

 タイから強豪ファイターが多く来日して行われる同イベントに吉成名高(エイワスポーツジム)が登場する。

 

 吉成は、2019年4月にラジャダムナン&ルンピニーのミニフライ級王座を統一、昨年夏には東京・渋谷『BOM42』でラジャダムナン・フライ級王座を奪取しムエタイ2階級制覇。そして昨年12月にはラジャダムナン・スーパーフライ級暫定王者となった。

 そして今回、ラジャダムナン・スーパーフライ級正規王者のプレーオプラーオ・ペップラオファー(タイ)と対戦する。「ムエタイ3階級制覇」に挑むのだ。

 

 プレーオプラーオは25歳で名高と同じサウスポー。過去にラジャダムナン・ミニフライ級のベルトを腰に巻いたこともあり、昨年6月に2階級制覇を果たした。ヒジ打ちを多用した激しい打ち合いが得意なプレーオプラーオだが、フルラウンドでポイントをまとめ勝ち切る術も身につけている。現在28連勝中の名高にとっても簡単に勝てる相手ではない。

 

 名高は言う。

「3階級制覇は実現したい。また、『RWS JAPAN』旗揚げ戦のメインを任せてもらうからには、ただ勝つだけではなく圧倒的なパフォーマンスを見せて勝ちたい」

 勝敗予想は難しい、実力的には互角だ。観る者も手に汗握る闘いになろう。

 1978年3月、藤原敏男(目白)がモンサワン・ルークチェンマイ(タイ)を4ラウンドKOで破りタイ人以外初のムエタイ王者(ラジャダムナン・ライト級王者)となった聖地・後楽園ホールで珠玉の闘いを堪能したい。

 なお大会の模様は『U-NEXT』で生配信される。

 

 

<直近の注目格闘技イベント>

▶2月10日(土)、東京・後楽園ホール/「SHOOT BOXING 2024 act.1」海人vs.ペットモラコット・ペッティンディーアカデミーほか

▶2月11日(日)、東京・後楽園ホール/「NJKF CHALLENGER 東西対決」フェザー級暫定王座決定戦、大田拓真vs.笹木一磨ほか

▶2月16日(金)、場所非公開/「GLADIATOR CHALLANGER SERIES 01」フェザー級チャンピオンシップ、パン・ジェヒョクvs.河名マストほか

▶2月21日(水)、東京・後楽園ホール/「CHAKURIKI 19」ノブ・ハヤシ引退エキシビションマッチほか

▶2月23日(金)、東京・後楽園ホール/「RISE 176」、数島大陸vs.クンスック・ペッティンディーアカデミーほか

▶2月24日(土)、SAGAアリーナ/「RIZIN LANDMARK 8 in SAGA」ヴガール・ケラモフvs.摩嶋一整ほか。

▶2月24日(土)、東京・後楽園ホール/「Krush.158」ライト級タイトルマッチ、里見柚己vs.伊藤健人ほか

▶2月24日(土)、東京・両国国技館/プロボクシングWBC世界バンタム級タイトルマッチ、アレハンドロ・サンティアゴ・バリオス(メキシコ)vs.中谷潤人(M.T)ほか

▶2月25日(日)、東京・後楽園ホール/「KNOCK OUT 2024 vol.1」龍聖vs.川上叶ほか

 

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『伝説のオリンピックランナー“いだてん”金栗四三』『柔道の父、体育の父 嘉納治五郎』(いずれも汐文社)ほか多数。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


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